2021 Fiscal Year Research-status Report
抵抗変化メモリの超高感度センサー応用 -金属酸化物における新規励起過程の探索-
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19K04476
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
木下 健太郎 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 准教授 (60418118)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 欠陥 / 光 / 抵抗変化メモリ / ショットキー接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
20度の研究で, Snドープ酸化インジウム(ITO)/NbドープSrTiO3 (Nb:STO)構造の抵抗変化メモリに対するUV光照射による抵抗値の減少が確認された. この現象は, STOの電子-格子相互作用故に, UV励起されたホールが自己束縛励起子を形成し, Nb:STO空乏層内に何らかの欠陥が導入されることで生じた可能性がある. 今年度は, ITOの成膜条件を最適化してI-V特性に大きなヒステリシスを示すITO/Nb:STO (Nb 0.5wt%ドープSTO(100)基板を使用)抵抗変化型メモリを作製し, 光照射することで, 電気及び光応答性の相関を調査した. ソースメジャーユニット (Keysight B2901A)を使用してITO/Nb:STOに一定の読み出し電圧 (Vr)を印加しながらITO透明電極側からUV光を照射し, 誘起電流を評価した. その結果, ITO/Nb:STO接合の光応答挙動は, Vrに強く依存することが明らかになった. Vr = 0の時, 光誘起電流は, UV照射直後に飽和値に達し, 照射を止めると初期電流値まで急速に減衰した (増減とも < 1 s). この現象はpn接合 (太陽電池)への光照射と類似の現象として理解される. 一方, Vr = -0.3 Vでは, UV照射により電流が長時間に亘り非線形に増加し続けることが分かった. 興味深いことに, 照射を停止すると電流は減衰するものの, 初期電流値まで戻らず, 有意な値を維持した. 電流の減衰レートもVr = 0のそれに比べて大幅に長かった (増減とも > 6 s). この振る舞いは, STOでその存在可能性が指摘されている永続的光伝導 (PPC)に類似しており, 昨年度の成果とも関連して, 金属酸化物における新たな欠陥生成機構の存在を示唆するものであり, 基礎・応用の両側面から興味深い.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・これまで1200℃の高温アニール処理後にのみ観測されていたSTOにおけるPPCに類似の現象, 即ち, 長時間に亘る低抵抗状態の保持, をアニール処理が施されていない試料で初めて観測した. 光照射下における電場の印加により, 欠陥の生成が促進される可能性が示され, 光照射又は電場印加の何れかのみでは発生し得なかった新たな欠陥生成機構の存在が示唆された. 本結果により, 金属-金属酸化物界面の欠陥制御とこれによる物性制御, 及び金属-金属酸化物ショットキー界面を舞台とした欠陥研究の可能性が示された. ・読み出し電圧Vrにより, 光照射のON/OFFに伴う光誘起電流が急激に飽和値へと増加/減衰する, 太陽電池の光電流発生機構に類似した高速モード (Vread = 0)と, 光誘起電流が長時間に亘り増加/減衰する, 電場+光誘起欠陥の関与によると推測される低速モード (Vread = -0.3 V)の切り替えが可能であることを明らかにした. リザバーコンピューティングを導入したAI学習において, リザバーの学習或いは忘却の時間スケールは学習対象となる信号の時間スケールと同等であることが好ましいと知られている. 0.5 V以下のVr印可により, 光誘起電流の増加/減衰の時間スケールを桁で制御可能なITO/Nb:STOは広範囲に亘時間スケールの入力信号に対して, 光による視覚的な学習が可能な物理リザバーデバイスとしても有望である.
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Strategy for Future Research Activity |
・光照射下における電場印加により欠陥生成が促進される機構, 及び欠陥の素性を明らかにするため, ITO/Nb:STOの裏面 (Nb:STO基板側)からの光照射を可能とし, 上面(ITO側)から入射した場合と詳細に比較する. ・紫外, 青, 緑, 赤, 各波長のレーザーを用意し, 光子エネルギーを明確にした上で, 電気及び光応答性の相関を明らかにする. ・欠陥生成には力学的エネルギーだけでなく, エントロピーが重要な役割を果たすことから, 一連の測定を温度制御下にて実施できるよう準備を進める. 光照射下で電場を印加した際, 大気中の水分やその他気体分子との電気化学反応が生じる可能性があることから, 一連の測定を雰囲気制御下にて実施するための準備も進める必要がある.
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Causes of Carryover |
コロナ禍での研究進捗の遅れ, 及び半導体部品の不足により装置の納品目途が立たなかったことが理由である。22年度は本助成金により、温度及び雰囲気制御下でレーザー光照射及び電気特性の評価を実施するための環境構築を急ぎ進める。
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Research Products
(2 results)