2019 Fiscal Year Research-status Report
Photoconductive devices based on quantum dot superlattice for THz generation and detection
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19K04532
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
和田 修 神戸大学, 学術・産業イノベーション創造本部, 客員教授 (90335422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 磨 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (00415845)
海津 利行 神戸大学, 研究基盤センター, 助教 (00425571)
原田 幸弘 神戸大学, 工学研究科, 助教 (10554355)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | InAs量子ドット / 量子ドット超格子 / 低温成長GaAs / 光伝導アンテナ(PCA) / 超高速キャリア緩和 / 電場増強構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、量子ドット(QD)超格子を用いた光伝導アンテナ(PCA)デバイスに向けた結晶作製方法の開発、超高速分光法によるこの結晶の超高速キャリア緩和特性の確認、さらに基本的なPCAデバイスの作製を実行した。また、PCAにおける電場増強効果の可能性に関する理論検討を開始した。 結晶成長・デバイス作製関連では、まず分子線エピタキシによる低温成長(LT-)GaAs層の成長条件を確立した後、半絶縁性GaAs(001)基板上にInAs QDs(2.0分子層)とGaAs中間層(50 nm)を20層積層し、さらにLT-GaAs層(30 nm)を成長することによりデバイス結晶を得た。デバイス作製では、Ti/Au電極間ギャップ約5 μmのダイポール型PCA電極形成、およびメサエッチ加工を行った。メサ構造の採用により、暗電流の値を2桁抑制できることが判明し、デバイス特性評価に十分適用できるものと判断した。 結晶の光学特性評価に関しては、量子ドット超格子試料に対して反射型ポンププローブ法を適用し、キャリア緩和ダイナミクスを測定した。現在広く使用されている市販のLT-GaAsを用いたPCAとの性能の比較を行うために、超短パルスレーザーの波長を810 nmとして、室温において測定を行った。パルス幅が約100フェムト秒程度の超短パルスを照射して測定した結果、0.6ピコ秒程度のキャリア寿命を得、十分にPCAデバイスとして使用できる高速性を確認できた。 電場増強による最適化デバイス構造の検討に関しては、光励起キャリアによる、InAs量子ドットにおける電場増強効果を境界要素法によって解析した。GaAsホスト結晶に埋め込まれた半球状のInAs量子ドットにおいて、局在表面プラズモンに起因する電場増強効果を10E18/cm3程度の自由電子密度において10μm帯で確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画として、量子ドット超格子PCA構造の作製とキャリア・ダイナミクスの解明、量子ドット超格子PCAデバイス設計と基礎特性評価、最適化PCAの製作・評価およびシステム適用性評価の3つの項目を挙げている。 量子ドット超格子PCA結晶構造の作製に関しては、本年度、多重積層InAs量子ドットの分子線エピタキシ成長におけるGaAs中間層の膜厚や低温成長GaAsキャップ層の成長温度、成長後の試料のアニール条件などPCA素子の作製条件を確立し、メサ加工を施した多重積層量子ドットPCA素子において、暗電流の大幅な低減と光照射による明瞭な電流増大により、基礎特性を確かめた。 量子ドットにおけるキャリア・ダイナミクスの検討では、本年度反射型ポンププローブ法によるキャリア寿命を測定し、0.6ピコ秒程度の結果を得た。これは表面のLT-GaAsを励起して生成されたキャリアが無輻射緩和過程で消滅するのではなく、量子ドットへ緩和することで超高速緩和が得られたと推定でき、量子ドット導入の効果が表れていると考える。また、量子ドット付近の格子不整合歪みに起因した無輻射緩和が十分に抑制されており、PCAとして十分使用できる高品質結晶が実現できた。 境界要素法を用いた解析により、局在表面プラズモンに起因する電場増強効果(電場増強度と共鳴波長)がInAs量子ドットの形状と自由電子密度に強く依存することを確認した。扁平な形状の量子ドットでは、半球状の量子ドットよりも電場増強効果が発現する波長域が広帯域化することを明らかにした。 これらの進捗状況を総合的に判断し、少なくとも計画通り、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
PCAデバイスの作製関連では、高効率化に向けた多重積層InAs量子ドット構造の最適化とともに、特定の波長を選択的に反射する分布反射鏡(DBR)構造の挿入ならびに量子ドット積層数の増加によって、テラヘルツ波の高強度発生・高感度検出に向けたデバイス構造の実現を目指す。DBR構造としてGaAs/AlGaAs超格子構造の設計・作製に加えて、30層以上の多重積層量子ドットを有するPCAデバイスを作製し、その特性評価を進める。 量子ドット超格子結晶の光・テラヘルツ波特性評価については、光励起して発生するキャリアのダイナミクスを解明するとともに、テラヘルツ波発生の基礎特性を解明していく。波長800 nm近傍の超短パルスを用いて励起し、発生するテラヘルツ波を検出する。さらにこれを発展させて励起光強度や励起波長を様々に変えて測定を行うことで、キャリア・ダイナミクスとテラヘルツ波発生・検出特性との関係を解明していく。 デバイスの最適化構造の検討では、電場増強構造の可能性の検討を継続するために、境界要素法による解析を用いて、PCAデバイスによって発生・検出するテラヘルツ波の波長における電場増強効果の発現条件を検証する。得られた知見を、InAs量子ドットにおける電場増強効果を利用したPCAデバイス構造の設計に活用することを試みる。 これらの研究により、量子ドット超格子PCAデバイスにおけるキャリア緩和など基本的物理機構、及びデバイスのテラヘルツは発生・検出の基本特性を確かめることに加え、新たな設計に基づく最適化デバイス構造を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの感染拡大により一部の実験の実施を遅らせたこと、学会が開催中止になったことなどにより、消耗品購入および旅費等の一部を使用しなかったため、これらは次年度以降に使用する予定である。
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Research Products
(22 results)