2020 Fiscal Year Research-status Report
Atomic Level Characterization of Molecular Self Assembly: its formation and collapse
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19K04434
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
越野 雅至 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (00505240)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 分子集合体 / 有機分子 / 両親媒性分子 / 自己集積 / ソフトマテリアル / 多次元測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,細胞膜やシャボン玉といった極小の有機分子などで構成される分子膜が形成する際,膜を構成する有機分子やその周りの水分子がどのように振る舞うのか,分子膜の大きさはどうしたら制御できるか,膜構造が安定に存在するためにはどのような生成プロセスや構造を経たらよいのか,さらには膜内外での物質や情報がどのように伝達されるか,といった問いに対する知見を分子の直接観察と元素分析を時間分解型の計測評価技術によって明らかにすることが狙いである. 2019年度後半より,新型コロナウィルスが世界を一変させ,我々研究者はもとより,一般の人々の暮らしも大きく様変わりしてきた.ウィルスが細胞膜へ侵入する際に考えるべき,細胞膜やその膜上に存在する受容体などが,ウィルスのスパイク構造と並び重要である.本研究では,電子線により容易に構造変化が起こるソフトマテリアルに対して最先端技術を搭載した走査/透過型電子顕微鏡を用いて高感度,高分解能,高速に原子・分子レベルで時間分解型の多次元測定を行い,極小の両親媒性有機分子で構成される自己集積型分子集合体膜の形成および崩壊過程の科学を明らかにすることを目的としている.. 2020年度は、計画の2年目であり,当初計画の1)試料作製技術,2)測定技術,3)解析技術の3つの要素技術を柱として研究開発を行った。有機低分子を対象試料として電子顕微鏡による観察を行い、その自己集積型分子集合体膜の形成および崩壊過程の観察を行うとともに、得られた画像の解析および理論解釈を100万原子を超える実験系に対し,GPUを利用した分子動力学シミュレーションおよびGPUを利用した電子顕微鏡像シミュレーションから行なった.今年度は,多くの学会が活動を中止もしくは縮小し,海外渡航は業務上禁止となった.電子顕微鏡開発の最新技術動向の情報を得るため、国内の会議、フォーラムへ参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目となる2020年度においては,1,2年目から進めている1)試料作製技術,2)測定技術,3)解析技術の各要素技術開発を引き続き進め,いくつかの要素技術開発においては期待を上回る進展が見られたが,今後はこれを論文発表につなげていきたい.特に1)におていは,氷包埋試料において超薄膜の氷を作製する技術の開発を進め,温度および湿度制御された自動急速凍結装置による氷超薄膜作製条件の検討およびグラフェン上への分散も検討した.また,極小の分子膜を形成する条件についての検討も行なった.2)に関しては,分子膜の形成過程,融合過程の高分解能電子顕微鏡観察技術の開発を進めた.この測定技術開発においては,大量の時間分解型,エネルギー分解型の電子顕微鏡画像データが蓄積されており,その解析に今後時間を要することが見込まれる.また研究を進めていく上で,バックグランドノイズが大きく下がる特定の観察条件を見つけたが,そこで得られるデータの妥当性についても今後,理論解釈と併せて検討していく.3)においては 100万個以上の原子から構成される系において,それぞれGPUを利用した分子動力学理論計算と電子顕微鏡像シミュレーション を個別に進めている.複数のフリーウェアおよび商用の電子顕微鏡像シミュレーションソフトウェアを評価した結果,バグが少なく,大規模な原子系に利用できる商用ソフトウェアを導入し研究を進めた.予算の制約上,計算機等の初期設定から自分で行うとともに,最新のソフトウェア開発環境を導入しているため,必ずしも正常動作に至らないものもある.今後は,研究成果発表につなげていきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究環境の大きな変化としては,当初計画に使用を想定していた高性能電子顕微鏡のうち2台が,当該研究機関から他機関へ譲渡されることになった.しかしながら実態としては,当該研究機関に装置が残るため,単色化熱電界放射電子銃の有効性を確認する作業,CMOS検出器による高速TEM撮影の比較検討および時間分解能の最適化などに関しては,別途2021年度より締結した共同研究契約の枠組みの中で進められるよう調整する.また,画像認識技術や機械学習の開発に関しては,最終年度で重点的に推進していく予定である.
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