2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on defect detection by spatial spectral entropy (SSE) and healthy part evaluation for noncontact acoustic inspection
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19K04414
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
杉本 和子 桐蔭横浜大学, 工学研究科, 研究員 (60642171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 恒美 桐蔭横浜大学, 工学研究科, 教授 (80257427)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非接触音響探査法 / Spatial Spectral Entropy / SSE解析 / 空間スペクトルエントロピー / 共振周波数 / レーザドップラ振動計 / 非破壊検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究の成果は,以下の通りである。 (1)2つのエントロピーの規格化を定式化したこと 欠陥の検出・判定に用いるスペクトルエントロピー(SE; Spectral Entropy)の従来の定義式では,測定条件のサンプリング数の変化に伴い,SE値も変化する。規格化SEでは,サンプリング数によるSE値への影響はない。共振周波数の検出に用いる空間スペクトルエントロピー(SSE; Spatial Spectral Entropy)の従来の定義式では,測定条件の測定点数の変化に伴い,SSE値が変化する。規格化SSEでは,測定点数の変化によるSSE値への影響はない。その為,測定場所・測定条件・計測対象に寄らず,同一基準で評価できるようになった。 (2)吹付けコンクリート供試体の円形欠陥(直径300mm,欠陥深さ40,60,80mm)に対しては,従来の欠陥検出が適用可能で,健全部と欠陥部がうまく分離できること,また,SSE解析により円形欠陥の共振周波数が検出可能で,その周波数帯による映像化により内部欠陥の検出・映像化が鮮明に得られること,さらに,円盤の古典振動理論式と比較すると,SSE解析で得られた共振周波数と欠陥深さの関係が線形性を示し,円形欠陥の直径も含めた関係が理論に適合することが検証された。 (3)吹付けコンクリート供試体の円形欠陥(直径200mm,欠陥深さ40,60,80mm)に対しては,吹きつけコンクリート表面の凹凸のレーザ計測への影響や,音波加振によって表面の微細な構造の揺れがレーザ計測に引っかかるなど,局所的に大きい振動速度スペクトル成分が顕著に検出され,SSE解析が有効に働かない問題があった。そこで,振動速度スペクトル成分の統計処理後に,SSE解析を行い,この問題を解決した。 これらの成果は,国内学会で6件,国際学会で1件の発表を行い,日本語論文1件,英語論文1件が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非接触・非破壊で,複合材料,特にコンクリートの内部欠陥(表面~10cm程度)を遠隔(~33m)から検出・映像化する方法の研究を行っている。表面が滑らかなコンクリート供試体に対して,空洞や剥離などの内部欠陥の検出・映像化を行い,打音検査と同程度の検出が可能であることが検証されている。本研究では,吹付けコンクリート供試体の円形欠陥(空洞・剥離)に対して,本手法の有効性を検証するとともに,吹付けに適したデータ解析方法を検討している。 吹付けコンクリート供試体の円形欠陥(直径200mm,欠陥深さ40,60,80mm)に対しては,検出されるべき共振ピークが直径300mmの場合に比べてより小さくなるため,S/Nが重要になってくる。吹きつけコンクリート特有の表面の凹凸によりレーザ戻り光量が減少すると,レーザ計測で極局所的に見かけの大きい値を検出する場合があることや,音波によって対象面を加振する際に吹付け表面の微細な構造が揺れてレーザ計測で高周波数成分が検出される場合があり,ノイズの一因となる。これらにより,SSE解析が有効に働かない問題がある。そこで,局所的な極端に大きい振動速度スペクトル成分を統計的に検出して,外れ値3σ以上を処理(平均値に置き換え)して,SSE解析を行うことにより,この問題の一応の解決を図った。 この効果があり,従来の欠陥検出における健全部と欠陥部の分離が見られ,また,SSE解析により円形欠陥の共振周波数が検出され,その周波数帯による映像化により内部欠陥の検出・映像化がある程度得られた。円盤の古典振動理論式に関しては,共振周波数と欠陥深さの関係は線形性を示していない。この事実は,円形欠陥の大きさ(直径)と欠陥深さとの兼ね合いで,欠陥周辺での振動状態が直径200mmの場合は(直径300mmと比較して)異なると考えられる。この件については,今後とも検討していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の影響もあり予算を再延長していただき,とても感謝している。得られた実験&解析結果や知見から,まだ論文にまとめ切れていない部分の,吹付けコンクリート供試体の実験結果と解析方法及びその結果を,論文にまとめて発表するつもりである。 また,吹付けコンクリート供試体の円形欠陥(直径200mm,欠陥深さ40,60,80mm)に対する実験&解析結果では,円盤の古典振動理論の境界条件(固定支持または単純支持)での理論式には合わないことが明らかになった。この件について,構造解析による円形欠陥の周囲の振動状態の解析と共に,実際のコンクリートに適用可能な古典振動理論の拡張や構築についても,今後も検討していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
吹付けコンクリート供試体に対する非接触音響探査法による実験結果や解析方法及びその結果を,英語論文にまとめる準備をしている。年度を挟んで査読・受理・掲載に間に合わなかったため,残りの予算を,その費用とする予定である。
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Research Products
(11 results)