2019 Fiscal Year Research-status Report
光走査式誘電体散乱電界センサによる高周波電界分布計測
Project/Area Number |
19K04417
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Research Institution | Akita Industrial Technology Center |
Principal Investigator |
黒澤 孝裕 秋田県産業技術センター, 先端機能素子開発部, 上席研究員 (60370243)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電界計測 / 変調散乱 / 光変調 / 光走査 / 半導体散乱体 |
Outline of Annual Research Achievements |
光走査式変調散乱波測定システムを構築した.既知の高周波電磁波源により生成した電磁界中に板状の半導体散乱体を設置し,散乱波を発生させた.ネットワークアナライザのport 1から高周波を給電したマイクロストリップライン(特性インピーダンス50 Ω)を電磁波源とした.散乱体としてシリコン単結晶基板(直径102 mm)を用い,電磁波源から2 mmの距離に設置した.散乱体に周波数125 Hzで振幅変調したダイオードレーザの出力光を照射して変調散乱素子とした.散乱体上の光照射位置は,ボイスコイルモータで駆動される角度可変ミラー2個を用いて設定した.照射光スポット径は約1 mmとした.散乱体からの散乱波および電磁波源からの直接波をアンテナで受信し,アンプで増幅した後ネットワークアナライザのport 2に入力した.測定されたS21の時間依存性から光強度の変化に同期した変調成分を抽出し,散乱波の振幅および位相を求めた.電磁波源はXYステージ上に設置し,波源を機械的に走査して得られた散乱波強度分布と,散乱体の光照射位置を走査して得られた散乱波強度分布とを比較し,光走査による分布計測の定量性を検証できるシステムとした. 機械走査および光走査により測定位置をマイクロストリップラインの幅方向に掃引し,散乱波振幅および位相を評価した.その結果,振幅は両走査方式でほぼ一致した.散乱波振幅は伝播距離に反比例するため,光走査に伴う距離変化の割合が影響すると考えられ,この範囲内で一致したと考えられる.一方,位相は測定位置がライン中心から離れるに従い,光走査の測定値が機械走査の測定値よりも遅れた.位相変化量は光走査に伴う伝播距離変化と波長との比で決まる.走査方式の違いによる位相の差異は,この影響で定性的に説明できる.これらの結果から,散乱体上の光照射位置を走査することで電界分布計測が可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光走査式変調散乱波測定システムを構築し,散乱体の光照射位置を走査して得られた散乱波強度分布と機械走査による強度分布とを比較可能とした.これにより,光走査による分布計測の定量性を検証可能とした.測定される散乱波振幅および位相の評価結果から.光走査に伴う散乱波の伝播距離変化が散乱波振幅および位相に影響を及ぼすことが明らかとなった.また,散乱体材料として,これまで光変調式誘電体散乱素子に用いてきたアンドープゲルマニウムに加え,シリコンを検討した.いずれの材料も使用するレーザー光を吸収して導電率変化を起こすが,シリコンはゲルマニウムと比較して大面積基板の入手が容易である.円板基板を用い,これまで用いたゲルマニウム基板(直径25mm)より広範囲の,直径102mmの範囲で電界分布計測を可能とした. これらの研究実績は研究実施計画に沿っており,研究は概ね予定通りに進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に沿って進める.令和元年度に構築した測定システムを用い,1 GHz-18 GHzのマイクロ波帯における感度や周波数特性を評価するとともに,光走査による電界分布計測に伴う誤差要因の把握と,その補正手法を検討する.電磁波源,散乱体,受信アンテナを空間的に固定し,光走査によって分布計測するシステムでは,測定位置と受信アンテナとの相対的位置関係が光走査に伴って変化する.これに伴い散乱波が伝播する経路の伝達関数が変化するため,精密な振幅・位相測定では測定精度に影響を及ぼす可能性がある.この影響を計測するとともに,正確な振幅・位相特性を計測するための校正手法を確立する. 幾何学的な位置関係の利用,既知波源の計測結果の利用,散乱体―受信アンテナ間の伝達関数の実測による補正等を検討し,有効な校正法を見出したい.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,まずは主要物品のアンテナが当初予定より安価に購入できたことが挙げられる.また,年度終盤に開催予定であった研究会・学会が新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となり,未使用の旅費が発生したためである. 次年度研究費は消耗品,旅費,その他に使用し,設備備品の導入予定はない. 消耗品は1,039千円を予定している.内訳は半導体基板400千円,光学・電子部品589千円,論文別刷り50千円である.半導体基板は材料検討に用いる.光学・電子部品は測定システム改良および研究機器の自作に使用する.国内旅費は270千円を予定しており,内訳は研究成果の学会発表2件,研究会発表2件である.その他は193千円を予定し,査読論文投稿1件および学会参加負担金である.
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Research Products
(2 results)