2020 Fiscal Year Research-status Report
狭ギャップ半導体薄膜の磁場下電子物性研究と超高感度電流センサの開発
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19K04498
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
眞砂 卓史 福岡大学, 理学部, 教授 (50358058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 健司 福岡大学, 理学部, 助教 (00706864)
柴崎 一郎 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (10557250)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ホール素子 / 狭ギャップ半導体 / 量子井戸構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、ホールセンサウエハとしてInAsxSb1-x/AlyIn1-ySb量子井戸についての計算をさらに進め、0≦x≦1,0≦y≦1の全組成範囲について、0.1刻みで変化させながらバンドダイアグラムの計算を行った。バンドダイアグラムの計算はPoisson-Schrodinger方程式計算プログラム(nextnano)を用いて行った。シミュレーションに用いたウエハ構造は、GaAs cap (6.5 nm)/ AlyIn1-ySb (50 nm)/ InAsxSb1-x (50 nm)/ AlyIn1-ySb (700 nm)/GaAs (100) substrateである。 この結果、格子ミスマッチの小さい組成領域では全てタイプIIのバンド構造を持ち、伝導体がフェルミレベルの下に位置しており、極低温においても空亡化せず、極めて良好な導電性を有する。この結果は、InAsSb系半導体量子井戸では極低温で良好な導電性を示す組成があり、高い電子移動度を生かし極低温まで動作するデバイス作製が可能な材料であることを意味している。このように格子ミスマッチを小さくするためには、x, yの組み合わせは、y = 1.22 xあたりとなる。また、InSbより小さいバンドギャップを狙うためには、バンドbowing効果からx = 0.3-0.6程度が望ましい。また、井戸深さを深くできること等から、閉じ込め深さによる界面散乱の抑制効果も期待できることから、移動度向上にも有意義なバンド構造となる。キャリア密度の温度変化の少なさや、井戸の閉じ込め深さを勘案すると、極低温動作可能な磁気センサや電子デバイス等の製作に最適な組成は、x = 0.4 - 0.6 (対応するy範囲はy = 0.5 - 0.7)である。 本結果は特許化を行い、また論文としても出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はコロナ禍のため実験はあまり行わなかったが、ホールセンサウエハとしてのInAsxSb1-x/AlyIn1-ySb量子井戸について、バンドダイアグラムをx、yの全範囲の組成に渡っての計算をさらに進め、InSb系で極低温まで使えるホール素子を初めとした電子デバイス用に最適なウエハ構造を見いだすことができた。このウエハは、高移動度と高い温度安定性を有していると期待され、InSb系を用いたトランジスタ応用等にも資すると考えられる。本結果は特許出願を行い、学会や論文でも発表を行い、今後の研究指針とすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、特許出願した技術について実際にウエハを作製し電気伝導特性を検討するために、共同研究が行える企業を開拓したい。そのために、大学等主催の新技術説明会等に参加し研究内容について広く周知する。 研究内容としては、デバイス構造計算およびホール素子の形状がノイズに及ぼす影響について検討を進める。デバイス構造計算には有限要素法計算プログラムを導入し、ホール素子形状によるホール電圧応答について検討を進める。ホール素子の感度向上のためのノイズ評価は、昨年から予定していた低温でも良好なオーミック電極作製条件の確立と、ノイズ特性のサイズ依存性の測定を行う予定である。オーミック電極の作製条件探索には、InSb系はあまり高温アニール処理ができないため、量子井戸系は時間がかかる可能性がある。その後、マスクパターンの作製については既に検討が終わっているため、早期に作製し、様々な組成のウエハ、様々なサイズのホール素子のノイズ特性を系統的に調べる。
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Causes of Carryover |
昨年度はコロナ禍が終息しなかったため、共同研究者の柴﨑氏との対面での研究打合せを行うことができなかった。本年度の研究打ちあわせとして、柴﨑氏とともに旭化成エレクトロニクスの研究員の方々を交えた、「第2回狭ギャップ化合物半導体薄膜と応用討論会」を、野口研究所で開催したいと考えている。このための出張旅費として使用の予定である。
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Research Products
(7 results)