2019 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイムドリフト補償によるテラヘルツ絶対電力の超高感度測定法の開発
Project/Area Number |
19K04418
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
飯田 仁志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (40392584)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / カロリーメータ / 絶対パワー / ドリフト補償 / 校正技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は極微弱なテラヘルツ波パワーを正確に測定するための高精度センサの開発を目的としている。令和元年度は極微弱パワーを測定する際に課題となっているセンサのドリフトを補償する技術に関して以下の成果を得た。 ドリフト補償を行うためには、その原因を詳細に把握する必要がある。ドリフトの要因としては、目的外の不要信号の混入や周囲の温度変動の影響が考えられる。まず、センサに入射する信号の周波数成分を把握するために、マーチンパプレット型のフーリエ変換分光装置(FT-THz)について検討を行った。従来の手法では、検出器に液体ヘリウム冷却を要するボロメータが不可欠であったが、本手法ではフェルミレベル制御バリアダイオードを採用し、常温での高感度分光を実現した。高圧水銀灯による黒体放射を仮定して、FT-THzの感度補正を行うことで、テラヘルツ帯のスペクトルを周波数と振幅の双方において定量的に観測しうることを示した。実際のドリフトには、周囲温度の変動が大きく寄与していることが分かった。温度変動に伴うドリフトは、補償素子を適切に利用することで低減が期待できるが、わずかな特性の違いが残ることによって完全にキャンセルすることができないことが分かった。そこで、予備実験としてパワー測定用センサと補償素子の出力を差動検出し、補償素子の感度を変化させたときのドリフト変化を観測した。その結果、感度を適切に調節することで、少なくとも短期間のパワー測定においては、ドリフトのリアルタイム補償が可能である見通しが得られた。次年度には、本手法による制御回路を構築し、リアルタイムドリフト補償の実現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度はドリフトの要因把握と補償方法の検証を目標としていた。前者について、特に不要成分混入の影響を定量的に評価することに注力し、信号源のスペクトル純度を正しく検証する手法の開発に成功した。本手法によって、目的外信号の影響は極めて小さいことが明らかとなった。その結果を踏まえ、ドリフトの主要因は周囲のわずかな温度変動の影響であることが分かり、それを補償するための手法についても見通しを得ることができた。現状はリアルタイム補償までは至っていないが、次年度に引き続き試作改良を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は令和元年度に得られた成果を元に、リアルタイムドリフト補償回路の開発を進める。具体的には、利得可変の超安定低雑音差動増幅器を試作し、ドリフトレートを調整できるシステムを構築する予定である。これによって、測定時間の短縮や低雑音化による感度の改善を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)リアルタイム補償回路の試作に遅れを生じたため。 (使用計画)次年度の計画では、センサ試作費や成果発表のための旅費を計上しているが、次年度使用額はその一部として使用予定である。
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