2020 Fiscal Year Research-status Report
共振器の多段化による超多周波数発振ジャイロトロンの研究
Project/Area Number |
19K04509
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山口 裕資 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 助教 (10466675)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 高周波ジャイロトロン / 多段共振器 / 後進波発振 / 超多周波数発振 |
Outline of Annual Research Achievements |
テラヘルツ(0.1 ~ 10 THz)帯において,多くの周波数で発振可能な高周波ジャイロトロンの実現を目指している.これまで,二段の共振器を導入し,110 GHz から 220 GHz の周波数範囲において,第一段共振器で 13,第二段共振器で 9 つの共振器モードでの基本波発振を確認した.そして,各モードの後進波発振に由来する周波数の連続的変化により,約 30% の周波数包含率を得た. 基本波発振の実験において,低周波数帯の検波装置では周波数を同定できないモードが複数見つかり,二次高調波発振の可能性が示唆された.そのため,続いて二次高調波発振の実験を行ったところ,240 ~ 360 GHz の範囲において,第一段共振器で 6,第二段共振器で 10 のモードの発振を観測し,二次高調波でも多周波数化できることがわかった.ただし二次高調波は基本波発振との競合に弱く,共振器へ入射する電子ビームの諸量を調節しても,後進波発振による連続的な周波数変化は見られなかった.そのため,二次高調波発振では周波数包含率の上昇を得られていない.また,基本波発振では数十 W を超える出力が得られるが,二次高調波では発振効率が極端に低下し,最大で数 W 程度の出力にとどまった. 二段共振器実験から得られた知見に基づき,更にもう一段の空胴を連結した三段共振器の設計を行った.第三段共振器は,二段共振器で発振が得られなかった周波数を補完するように設計し,基本波発振において約 12% の周波数包含率の上昇を見込む計算結果を得ている.一方,空胴の追加により共振器全体の長さが大幅に増えるため,超伝導マグネット内の比較的一様な磁場の領域に収納できない問題に直面した.この問題に対し,共振器を超伝導マグネット内で軸方向に可動とし,必要な空胴部を容易にマグネット中心へ配置できる構造を新たに作成した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
二段共振器を用いた基本波発振については,当初の狙いどおりに多くの周波数で発振が得られ,論文化の目標も達成できた.続く二次高調波発振の実験も,新たな調達部品は無く,すべて既存の設備で対応可能だった.一方,基本波発振とのモード競合を避けて二次高調波発振を同定する作業に多くの時間を要した.加えて,共振器の多段化の設計を狙った期間で完了できず,2020 年度中に三段共振器の実験を開始するに至らなかった.2021 年の間に,三段共振器の発振実験を完了して成果をまとめるべく,作業を急ぐつもりである.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず三段共振器に対し,基本波での超多周波数発振の可能性を詳しく調べる.特に,後進波発振による周波数の連続可変性について,空胴の追加が周波数可変領域の拡大あるいは縮小に及ぼす影響に着目する.可能であれば,二次高調波発振についても検討する.以上の結果にもとづき,共振器の多段化による超多数波数発振の可能性と限界を見定める.
|
Causes of Carryover |
理由: 2020 年度中に三段共振器の工作に至らず,実験部品の調達にも遅れが生じため. 使用計画: 調達内容に変更はなく,実験に活用する.
|