2020 Fiscal Year Research-status Report
Development and application of non-invasive metabolic monitor
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19K04432
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
工藤 寛之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (70329118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森澤 健一郎 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (60410130)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乳酸 / 生体計測 / バイオセンサ / 電気化学 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、2019年度から2021年の間に汗中成分をモニタリングするシステムを構築し、無侵襲での生体機能・生理的状態の評価に応用することを目的としている。最終的な目標として、(1)汗に含まれている乳酸を12時間程度連続でモニタリングする技術を開発する。(2)同システムの制御回路や薬液の搬送機構を小型化することで、アームバンド型汗中乳酸モニタリングシステムを開発し、応用研究に展開する。(3)当該システムを集中治療室における組織代謝機能の評価や水泳など自由移動を伴う運動における代謝評価に応用する、という3点を掲げている。 2020年度開始時点までの状況を総括すると、研究実施計画に則り、システム開発においては、医療現場で利用するためのシステムの最適化、制御回路の小型化を中心に研究を行った。具体的には、汗を回収し、センサに搬送するためのポンプの最適化を行い、低発汗量の安静時においても皮膚表面の乳酸を適切に計測可能とした。応用研究においては、低発汗時に見られる発汗量非依存的な出力についてどのように解釈すべきかの課題を残していた。 これを受けて、2020年度は(1)アームバンド型汗中乳酸モニタリングシステムを小型化することにより、腕時計型のシステムを構築した。具体的には、キャリア流となるリン酸緩衝生理食塩水のリザーバと廃液タンクを同一セル内に形成し、伸縮性の膜で仕切ることにより、時間経過や角度変化を伴う運動による内圧変化を抑えた送液システムを開発し、腕時計様の超小型デバイスに集積化した。また(2)低発汗時の汗中乳酸量がどのような振る舞うかを詳細に調べたところ、皮膚表面が入浴などで洗浄された後皮膚表面では逐次乳酸が蓄積し、測定を行う際にキャリア流に溶出する過程が出力として観察されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度においてはCOVID-19の変異ウィルスの出現などにより感染の収束が思うように進まず、社会全体が大きな影響を受けている。本研究に至っては医療機関が逼迫する状況にあり、集中治療室での臨床実験は進められていない。 研究事業の推進にあたっては、リソースを腕時計型のシステム開発に集中させ、この点においては予定を上回る進捗となっているが、臨床での実験については当初の見通し以上に医療機関への負担が大きい状況で、一時的に実験を停止せざるを得ない状況である。このため集中治療室での実験数が増えていない点を勘案し、(3)やや遅れているとした。今後も慎重な判断を迫られる状況は続くと考えられるが適宜情勢を見極め、適切に対応することとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き感染拡大が続いているが、研究計画への影響は最小限に止めるよう努力する。技術的には長時間の測定もできるようシステムの改良は続いており、12時間程度の測定は十分に出来る水準に達している。既にシステムの基幹部分については希望者にデモンストレーションするなど、目標とする水準に達している。 2021年度においては(1)読み出し回路の小型化やアプリケーションの充実を進めるなど、周辺の技術的な課題を解決する。特に腕時計型のシステムについて、無線機能の集積化を進める。具体的には、Bluetoothやwifiによる無線システムにより簡易的に携帯端末に情報を伝送可能なシステムを構築する。(2)引き続き汗中乳酸値が反映する生理的な状態についての調査を進める。連続計測が可能となった現在の状況では、安静時の振る舞いについていくつかの新しい知見が得られそうである。特に入浴後などの皮膚上の成分が抜け出たあと、どのようなプロセスで皮膚表面の構成成分が変化していくか、本システムを利用して調査するなど、技術的な優位点を活かした提案につなげる。(3)応用面では、従来の応用に加えて車椅子で運動するパラアスリートの運動中の状態を調べるシステムへと展開するなど、新たな応用を計画している。(4)また感染状況を勘案しつつの対応ではあるが、臨床での実験も可及的速やかに再開し、データの蓄積を進めたい。あわせて現在わかっている内容として、初皮膚表面の乳酸は皮膚表面の細胞や微生物の活動による影響を大きく受けること、その動態がどのように変化するかが明らかになってきたことから、複数の要因による乳酸分泌量の変化をどのように区別するか、基礎的な検討を行うとともに、新たな研究課題に展開したい。
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Causes of Carryover |
感染拡大の影響により臨床での実験に要する支出がない点と国際会議の旅費支出が生じなかったことから次年度使用額が生じている。2021年度においては無線システムの構築にこれらの繰越分を充当する予定である。
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Research Products
(5 results)