2019 Fiscal Year Research-status Report
解像度に依存しない分布表現を用いた材料内部の物性値分布の推定手法の開発とその応用
Project/Area Number |
19K04571
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
古川 陽 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (60724614)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アンセンテッドカルマンフィルタ / 比誘電率分布 / 多重解像度表現 / しきい値作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は実施期間の初年度であり,1次元問題を対象に材料物性値分布の推定手法の開発について,以下に示す検討を行った. はじめに,アンセンテッドカルマンフィルタを用いた1次元比誘電率分布の推定手法の開発を行った.本研究では,推定対象とする材料物性値分布を離散的な取扱いを行わずに表現することを目的としている.しかし,当該年度は,その目的を達成するための事前検討として,材料物性値分布を離散的な基底関数によって表現する手法を採用し,推定手法の開発を行った.具体的には,ウェーブレット基底関数に基づく多重解像度表現によって材料物性値分布を表現した.加えて,推定アルゴリズムにはl1正則化に用いられるしきい値作用素を組み込み,スパースな推定解が得られるようにした.これにより,離散的な分布表現における基底関数の選択の影響を調べた.その結果,観測雑音に依存して,高周波成分を表現するための基底関数が切り捨てられることを確認した. 次に,上述の開発手法において,基底関数の選択によって推定解から除外される基底関数を特定し,それに関連する計算コストの削減について検討した.その結果,推定アルゴリズムにおける平方根行列の計算やシグマポイントによるサンプリング計算のコストを削減することに成功した. これらに加えて,2次元問題への適用の準備として,飽和多孔質弾性体の2次元面内波動問題に対する数値解析手法の開発も行った.なお,この数値解析手法は2次元の材料物性値分布の推定問題の開発において,観測データを作成する際に用いられる他,推定アルゴリズムへの組み込みも検討する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定と比較して遅れが生じた原因は,上述した多重解像度表現を用いた推定手法の開発に注力したためであると考えている.この推定手法の開発によって得られた知見は,本研究で開発を目指す推定手法(解像度に依存しない分布表現を用いた材料物性値分布の推定手法)の開発においても重要な役割を果たすと考えており,今後の研究の遂行において,これらの知見を有効に活用する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である,解像度に依存しない分布表現を用いた材料物性値分布の推定手法の開発に取り組む.対象とする問題は,これまで取り扱ってきた1次元比誘電率分布の推定問題とする.推定アルゴリズムは,これまでと同様に,アンセンテッドカルマンフィルタを用いる.具体的な研究の推進方策を以下に示す. はじめに,解像度に依存しない分布表現手法の開発とその特性の把握を行う.本研究では,解像度に依存しない分布表現としてウェーブレット級数展開を用いる.ウェーブレット級数展開による関数の近似問題を考え,アンセンテッドカルマンフィルタに基づく推定アルゴリズムを構築する. 次に,解像度に依存しない分布表現を取り入れた材料物性値の推定手法の開発を行う.対象とする問題は,これまでと同様に1次元比誘電率分布の推定問題を対象とする.開発手法の性能の評価は,前年度に開発した推定手法との比較を通して行う.その際には,推定結果の精度のみならず,観測雑音による影響や計算効率についても着目する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,当初研究の進捗にあわせて購入を予定していた書籍の購入を見送ったためである.この次年度使用額は,使途を変更せず次年度に使用する予定である.
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