2020 Fiscal Year Research-status Report
高効率フレキシブル太陽電池に向けたGaAsPN混晶の結晶成長
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19K04488
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
山根 啓輔 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80610815)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | GaAsPN / 太陽電池 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のターゲットとなるGaAsPN混晶は、原理的に、0.3 eVから2.0 eVと超広範囲のバンドギャップを実現可能である。加えて、シリコン基板(人類が有する唯一無二の大面積完全結晶)に格子間隔をそろえた状態(無転位結晶成長)を実現できる極めて有用な材料である。しかしながら,未だに窒素に関わる点欠陥制御がボトルネックとなって0.3~1.7eVの間でデバイス実証はない。本研究では、太陽電池応用に向け、1.7eV以下のバンドギャップをもつGaAsPN結晶の作製を目指している。 前年度に引き続きGaAsPN太陽電池セルについて、作製・評価を行った。また、その特性を元として、GaAsPN太陽電池のシミュレーション解析モデルを構築した。基板にはn型シリコン単結晶を用いた。結晶成長には、専用開発した分子線エピタキシー装置を用い、pn接合型の太陽電池を作製した。次に、電気的特性のシミュレーションに関しては、SCAPS softwareを用い、先行研究および予備検討で明らかにしたGaAsPN結晶の物性値を用いた。これに、実際の試料構造情報を適用し、標準太陽光照射時の光電流電圧特性をシミュレーションした。 結果として、最大で、開放端電圧 0.95V, 短絡電流 4.89 mA/cm2, 曲線因子 0.63, 電力変換効率3.0%の太陽電池特性が確認された。また、欠陥密度Nt=8.8×10^16 cm-2, p-GaAsPNのアクセプター濃度NA=3.2×10^16 cm-2, 放射再結合係数B=9.4×10-9 cm3/sとすることで、実験値とシミュレーション値が良好な一致を示した。また、前年度に比べて曲線因子も大きく改善した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GaAsPNの成長条件の要点として、低V/III比(V族原料とIII族原料の分子線供給比率)、高温成長(550℃以上)という知見が得られた。これにより、従来困難とされていたIII-V-V-V系の結晶を再現性良く作製することが可能となった。また、成長時の表面超構造やGaP/GaAsPN界面の制御技術に関しても学術的に有用な知見が得られた。特に、5%以上のN組成をもつGaAsPNの成長様式については、報告例はほとんどないため、ノウハウも含め、今後も実験データを蓄積していくことは重要と考えている。 また、太陽電池応用に必要とされるバンドギャップ1.7 eV付近のGaAsPN結晶を用いて、デバイスを作製できた点は特筆すべき点である。(2接合太陽電池では、1.7 eV, 3接合太陽電池では、1.5 eVが求められるのに対し、現状1.85 eV以下のバンドギャップを持つGaAsPNの太陽電池の報告例は存在しない。)
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られた知見をもとに、未踏領域のバンドギャップエネルギー(1.7eV)でデバイスを作製することができた。また、高効率化指針を示し、GaAsPN単接合セルで最大で効率13%まで引き上げられる見込みが得られた。これと、既存のシリコン系の太陽電池と組み合わせることにより、30%を超える高効率太陽電池の実現が可能である。 高効率化に向け、引き続き窒素起因点欠陥の低減に取り組む。現状の窒素起因点欠陥の推定値10^16cm-3台から将来的に10^15cm-3台まで下げることにより、目標効率の実現が可能となる。そのために、第一原理計算から点欠陥消滅機構を検討し、従来の熱処理方法以外の新たな結晶性回復方法を開発する。また、デバイスシミュレーションを通して、GaAsPN層の構造・キャリア濃度の最適化を進める。加えて、シリコン基板上に作製する際には、GaAsPNとSiの間にGaPバッファ―層を形成している。このGaPバッファ―層の膜厚、ドーピング濃度も効率に大きく影響する可能性があるため、最適化を進める予定である。
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Causes of Carryover |
最終目標であるSi基板上GaAsPNの成長に早めに以降できたため、当初実験に使用予定の液体窒素・基板代などが端数として生じた。来年度の消耗品等に充てる。
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