2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on defect detection by spatial spectral entropy (SSE) and healthy part evaluation for noncontact acoustic inspection
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19K04414
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
杉本 和子 桐蔭横浜大学, 工学研究科, 研究員 (60642171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 恒美 桐蔭横浜大学, 工学研究科, 教授 (80257427)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非接触音響探査法 / Spatial Spectral Entropy / 空間スペクトルエントロピー / SSE / 共振周波数 / レーザドップラ振動計 / 非破壊検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,結論から言うと,第1に,欠陥検出の原理の基本となるスペクトルエントロピー (SE; Spectral Entropy) と空間スペクトルエントロピー (SSE; Spatial Spectral Entropy) の規格化を定式化した。第2に,製作された吹付けコンクリート供試体を用いて,非接触音響探査法の実験を実施し,その実験データから,規格化SEと規格化SSEを用いて解析し,内部欠陥検出を行った。 SEとSSEの原理は,クロード・シャノンが提唱しているエントロピーの概念に基づき,確率・統計的性質を持っている。そのため,非接触音響探査法による内部欠陥の検出においては,SEの値が周波数解析のサンプリング数に依存するため,実験条件によって,数値の基準が変化してしまうことになる。SSEの値についても,計測面の測定点数に依存するため,実験条件によって,数値の基準が変化する。そこで、異なる対象,異なる実験条件に対しても,統一基準で評価できるようにするため,SEの規格化と,SSEの規格化を定式化した。過去のコンクリート供試体の実験データに適用して検証し,良好な結果を得た。その成果を,ヨーロッパの国際学会でオンライン発表した上で,査読付き論文誌に投稿し,オープンアクセスで掲載された。 空間スペクトルエントロピーによるSSE解析は,今まで表面が滑らかな一般的なコンクリートに対して適用されてきた。しかしながら,地下大空洞施設やトンネルなどの大規模コンクリート構造物では,表面が凸凹の吹付けコンクリートが用いられる。令和3年度に製作された吹付けコンクリート供試体を用いて,非接触音響探査法の実験を行った。その実験データに対して,規格化SEおよび規格化SSEを用いて,内部欠陥の検出を行い,その効果を検証した。その結果を,国内・国際学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績に記述したように,当該年度の目標は達成できた。それに加えて,地中探査や吹付けコンクリート供試体に対する実験データ解析で,SSE解析が直面する問題点とその解決策を検討した。 レーザドップラ振動計による測定では,計測対象の表面状態(反射率など)に依存して,レーザ戻り光量が減少し,受光漏れに起因する光学ノイズが生じる場合がある。計測対象の低反射特性・乱反射特性に起因するものである。 吹付けコンクリートは,セメントなどのベースコンクリートと急結剤と水を混ぜて,高圧で対象面に吹付けて作製される。その表面は軽石のように凸凹があり,レーザドップラ振動計による測定では,凸凹表面での反射率の変化や,対象面を加振する強力音波が表面の微小片を揺らすことにより,局所的な光学ノイズが検出される場合がある。内部欠陥に起因する共振ピークではない,周波数スペクトル上に局所的に大きいピークが観測され,それがSSEの周波数解析に悪影響を及ぼすため,それらのノイズを軽減する必要があった。その解決策として,3σ以上の外れ値を除く統計処理を行って,SSE解析を行うことにより,SSE解析の本来の効力を引き出すことに一定の成功を収めた。その結果は,日本音響学会などで発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
2つのエントロピーの規格化を提唱し,統一的な評価基準が確定したので,様々な対象での実験データを積み上げていけば,今後の非破壊検査の基礎データになると考えられる。 異なる対象・異なる装置でも,SSE解析の性能を保つために,次の点を考慮して,欠陥検出法について検討したい。 ・ 表面に凹凸があり,表面の反射率が一定でない吹付けコンクリートの場合や,地中埋設物探査のように強力音波で地表の微小片が微振動するような場合では,3σの外れ値を除く統計処理を行うことで,SSE解析による周波数検出の性能が向上した。しかしながら,内部欠陥や埋設物に起因する共振周波数でピークが大きい場合には,3σでその上限値が幾分カットされる可能性があり,SSEの見積もりが小さくなるため,更なる検討が必要である。 ・ 我々の非接触音響探査法では,強力音波で対象面を加振するため,周囲や対象物からの反響・残響が高感度レーザドップラ振動計に跳ね返り,レーザヘッドの共振によるノイズを生じる場合がある。複数のレーザドップラ振動計を用いる場合,得られる周波数スペクトルにそのヘッド共振ピークが見られるが,装置によって,若干異なる。それらの装置差があっても,その影響を減算して,本来のSSE解析の性能が発揮できるような方法について検討したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国際学会や国内学会がオンラインで実施され,交通費・宿泊代が全くかからなかったこと(オンライン参加ということで国際学会の講演参加費が減額になった)、および吹付けコンクリート供試体の製作において,コンクリート会社の研究所及び研究員のご助力と学術研究へのご理解・ご厚意で,供試体の製作費用が全くかからなかったことにより,その分の予算が残された。 今年度は,非接触音響探査法の実験・データ解析を行い,SSE解析の適用範囲を広げるとともに,国際学会・国内学会での講演発表と学術論文作成・公表に,残予算を有効に活用したい。
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Research Products
(8 results)