2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of life extension method for slab and slab-waterproofing system using remained layer of bridge deck pavements
Project/Area Number |
19K04548
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
高橋 修 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (60236263)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 橋面舗装 / 切削残存層 / 床板防水層 / 浸透乳剤 / 防水性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,橋面アスファルト舗装を打ち換える際に切削残存層を撤去せず,そのままコンクリート床版の保護層として有効利用する工法について検討している。切削残存層にはひび割れや剥離等の損傷が生じていることから,表面から浸透型補強剤を散布することにより,防水性と耐久性を再生,強化して,床版保護層として再利用する方法である。研究初年度は,実際の打換工事現場において切削残存層の損傷状況を調査するとともに,サンプルを採取して防水性能の低下状態を確認した。そして,次年度は浸透型補強剤の施工による防水性能の改善効果について基礎的な実験を行った。 切削残存層の主な損傷はひび割れであり,輪荷重の作用や切削残存層の厚さが床版面の位置によって異なることから,ひび割れ程度も位置によってかなり異なっていた。ひび割れ幅は,目視できないヘアクラック状のものから5 mm程度のものまで,広範囲かつ不規則に分布していた。ひび割れ幅が広い箇所は,ひび割れ内部に粒子状の切削屑が入り込んでいた。また,切削残存層はアスファルト層の底部にあることから,旧アスファルトの劣化はあまり進行していないことも確認した。 現場調査の結果から,切削残存層に床版保護の機能を付与するためには,ひび割れ損傷による防水性の低下を補うことが肝要と判断し,これに適したアスファルト系浸透乳剤を選定した。選定した乳剤はカチオン系高濃度改質アスファルト乳剤で,遮水型排水性舗装工法での使用実績がある。 まず,ひび割れ幅と防水性能の関係について着目し,ひび割れ幅を変化させたアスファルト層に浸透乳剤を塗布し,透水試験を実施して防水性能を評価した。その結果,ひび割れ幅が3.5 mmを超えると透水してしまうことがわかった。つぎに,ヘアクラック状のダメージについて着目し,空隙率が6.0%を超えるアスファルト層に浸透乳剤を塗布した場合の,防水性能の向上について評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の当初計画では,研究期間の間に以下の2点について検討することとしていた。①補強用浸透型アスファルト乳剤の性能とアスコン切削残存層が許容できるひび割れ程度の関係および不透水性効果について知見を得る。②浸透型アスファルト乳剤の補強によって構築した床版保護層の性能(防水性能と付着性能)について,土木学会の「道路橋床版防水システムガイドライン2016(土木学会鋼構造委員会)」の要求性能に基づいて評価する。 研究期間において2年が経過した時点で,①の検討を完了させる計画であり,線状ひび割れについては完了することができた。しかし,面状に広がるヘアクラックについては,大学への登校自粛や外部研究機関への加圧透水試験の委託延期があったため,検討作業が予定どおり進行できなかった。これらの登校自粛と委託延期は,新型コロナウイルス感染症の影響が長期期間に及んだことによるもので,特に研究期間2年目の令和2年度は,実際にデータを取得するために必要な各種実験業務になかなか着手できず,結果的に実験を始められたのが年度末に近い時期になってしまった。 しかしながら,進捗の遅れを挽回できるように,加圧透水試験の業務委託は既に履行中であり,速やかに①の検討の残りの実験業務を完了できる見通しが立っている。そして,早い段階で②の検討に移行する予定である。②の検討において,構築した床版保護層の性能はアスファルト中間層としての機能であることから,既往の評価法,評価基準をそのまま適用して検討を進めることができる。 以上のことから,現在までの進捗状況に本研究の当初計画を照会すれば,「(3) やや遅れている。」と評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は研究期間の最終年度であることから,速やかに上記①の検討を完了させて②の検討を着手する。そして,②の検討も早い時期に完了させて,全体の取りまとめ作業を開始する必要がある。 ②の検討業務については,防水性能と付着性能の基本的機能に加えて,これらの持続性および施工性や経済性についても考慮する。また,本研究で検討している床版保護層は,床版防水層の一部ではなく,あくまでもアスファルト中間層であることから,中間層としての耐久性についても検討する。しかしながら,これら性能の評価法は標準化に至っていないものもあるため,評価因子として独自に評価パラメータを考案・設定して検討していく。特にアスファルト系材料では,付着性能は浸透性および施工性と相反する性能(付着性には高い粘性が必要であるが,浸透性や施工性には粘性が低いほうがよい)であることから,最適値をどのように考え,どのように設定するかが問題となる。また,これらの評価値は,切削残存層の状態と浸透型補強剤の性能に依存することになる。そのため,上記①の検討結果とも関連させて,切削残存層の状態および浸透型補強剤の性能をパラメトリックに変化させて特性値を比較し,両者の関係を具体化していく。 本研究では,浸透型補強剤として微細なひび割れや隙間に浸透するように軽質オイル分を含むアスファルト乳剤を想定していた。この種の浸透型アスファルト乳剤は,製造業者によっていくつかのものが開発されている。その後の検討として,更に性能を向上させた浸透型補強剤の開発についても方向性を模索する。上記のとおり,付着性と浸透性および施工性を同時に向上させることは容易でないが,性能を総合的に評価して,最も付加価値の高い浸透型補強剤を検討していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響が長期期間に及び,大学への登校自粛や外部研究機関への試験委託の延期があり,各種実験業務になかなか着手できず次年度使用額が生じた。 令和3年度は速やかに各種実験業務に着手し,該当助成金を執行する予定である。
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