2022 Fiscal Year Research-status Report
等比的に広範囲レベルの信号検出を可能とする多チャンネルランダムノイズ発生器の開発
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19K04415
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
高田 明雄 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 教授 (40206751)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 積分型発火回路 / ホワイトノイズ / ノイズ誘起同期 / 確率共鳴現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,人間の指がmgからkg重の力の範囲で物体を強い力で握りしめながら同時に微弱な振動を感じることができることを人工的に再現できるような高感度なセンシング技術の基礎を確立することである.すなわち,通常,これを一種類のセンサで代用することは難しいため確率共鳴現象(SR)の応用が考えられる. 一方,ヒトの指の体制知覚は神経細胞の刺激検出と神経細胞間の情報伝達機能によるものであることを考えると,信号検出のセンサ部には神経細胞のモデルに相当する回路を設置することが好ましいのではないかという仮説が成り立つ.そこで,2022年度は,神経細胞の簡単な電気回路モデルとして知られる積分発火型回路のノイズ誘起同期について考察した.神経細胞は互いに連携して信号のやり取りを電気的パルスで行っていることから,ノイズ誘起同期について実験および数値シミュレーション両方の手法で考察した. 同期させる信号としてホワイトノイズを用い,二つの積分発火型回路はこのノイズが印加されたことによって,確率的にどのように同期,すなわち同時発火するのかを明らかにした.この際,二つの積分発火回路には互いにパラメータのミスマッチがあり,完全に等しい特性を持っている理想的なものではなく,実際に回路を製作した場合には十分に起こり得る現実に近い仕様のものとした.結果として,二つの積分発火型回路間のノイズ誘起同期性能は,回路パラメータのミスマッチの度合いを変数として,定量的に評価できることを明らかにした. 一般的に知られているSRは,センサのしきい値を超えた場合の入力に応答するという単純なものであるが,積分発火型回路を用いるとセンサ入力を時間積分・積算できるため,ヒトの指の体制知覚を模倣した実際のシステム構築に有用な回路設計が可能になると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度は新たに積分発火型回路のノイズ誘起同期について着手した.これは当初の計画になかったものであるが,確率共鳴現象(SR)を利用したセンシング技術にはランダムノイズを使うこと,およびヒトの体制知覚は神経細胞によってもたらされることを踏まえ,本研究が目指すセンシングの開発に有益であると判断されたからである.一方,前年度に直面したいくつかの問題,すなわち以下①および②については,以下の通り,引き続き検討中である. ①これまで製作した複数のノイズ発生器回路において,一部については,ノイズの発生が生じない.この原因として,部品の値のばらつきが主原因と考えているが,部品の値を微調整できる工夫をして解消できるものなのか,あるいは,回路部品のもつ特性のわずかなばらつきによるものなので解決困難なものといえるのか不明のままである.多面的な調査が必要と思われる.したがって,ノイズソースの多チャンネル化については,完全に達成できたとはいえない. ②回路の小型化については,面実装部品(SMD)を使って回路基板1枚当たりの面積を一般的な市販電子部品(DIP)で回路を製作した場合に比べて4分の1程度以下に縮小できることを確認した.しかし,回路動作の不具合,すなわち,設計通りにランダムノイズが発生しないという問題は,回路の作り直しを行ったが解消できていない.面実装用の回路基板の配線パターンの微細化によって,配線間が0.25mm間隔のICの動作チェックでは,測定用のプローブと被測定端子との正確な電気的接触が難しいことと,回路を製作した基板上でパターンを修正し,問題部位を発見するのが難航する作業となり,大幅に時間を要している.この問題も,前述したように回路パターンの不具合なのか,部品のばらつきによるものなのかを分離する必要があり,前年度に引き続き現在調査中である.
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Strategy for Future Research Activity |
ノイズ発生回路の多チャンネル化と小型化(面実装部品による回路の構成)は必ずしも表裏一体のものではないが,小型化を進めず回路を多チャンネル化した場合のノイズ発生器の容積はとてつもなく大きくなってしまうため,面実装部品を使った回路の動作不良を発見し計画を遂行したい.具体的な方策として,回路設計ソフトでは,『従来型の部品(DIP半導体)を使った場合』と『面実装部品(SMD半導体)を使った場合』で共通した回路図を使っていたが,新たにテスティングを容易にする回路パターンを製作し,それに基づいて,回路の不具合を発見しやすい枠組みを作りたい. 面実装部品の使用以前に,ノイズ発生器回路がロバストにノイズを発生することの再現性が十分に確保できていないため,上記面実装部品を使った回路パターンの見直し作業に並行して,理論的には発見できなかった回路上の不具合をいち早く見つけ出し,回路設計の改善に結び付けたい. 研究結果の検証として,多チャンネルノイズを使ったものを計画しているが,本来の数十個以上の独立したノイズ発生器ではなく,最低数個でも原理的な実験は可能であるため,信号検出が本研究の提案手法で有効であることを示したい. 回路を使った信号検出の原理として,ノイズ環境下における神経細胞の確率共鳴現象と等価なシステムが有効と考えられるため,2022年度に得た知見,すなわち積分発火型回路の組み込み方法についても検討する.
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Causes of Carryover |
研究期間を一年延長したため生じた.次年度使用額については,回路製作のための電子部品の購入および学術雑誌への論文投稿料に充てることを計画している.
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Research Products
(11 results)