2019 Fiscal Year Research-status Report
A study on scattering mechanisms of inversion layer mobility in SiC MOSFETs
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19K04494
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
畠山 哲夫 富山県立大学, 工学部, 教授 (90222215)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | SiC / MOS界面 / 移動度 / 界面準位 / 散乱要因 / クーロン散乱 / 界面ラフネス散乱 / 界面電界強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来、SiC MOSFETのMOS界面の電子移動度は界面に捕獲された電子によるクーロン散乱によって制限されていると考えられていた。本研究では新規に開発したポアソン方程式とシュレディンガー方程式の自己無撞着解に基づいた移動度計算プログラムにより界面のクーロン散乱体の移動度に対する影響を調べた。その結果、室温におけるクーロン散乱移動度は界面の自由キャリア濃度が増大すると遮蔽効果により移動度が改善することが分かった。一方、実験においてはキャリア濃度が増大すると移動度が減少することが示されている。従って、界面に捕獲されたキャリアによるクーロン散乱が電子移動度の主要な散乱要因とは考えにくい。さらに、実測された移動度を再現するには界面に捕獲された電子密度より遥かに大きいクーロン散乱体密度を仮定する必要がある。以上の考察よりクーロン散乱が移動度の主要な散乱要因であるという従来の仮説は無理がある。そこで、MOS界面移動度の真の散乱要因を調べるため、MOSFETの基板バイアスを活用したホール効果測定の実験を行った。本実験により、界面キャリア密度(遮蔽効果)を一定に保ちながら移動度の界面電界依存性を調べることができる。本実験により、SiC MOS界面の電子移動度の界面電界依存性は界面ラフネス散乱移動度の界面電界依存性とほぼ同じであることが分かった。従って、SiC MOS界面の電子移動度は界面ラフネス散乱により律速されていると考えることができる。以上、本研究課題の核心であるSiC MOS界面の可動電子の移動度劣化の主要因となる物理現象、つまり散乱機構は何かという問題に対して、界面ラフネス散乱、もしくは界面ラフネス散乱に類似した移動度の界面電界依存性を持つ散乱という仮説を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポアソン方程式とシュレディンガー方程式の自己無撞着解に基づいた移動度計算プログラムの開発は進み、計算と実験の比較が可能になっている。また比較のため変分法による自己無撞着解を用いた簡略化した移動度計算を行うプログラムを開発した。こちらのブログラムは軽量で実験との比較に有用である。プログラムの開発と同時に実験との比較を行い、各散乱機構の移動度に対する影響を詳細に調べている。実験と計算との比較によりプログラムのバグを取り除く作業を行っている。プログラムによる計算の正確さに関しては、解析的な計算との比較、簡略解との比較等も行い最新の注意を払っている。産総研では新しい試料の作成も進んでいる。評価に関してはホール効果測定の解析法の研究も進んでいる。以上、本研究課題は概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ポアソン方程式とシュレディンガー方程式の自己無撞着解に基づいた移動度計算プログラムの開発を更に進め、散乱要因に関しても新しい散乱要因を考慮した機能を付加し、かつプログラム自体の信頼性を高めていく。開発したプログラムのコードはまだ整理されていないので可読性を向上させ、構造化をしてより信頼性を高めていく。別に開発した簡易プログラムに関しても、機能を付加し、先に述べた純数値計算プログラムと将来的に統合をしていく準備をする。実験に関しては、基板バイアス評価等の新しいテクニックを既存の試作試料に幅広く適用し、MOS界面移動度の面方位依存の本質を明らかにしていく。また界面準位に関しても、新しい試料を用いた評価と、簡易計算を用いた計算評価技術を組み合わせ、より正確な界面準位のエネルギー分布を求められるように開発を進めていく。
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Causes of Carryover |
日程により旅費にばらつきが生じるので、1000円程度の余裕をもたせた。残額は来年度に旅費として使用する。
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