2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of an intense terahertz pulse source using semiconductor heterostructures
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19K04540
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐々 誠彦 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50278561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 政俊 大阪工業大学, 工学部, 講師 (30758636)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | テラヘルツ放射 / terahertz radiation / GaSb/InAs ヘテロ構造 / フォトデンバー効果 / photo-Dember effect / パルス光源 / pulse light source |
Outline of Annual Research Achievements |
安価なGaAs基板上に成膜したInAs薄膜を利用した,フォトデンバー高強度テラヘルツパルス光源の開発を行っている。すでに,励起波長 800 nm のレーザで励起した場合には,GaSb/InAsヘテロ構造の利用により,GaSb光励起層からInAs放射層へのホットエレクトロン注入により,InAs薄膜のみに比べ,放射電界強度が 1.4 倍増加することが分かっている。 本研究では,GaSb層の厚さを詳細に検討し,従来の 5 nm の構造と新たに 10 nm, 20 nm の構造を作製し,放射特性の比較を行ったところ,GaSb の膜厚が増加するに従い,放射強度は単調に低下することが分かった。この結果は,ヘテロ界面に,より多くのキャリアを生成する方がよいことを示唆していると考えられる。 また,励起光源としてより安価でコンパクトな光源が使用できる波長 1.56 um での実験も行った。この場合当初は,InAs 薄膜を超える放射強度を得ることができず,増強効果が確認できなかったが,本波長では,GaSb層の吸収係数が低下し,有効に機能しないためと,原因を特定できた。 そこで,光吸収層のバンドギャップを低下させ,光吸収を増大させるためGaSbにInSbを加えInGaSbを光吸収層とした構造を作製し,同様の実験を行い,光吸収が与えるう影響について調べた。その結果,InGaSb 10 nmの構造で,InAs薄膜の放射強度を超える放射強度を確認し,ヘテロ接合を利用したフォトデンバー放射素子が 1.56 um 励起でも有効であることが示された。 これらの結果を詳細に検討し,ヘテロ接合支援のフォトデンバー効果によるテラヘルツ放射素子では,ヘテロ界面のエネルギー差による高エネルギー電子の注入以上に界面での高いキャリア生成が重要であるとの結論を得て,その結果を IRMMW 国際会議にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,フォトデンバー効果を利用した,テラヘルツパルス光源の高強度化に向け,ヘテロ接合の利用をその実現手段としている。そのため,ヘテロ接合内部での光励起から放射に至るキャリア生成・輸送の素過程を理解し,それぞれの過程の発光プロセスへの寄与・重要性について理解することが大きな目的のひとつである。今年度は,これまでに行った GaSb/InAs ヘテロ構造の GaSb 層の詳細な膜厚依存性の実験結果と InGaSb/InAs ヘテロ構造の組成比,厚さ依存性の結果を詳細に検討した。 その結果,放射強度の増大には,ヘテロ接合での伝導帯不連続によるホットエレクトロン注入による効果が支配的であるという理解から,それに加え,ヘテロ界面でのキャリア生成量が重要な役割を果たしていることを見出した。そのため,伝導帯不連続が大きい GaSb/InAs ヘテロ構造に比べて,伝導帯不連続は減少する InGaSb/InAs ヘテロ構造において,より吸収層の厚い構造で放射強度の増強効果を確認することに成功し,高強度放射素子実現に光吸収過程を制御することの重要性を認識することができ,研究目的を達成するための知見を深めることができているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記したように,InGaSb/InAs ヘテロ構造により,光吸収を高めることが高強度放射の鍵となることが明らかになってきている。これまでは,InGaSb層を形成する際には,InAs層との格子不整合を考慮し,格子欠陥・転位が発生しない範囲でヘテロ構造を検討してきたが,光吸収過程とキャリア輸送過程が非常に短時間の内に終了することから,必ずしも結晶欠陥の少ない構造を利用する必要があるかどうかについても,再検討する価値があるものと考えており,従来の検討範囲を超える領域での検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の実施には,試料の作製に分子線結晶成長装置を利用するため,その運転には液体窒素の使用が必須である。液体窒素の費用は,従来,大学の費用を主に使用していたが,令和2年度から,その費用が減額となったため,令和3年度以降の液体窒素費用を次年度使用額から充てることを計画している。
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Research Products
(5 results)