2020 Fiscal Year Research-status Report
体内伝導音と音声信号の高次相関情報活用による騒音下でのベイズ推定に基づく信号抽出
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19K04428
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
生田 顯 県立広島大学, 経営情報学部, 名誉教授 (30145164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
折本 寿子 (益池寿子) 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (80533207)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 音声信号検出 / ベイズ推定 / 気導音 / 周囲環境 / 体内伝導音 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度には、騒音の混入した気導音観測データが得られた後の事後分布から、体内伝導音を援用しベイズ定理を活用することにより、音声信号を検出する手法を導出した。令和2年度は、導出した手法の実際的有効性を確認するため、実環境を模擬した状況を設定することにより、音声信号の計測実験を実施した。 具体的には、代表的な騒音として白色雑音、ピンク雑音、機械騒音の3種類を選定し、無響室で再生したそれぞれの騒音が存在する状況下で、女声信号および男声信号それぞれの気導音および体内伝導音を、時間的な同期をとりながら同時測定を実施した。その際、騒音計でモニタリングしながら、騒音の大きさを音声信号エネルギーの約1倍・約2倍・約3倍になるように設定した。これらの計測データに研究開発した音声信号抽出法を適用することにより、本手法により抽出した音声信号は気導音の観測のみに基づく音声信号抽出法を適用した結果と比較し、女声信号および男声信号のいずれにおいても、すべての騒音混入下において、鮮明な音声信号が復元されていることを確認した。 さらに、高周波成分が欠落した体内伝導音をファジィ・データとみなし、ファジィ事象の確率を適用しベイズ推定と結合することにより、令和元年度に導出した信号抽出法とは異なる観点からの新たな信号抽出アルゴリズムを理論的に導出した。 本年度計測した騒音下での音声データに、研究開発した信号抽出法を適用した結果は、気導音のみの観測値活用による信号抽出法に比べ、より鮮明な音声信号を抽出できることを実験的に確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由: 本年度の目標は、まず騒音環境下での音声信号に対する計測実験を行い、研究開発した音声信号抽出法を適用することにより、その有効性を実験的に確認することである。 実験結果から、気導音に加えて体内伝導音を考慮した本手法は、気導音のみに基づく音声信号抽出法に比べてより鮮明に音声信号を抽出できていることを、i)試聴による音声の明瞭さ、ii)時間波形の復元状態、iii)スペクトルの復元状態、の3つの観点から確認した。 さらに、ファジィ理論とベイズ推定を融合させた新たな音声抽出アルゴリズムを理論的に提案し、その有効性を上述の騒音下での音声信号に適用することにより、実験的に確認した。 これらの研究成果は電子情報通信学会応用音響研究会および日本音響学会研究発表会で公表した。今後、論文投稿の予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に研究開発した音声信号抽出法に改良を加え、より精度のよい抽出法の開発を目指す。具体的には、音声信号と気導音の関係、および音声信号と体内伝導音の関係を、それぞれ両者の線形相関のみならず高次の非線形相関まで反映した条件付き確率分布で表現する。その際、両者の相関情報を階層的に捉えうるよう直交展開型の確率分布表現を採用する。 さらに、提案した手法の推定精度を数値的に評価するために、騒音が存在しない状況下での音声信号を別途に測定し、騒音と無響室でさまざまなSN比において合成することにより騒音が混入した状況での音声信号を作成する。提案した手法を適用した結果および従来の手法により音声信号を抽出した結果それぞれについて推定誤差を計算することにより、提案手法の有効性を定量的に検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度では、騒音環境下での音声信号に対する計測実験を行い、2つの観点から研究開発した音声信号抽出法を適用することにより、その有効性を実験的に確認した。しかし本年度は、新型コロナ感染の影響により、十分な実験補助員の確保や実験設備の設定が困難で、音声信号抽出精度に関する詳細な検討を実施するには不十分な実験に留まっている。そのため、定量的評価を可能にする詳細な実験を実行するために必要な経費より少額となった。また、多くの国内・国際会議が中止やオンラインとなり、学会発表に伴う出張が中止になった。 次年度は、本年度に研究開発した音声信号抽出法に改良を加え、より精度のよい抽出法の開発を目指す。また、提案した手法の推定精度を数値的に評価するため、新たに大規模な実験を予定している。そのための計測器や実験施設使用料、および実験補助員に対する謝金等が必要となる。また、専門の学会で研究発表を行い論文投稿の予定であり、そのための旅費や投稿料が必要となる。
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Research Products
(4 results)