2020 Fiscal Year Research-status Report
低損失高速伝送のための負透磁率材料を用いた伝送線路設計理論の確立
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19K04521
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
中山 英俊 長野工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (10390452)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 表皮効果 / 高周波伝送線路 / 低損失 / 負透磁率材料 / Cu導体 / NiFe磁性体 / バンドパスフィルタ / 表面粗化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、強磁性共鳴周波数を超えた超高周波領域の透磁率応用分野を新たに開拓する研究として、負透磁率特性を活用した表皮効果抑制線路を提案するものであり、高速伝送線路の低損失化・低遅延化を目的としている。 表皮効果損失抑制の有効性を示すため、負透磁率材料を用いた多層構造伝送線路の設計理論を確立し、特に、プリント配線における銅箔表面粗化に対する有効性の検証を進めている。当研究で確立した円形多層構造および矩形多層構造の電磁界理論を用いることにより、種々の材料の積層構造に対して最も低損失となる膜厚を設計することができる。 令和2年度は、矩形多層伝送線路の本電磁界理論において、電流密度が集中する外側の層を更に細かく検討することにより、低損失設計の更なる最適化を図ることができた。Cu導体/NiFe磁性体の33層伝送線路で、前年度の成果は従来理論と比較して本理論を用いた伝送線路の損失を92%に低減できていたが、今年度の更なる最適化の結果、損失を80%まで低減できる結果が得られた。また、本技術の伝送線路はバンドパスフィルタの機能も有しており、上記低損失設計に伴いフィルタ特性もより急峻にできることを明らかにできた。 加えて、矩形多層伝送線路における銅箔表面粗化に対する有効性も検討した結果、表面粗化が有る場合は表面粗化が無い場合と比較して低損失効果がやや低減するものの、従来のCu単層伝送線路と比較した低損失効果は十分に得られることを明らかにできた。 一方、円形多層伝送線路の電磁界理論を発展させ、これまでの導体内部の損失だけでなく、同軸ケーブルを想定した誘電体部分の損失にも理論を拡張し、伝送線路全体の損失を評価できるようになった。 研究実績として、国際会議1件,国内学会1件の研究発表を実施することができた。また、新規の特許事案1件があり、前年度に創出した特許と統合して出願手続きを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の達成度は当初の計画以上に進展していたが、令和2年度は新型コロナウィルス感染症の影響により、研究時間が十分に取れない期間があり、令和2年度の進捗は計画よりも遅れた。 その中でも、前年度よりも低損失効果を高めることができ、フィルタ特性における評価も行うことができた。 また、銅箔表面粗化に対する有効性も検討し、その効果を明らかにすることができた。 一方、円形多層伝送線路の電磁界理論を発展させることにも着手して、同軸ケーブルを想定した伝送線路全体の損失も評価できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、銅箔表面粗化に対する有効性をより詳細に分析するために、研究計画に基づいて研究を進める。また、電気めっき製膜技術の開発に関して、研究協力者との連携により伝送線路の試作に向けて研究を進める。 一方、円形多層伝送線路において、同軸ケーブルを想定した伝送線路全体の設計に関して創出した特許出願を進める。本研究により、試作した円形多層伝送線路に使用される磁性材料の高周波透磁率を逆算することもできるため、新たな高周波透磁率測定技術として、研究の更なる展開も期待できる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、主に、予定していた電磁界解析ソフトウェアの年間保守契約料を別の経費で充当できたことと、新型コロナウィルス感染症の影響により、関連出張が取り止めとなり、国際会議および国内学会等が中止またはオンライン実施になったことにより旅費関係の支出が少なかったため、次年度使用額が生じた。 次年度の使用計画は、今年度同様に旅費の支出が少なくなることが予想される。得られた成果を国際会議等で発表しつつも、その他経費や研究活動を更に推進するための経費を充実させて使用を計画する。
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