2020 Fiscal Year Research-status Report
シリサイドフィラメント方式によるミニマル構成の抵抗変化型メモリの開発
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19K04475
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
堀田 育志 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (30418652)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抵抗変化型メモリ / 二元系酸化物 / 三元系反応 / シリコン / シリケイト |
Outline of Annual Research Achievements |
MOx + Si→M + SiOx +ΔGの反応において金属酸化物の生成反応が優勢(ΔG > 0)となるY2O3 >> HfO2 > TiO2、また酸化シリコンの生成反応が優勢(ΔG < 0)となるV2O5の4種類のMOx層を用い、PLD法によりAl/MOx/Si構造のReRAMを作製した。各試料の電流-電圧特性を測定したところ、Y2O3 、TiO2、HfO2を用いた試料では初回の電圧印加時より抵抗変化現象を示したのに対し、V2O5を用いたものではこれを示さなかった。各試料について、スパッタX線光電子分光法によるMOx/Si界面近傍の化学状態測定より界面シリケイト層または酸化シリコン層の形成状況を評価したところ、ΔGの傾向にしたがってシリケイト過多の状態から酸化シリコン層の形成への変遷が確認できた。一方、Y2O3を用いたMIS構造では、初回の電圧印加以降では抵抗変化現象を示さなくなった。これは、Y2O3のΔG値が他のものより大きいために容易にシリケイトを形成してしまうことによるもので、それによって抵抗変化層内に過剰なフィラメントが形成されて伝導パスが固着してしまうためであると考えられる。これら一連の結果から、MIS型ReRAMの抵抗スイッチング現象がMOxとSi間のΔGの値によって統一的に理解できることを明らかにした。一方、MIS型ReRAM全般的に書き込みと消去の繰り返し(エンデュランス)特性が悪いという問題が明らかになったため、今後はエンデュランス特性を向上させる改善が必要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにAl/HfO2/SiのMIS型構造のReRAMに関して、その抵抗変化現象の起源として界面に形成するシリケイト層をシードにフィラメントが形成するモデルを提唱してきた。今年度は、抵抗変化層材料のギブスエネルギーを系統的に変化させた試料の抵抗変化特性を比較することで、界面シリケイト層の形成度合いの違いが抵抗変化特性に影響を与えているという証拠を実験的に示した。そして、この抵抗変化現象が、界面における金属-シリコン-酸素の三元反応のギブスエネルギーによって統一的に説明できることを示した。一方、MIS型構造のReRAMでは、メモリ特性として重要であるエンデュランス特性が良くないという新たな問題が明らかになり、これを解決する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究からMIS型構造のReRAMではエンデュランス特性が良くないという問題が明らかになった。そこで、今後の推進方策として、エンデュランス特性を劣化させている原因を調査し、それを可決する方法を調査していく。MIS型ReRAMのエンデュランス特性を劣化させている原因として、現時点では、抵抗変化層内に生じる過剰な導電性フィラメントが原因であると考えている。この過剰フィラメントが上部電極と強固に結びつくことによって、その後酸化還元反応が起こらなくなると考えている。そこで、この過剰フィラメント形成を抑制するバッファー層を上部界面に挿入することを試みる。この際、三元系反応の考え方を応用して、バッファー層としてY2O3、HfO2、TiO2、V2O5の4種類の材料でエンデュランスの変化を調べる。原因となる伝導パスの固着を抑制するには、MOx/Si界面とは逆に、シリケイトを形成しにくいバッファー層を用いることが効果的であると考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスによる影響で、当初予定していた参加学界及びそれに関する旅費の支払いがなくなったため。
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