2019 Fiscal Year Research-status Report
体内伝導音と音声信号の高次相関情報活用による騒音下でのベイズ推定に基づく信号抽出
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19K04428
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
生田 顯 県立広島大学, 経営情報学部, 名誉教授 (30145164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
折本 寿子 (益池寿子) 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (80533207)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 音声信号検出 / ベイズ推定 / 気導音 / 周囲騒音 / 体内伝導音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、騒音の混入した気導音を観測値とし、気導音観測データが得られた後の事後分布から、ベイズ推定を活用することにより音声信号を検出する一手法を理論的に導出した。 周囲の騒音が存在する実環境において、音声信号と周囲騒音が混入した気導音には音圧の加算性が成り立つ。さらに、体内伝導音に対する線形あるいは非線形の音声モデルパラメータを推定するためには、一般に音声信号と体内伝導音の相関情報を必要とする。しかし、音声信号は未知の推定対象であるため、その情報を事前に把握することは一般に困難である。したがって、体内伝導導音の測定値から推定されるパラメータを反映した確率分布を事前分布として採用することにより推定精度の向上を図った。 体内伝導音は周囲の騒音が混入しにくい個体伝播音であるが、伝播過程で高周波成分が減衰する。一方、気導音は空気伝播音であるため、周囲からの騒音の混入は避けられないが、 すべての周波成分が保全され含まれている。従って、両者の併用により、音声信号を精密に推定することが可能である。 本研究で導出した推定アルゴリズムにおいては、音声信号に対するシステム方程式を必要とせず、任意の音声信号に適用可能である。また、音声信号と気導音に対する相関情報のみを推定・活用するため、音声信号の推定アルゴリズムが簡易化され、処理時間の軽減によりオンライン処理が可能であるなどの利点がある。 提案した手法の有効性は標準音声データ(女声信号および男声信号)に適用することにより、実験的にも確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、体内伝導音の計測に基づく音声信号抽出アルゴリズムの開発と標準音声信号での有効性の確認である。 その研究目標に対し、まず、現実の騒音環境下での音声認識を可能にするため、体内伝導音に関する伝播モデルが未知の実際的状況を対象とした。すなわち、伝播モデルパラメータを音声信号や体内伝導音から事前に推定する必要がなく、音声信号や体内伝導音、周囲騒音に対する変動のガウス分布や白色性に対する前提を必要としない新たな音声信号抽出法を提案した。 また、音声信号は複雑な変動形態を示すのが通常であり、音声信号に対する高精度の推定を目指すためには、揺らぎ形態の全情報を反映した結合確率分布全体に着目する必要がある。本研究では、音声信号と体内伝導音の関係として、高次の相関情報を反映した非線形の音声時系列モデルを導入することにより、新たな音声信号抽出アルゴリズムを提案した。確率のベイズ原理に非線形の音声時系列モデルを組み入れることにより、周囲騒音の影響を抑制し、高精度で音声信号を抽出するための新たなアルゴリズムを研究開発し、実際の音声データに適用することにより、その有効性を確認した。 以上のように、本年度の研究目標を十分に達成している。研究成果は2020年電子情報通信学会総合大会で公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に研究開発した周囲騒音の影響を抑制し、高精度で音声信号を抽出するための新たなアルゴリズムを、種々の騒音環境下での多くの実際の音声データに適用することにより、その有効性をさらに確認する。 また、開発した音声に関する非線形時系列モデルをもとに、例えば、さらに次数を増やすなどによりモデルの精密化を図る予定である。さらに、現実の体内伝導音計測においては、高周波域における減衰の影響が無視できない。音声認識率のさらなる向上を目指し、音声時系列モデルにおいて、高周波と結びつくより高次の相関情報を考慮することにより、提案した音声信号抽出法の適用可能性の拡大について検討を行う。通常の確定論でなく確率論(ベイズ推定)にもとづく本手法は、音場の不確実性に対しても柔軟に対応可能であり、その有効性が見込まれる。
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Causes of Carryover |
当該年度では、気導音の観測に加え体内伝導音を活用することにより、騒音下で音声信号を抽出するための新たな信号処理法を、確率のベイズ推定を応用することにより理論的に導出した。さらに、無響室での標準的音声信号に適用することにより、理論の原理的正当性を実験的にも確認した。以上のように、新たなアルゴリズを研究開発することに研究の重点が置かれていたため実験に伴う研究費が不要となった。また、新型コロナ感染症による影響で多くの学会が中止になったことにより、学会発表に伴う出張が中止になった。 次年度は実際の騒音環境下において実験を実施し、開発したアルゴリズムを適用することにより、その実際的有効性を確認し、必要に応じて推定アルゴリズムに改良を加えていく計画である。そのための計測器や謝金が必要になる。また、専門の国際会議や国内の学会で研究発表を行う予定である。
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Research Products
(7 results)