2020 Fiscal Year Research-status Report
解像度に依存しない分布表現を用いた材料内部の物性値分布の推定手法の開発とその応用
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19K04571
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 陽 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60724614)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多重解像度表現 / 弾性波トモグラフィ / マッチング追跡アルゴリズム / 周波数解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,以下に示す3つの項目について研究を実施した. はじめに,前年度の研究成果である1次元比誘電率分布の推定手法の開発に関連して,多重解像度表現を用いた弾性波トモグラフィ手法の開発に取り組んだ.開発手法では,ウェーブレット級数展開に基づく多重解像度表現を用いて材料物性値の2次元分布を表現し,材料内部を伝播する波動の到達時間からその物性値分布を推定した.弾性波トモグラフィでは,材料物性値の分布表現のみならず,弾性波の伝播経路も推定に影響を及ぼす.すなわち,逆問題の定式化によって生じる線形システムに含まれる係数行列の性質は,分布表現と伝播経路によって決定される.そこで,当該年度はそれらの関係性について,いくつかの数値解析例をもとに考察した. 次に,解像度に依存しない分布表現を得るための求解手法に関する基礎的検討にも取り組んだ.本研究では,貪欲法の一種であるマッチング追跡アルゴリズムを用いた解法の開発を行った.具体的には,有限フーリエ近似によって表現された近似信号における近似係数を,マッチング追跡アルゴリズムによって推定した.この際,有限フーリエ近似に用いる離散周波数を,観測信号に依存することなく設定できるように改良した.これにより,本来観測信号の継続時間によって決定される周波数分解能に依存することなく,周波数解析を実現できることを示した. 加えて,解像度に依存しない分布表現の原型となる関数近似公式について検討に取り掛かった.ここでは,ウェーブレット級数展開を一般化した表示式を考え,関数近似を対象に基礎的な検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定と比較して遅れが生じている原因として,前年度まで検討を行っていたアンセンテッドカルマンフィルタを用いた推定方法に加えて,マッチング追跡アルゴリズムを用いた推定手法の開発に取り掛かった点が挙げられる.このような判断を行った背景には,今後の本研究で取り扱う予定のいくつかの問題に対して,アンセンテッドカルマンフィルタが最適な解法ではない場合があることを確認したためである.
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Strategy for Future Research Activity |
はじめに,ウェーブレット級数展開を一般化した表示式を用いた関数近似手法の開発を行う.そして,その近似手法を用いて,材料物性値分布の推定問題の解析を行う.ここでは,材料物性値の急激な変化と緩やかな変化が混在する領域に対して,材料物性値の分布を効率的に推定することのできる手法の開発を目指す. また,多重解像度表現を用いた推定手法の開発にも引き続き取り組む.開発した手法と上述の推定方法の比較を通して,各手法の特徴の整理を行う. 加えて,マッチング追跡アルゴリズムを用いた周波数解析手法の改良にも取り組む.周波数解析はフーリエ変換・逆変換によって構成されるため,微分方程式の解法への援用も期待できる.そのため,微分方程式の近似解を効率よく求める方法について検討,最終的には数値シミュレーションへの応用を目指す.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,当初予定していた出張等を取りやめたため,次年度使用額が生じた.今後は状況に応じて旅費への使用を判断し,旅費としての執行が難しい場合は,物品費等として執行する.
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