2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on defect detection by spatial spectral entropy (SSE) and healthy part evaluation for noncontact acoustic inspection
Project/Area Number |
19K04414
|
Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
杉本 和子 桐蔭横浜大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (60642171)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 恒美 桐蔭横浜大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80257427)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | Spatial Spectral Entropy / SSE / 共振周波数の検出 / 非接触音響探査法 / 空間スペクトルエントロピー / レーザドップラ振動計 / LRAD |
Outline of Annual Research Achievements |
音波照射加振とレーザドップラ振動計(LDV)を用いた非接触音響探査(NCAI)法では,コンクリートなどの複合材料の内部欠陥を,非破壊非接触で遠隔から検出・映像化することを目的とする。NCAI法では,内部欠陥の映像化のために,面的な振動速度分布をLDVにより計測している。我々の実験では音波加振を行うため,周囲からの反射波や残響によって,LDV内部機構に共振現象を生じる場合がある。その共振周波数で振動速度スペクトル成分が一見大きく表示されるが,内部欠陥周辺の測定点でたわみ振動が生じ振動速度スペクトルが大きくなるのとは異なる。振動エネルギーを計算して映像化するため,レーザヘッドの共振による振動速度スペクトル成分を除く必要がある。前者の周波数では,測定位置とは関係なく一様な分布が測定面に広がる。後者の内部欠陥の共振周波数では,測定面上に局所的に高い値がある。面的にみると,前者は白色性が高く,後者は白色性が低い。スペクトルエントロピー(SE)の特性より,LDVによる共振と欠陥部による共振の識別が可能となる。すなわち,SEの概念を,計測面という2次元空間に拡張して,振動速度スペクトル分布の各周波数に対してSEを適用するという空間スペクトルエントロピー(SSE : Spatial Spectral Entropy)を新たに考案した。 今年度は,このSSE解析の理論式を考案し,過去の実験結果を用いて,その効果の検証を行った。空洞欠陥・剥離欠陥を有するコンクリート供試体や,実コンクリート構造物である高架橋の床版といった,表面が滑らかなコンクリートでの測定結果を用い,内部欠陥の共振周波数の検出が可能であること,その周波数解析結果に基づいた振動エネルギーによる映像化が可能であることが実証された。得られた検証結果については,国内・国際学会で積極的に発表を行うと同時に,英論文にまとめて公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案した空間スペクトルエントロピー(SSE: Spatial Spectral Entropy)の基本的な概念に対して,理論式の構築を行った。そして,模擬欠陥が埋設されたコンクリート供試体における過去の計測データを利用することにより,レーザドップラ振動計および欠陥部の共振が識別できる理由を明らかにした。また,SSEにより識別された共振周波数帯を利用した映像化を行うことにより,より明確な欠陥検出が行えることを明らかにした。 次に,高架橋や地下空洞における過去の計測データを使用して,共振周波数帯の識別に関するSSEの効果の検証を行った。SSEにより識別された共振周波数帯を利用した映像化を行うことにより,叩き点検結果とほぼ同等な欠陥検出を遠隔から実施可能であることを明らかにした。 得られた成果は,英論文にまとめて公表すると共に,国内・国際学会で積極的に発表を実施した。しかしながら,現状では,新型コロナウィルスの影響で,研究活動が制限され,国際学会が延期されたり,オンライン発表に変更されたり等を余儀なくされている。厳しい状況であるが,対象をコンクリートだけでなく,地中の埋設物に対する実験データなどに対しても行い,対象物の違いによるSSEの効果を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
従来は,一般的なコンクリート構造物ということで,主として表面が滑らかなコンクリート供試体を用いた検討を行っていた。一方で,地下大空洞やトンネルといったコンクリート構造物等の施工で用いられている吹付けコンクリートは,表面が不陸であり,作製方法も一般的なコンクリート構造物とは異なるため,供試体というものが存在せず,事前にNCAI法による欠陥探査に関する評価実験を行うこと自体が極めて困難であった。そのため,今年度はこの吹き付けコンクリート供試体を製作することを予定している。幾つかの大きさや形状・埋設深さが違う欠陥を有する供試体を製作し検証実験を行うことで,吹き付けコンクリートの内部欠陥に対するより精度の高い解析が可能になると考えている。 また,SSE解析では,横軸が周波数,縦軸がSSE値になっている。この縦軸の値の意味について,つまり,エントロピーという概念の確率統計の側面と物理現象との間の関連について,理論的考察を数値シミュレーションも参考にして行っていくつもりである。また,今までの解析では,音源とレーザドップラ振動計は位置固定である前提で行われてきたが,音源が移動する場合には,前提条件が変わるので,その対処法についても検討していく予定である。
|
Causes of Carryover |
SSEの検討を進めていく上で,その検証用の供試体は極めて重要である。しかしながら2 年度目に導入予定である吹付けコンクリート供試体は,コンクリート構造物の施工現場で作製されるもので,通常のコンクリート供試体とは作製方法が異なるために,設計・製作費が十分ではない可能性が考えられた。そこで,初年度に導入予定であったSSE計算用PCの購入を保留して,2年度目の供試体に予算を投入準備することにしたために残額が発生した。したがって,この初年度残額は2年度目の検証用の供試体を設計・制作する費用に投入される予定である。費用が確定した状況によって,PCの購入については検討する。
|