2019 Fiscal Year Research-status Report
Nitride based coherent heterostructures for efficient spin-orbit torque magnetization switching
Project/Area Number |
19K04499
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
磯上 慎二 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主任研究員 (10586853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末益 崇 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40282339)
角田 匡清 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80250702)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マンガン窒化物薄膜 / 垂直磁気異方性 / スピンホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,スピン軌道トルク磁化反転に要する臨界電流密度(Jc)の低減を新材料で実現することを最終目的としている.本目的が達成されれば例えば省電力かつ高速に動作する磁気ランダムアクセスメモリが実現できるため記録容量を格段に増大できる可能性がある. スピン軌道トルク磁化反転方式におけるJcを低減させるためには,スピンホール材料がもつスピンホール角の増大やスピン流を損失無く磁性層へ輸送するための薄膜接合界面の結晶性向上,および磁化反転層材料における飽和磁化の低減などが重要な方針である.そこで本年度はまず,磁化反転層材料の最適化と磁気特性の解明を主眼として研究を進めた.具体的にはスピンホール材料とのコヒーレント接合を可能とする新材料としてMn4Nを第一候補に挙げ,窒素リアクティブスパッタリング法にて作製,結晶成長を詳細に確かめるとともに,飽和磁化,垂直磁気異方性の窒素組成依存性を,実験と第一原理計算の双方から確かめた. 実際に作製されたMn4Nエピタキシャル膜は,従来の強磁性材料と比較して飽和磁化が10分の1程度に小さいことで,Jcの低減に対し即効性が期待できることを確かめた.また垂直磁気異方性の窒素組成依存性を調べたところ,化学量論組成比において極大値をとるが,その周辺組成でも桁で変化するわけではないことを確かめた.これらはおおむね第一原理計算による結果と一致しており,積層膜を作製する際の重要な知見を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁化反転方式におけるJcを低減させるためには,スピンホール材料がもつスピンホール角の増大や薄膜接合界面の結晶性向上,および磁化反転層材料における飽和磁化の低減などが必要である.本年度はまず,磁化反転層材料の最適化と磁気特性の解明を主眼として研究を進めた. 具体的には従来の強磁性材料ではなくフェリ磁性体であるMn4Nに着目し,これを含むヘテロ接合の作製を行った.その結果,白金膜上にMn4Nがコヒーレント成長することが構造解析により明らかとなった.これは接合界面におけるスピン流の効率的な拡散が期待できることを意味している.また飽和磁化の値は強磁性体の約10分の1であることを明らかとした.これはJcが飽和磁化の値に比例することを鑑みると,Jcを大きく低減できることを示唆する結果である.次に垂直磁気異方性の窒素組成依存性を,実験と第一原理計算の双方から確かめたところ,Mn:N = 4 : 1から意図的に変化させたサンプルならびに,結晶格子にc軸方向へ正方晶対称歪みを加えたサンプルいずれにおいても,計算結果は実験結果の傾向をよく再現することが判った.以上は本研究の目的であるJcの低減指針の確立に直結するものであり,本指針に沿ってスピン軌道トルク磁化反転に最適な垂直磁化Mn4Nを作製できるものと期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において,白金膜上に作製されるMn4N磁性膜はコヒーレント成長し,かつ飽和磁化が従来の強磁性層の約10分の1と小さく,垂直磁気異方性を有するフェリ磁性体であることから,スピン軌道トルク磁化反転に必要な臨界電流密度を大きく低減する可能性が示された.今後は,微細加工を行ったテスト素子を用いて磁化反転のデモンストレーションに着手する.テスト素子はホールバータイプを検討しているが,実際の磁気メモリに類似したナノサイズのピラータイプも用いることによって,信頼性の高いデータを取得する. 今回用いるMn4Nは窒素組成比によってはそのスピン構造がコリニアのフェリ磁性型から,ノンコリニアの反強磁性またはフェリ磁性へと変化することが知られている.反強磁性層の磁化反転デモンストレーションの報告が近年,多数なされており,一般に小さい臨界電流密度での反転が実現している.以上の例に倣い,反強磁性相であるMn4Nを意図的に作製し,スピン軌道トルク磁化反転実験と並行して原理検証を行う.
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