2019 Fiscal Year Research-status Report
Piezoresistance Effects of p-type Ge
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19K04478
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
松田 和典 徳島文理大学, 理工学部, 教授 (10192337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 史郎 香川高等専門学校, 電子システム工学科, 教授 (30300635)
筒井 一生 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (60188589)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲルマニウム / ピエゾ抵抗効果 / 結晶歪 / 非線形性 / スピン・オン・グラス |
Outline of Annual Research Achievements |
①現有の4点曲げ装置を環境試験装置内で遠隔操作ができるよう改良した.これを検証するために,多くの研究が報告されているSiのピエゾ抵抗係数と比較し,妥当な値が得られていることを確かめた.このことにより光,温度に影響を受けず精度の高い測定が可能になった. ②Geのピエゾ抵抗効果を実験的に検証するためには,抵抗層作製の問題を克服しなければならない.Geは融点が低く従来の不純物拡散法は使えないため,Geの抵抗層をどのように作製するかが問題であった.Siのプロセスでは必要であった酸化膜の代わりとなる最近開発されているスピン・オン・グラス法を試し,ある程度の見通しを得た. ③理論検討では,半導体国際会議(ICPS2016)の発表結果をもとにシミュレーションを行うととも過去の文献を調査した.p型Ge,Siのピエゾ抵抗効果は従来言われてきたホールのバンド間移行だけでなく,ホールの状態密度が大きく関わっていることによるものであることを計算により示した.この結果は応用物理学会英文論文誌(Japanese Journal of Applied Physics)に掲載された. ④ピエゾ抵抗の非線形係数は結晶の対称性と矛盾していることが以前より指摘されていた.この問題を解決するためにバンドの非線形効果や高次の係数が考えられていたが,その実験的な証拠はこれまで見つかっていなかった.本研究では,電気抵抗テンソルと電気伝導度テンソルの複雑な関係を解いて,結晶の対称性と矛盾しない非線形係数を初めて示すことができた.この結果は,すべての半導体に適用できる根本的な解決法と言え,米国物理学協会の学術雑誌(Journal of Appl. Phys.)にオンラインに掲載されるとともに,注目に値する論文(Editor’s Pick)として選出された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で行おうとするp型Geのピエゾ抵抗係数の測定では,歪による微小な抵抗変化を正確に求めることが必要である.そこで信頼できる測定値を得るために次のような課題を実施した. ①現有の4点曲げ装置を温度コントロール機能付きの環境装置内に入れ遠隔操作できるように改良した.そして改良型4点曲げ装置の検証のためよく研究されているSiのピエゾ抵抗を測定し,十分な精度が得られることが確かめた.これにより安定した環境下でノイズの少ない測定ができるようになった. ②バルクのp型Ge基板の<110>方向のピエゾ抵抗係数を測定した結果,精度はやや劣るが,信頼できる値を得ることができた.しかしn型Geではショットキー障壁ができることが原因で測定値がばらつくことといった問題があることがわかった. ③測定の精度を向上させるためには結晶方向に沿って抵抗素子を作製することが必要である.Si基板を使ってスピン・オン・グラス法で抵抗素子を作製し,評価でを行った. ④理論的検討により従来言われているようなホールのバンド間移動による影響以外に状態密度の影響が重要であることを計算により示し,論文発表した.また,ピエゾ抵抗係数のテンソル標記によって一般的な非線形係数を表すことに成功し,論文発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
①Siで確かめられたスピン・オン・グラス法および塗布拡散法を使って結晶方向に沿って抵抗素子を作製し,p型Geの抵抗素子のピエゾ抵抗係数を測定する.特に,本研究の主たる目的である<100>方向のピエゾ抵抗係数を測定し,その結果を学会発表する. ②さらにピエゾ抵抗係数の非線形性について研究をすすめるには,精度よく抵抗変化を測定する必要がある.そのために本研究で計画していた手法によりSiの抵抗素子を作製し,非線形性を測定することにより非線形性の測定精度が十分であることが検証できた後,Geのピエゾ抵抗効果の非線形性の測定を実施する. ③n型Geについては,電極と基板との接触においてショットキー障壁ができるという問題がある.この問題を電極に使用している金属の種類や電極作製の条件を変えて克服する. ③ピエゾ抵抗効果の不純物濃度依存性について調べるためには,異なる不純物濃度の抵抗素子を作製する必要がある.このため,Ge基板へスピン・オン・グラスを使うなどにより不純物拡散法の改良を行う.
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Causes of Carryover |
①4点曲げ装置の改良に外注費がかかると予想していたが,学内の工作室でほとんどのことができた. ②改良型4点曲げ装置の信頼性の検証のために,主に現有のSi基板を使ったため,Geウェーハの購入量が少なかった. ③新型コロナウィルス感染拡大防止のため国内の学会や研究集会,県外研究打合せなどが中止になったため,出張費が予定ほど発生しなかった.
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Remarks |
英国の科学情報誌「IMPACT」2020年4月号に研究紹介記事が掲載された.
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