2019 Fiscal Year Research-status Report
溶射が施された鋼材の腐食メカニズムの解明と補修技術の開発
Project/Area Number |
19K04581
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
麻生 稔彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30231921)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 溶射 / 腐食 / 補修 / 鋼橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
I.実橋梁における腐食調査および腐食環境調査 山口県内には溶射橋梁がいくつか存在するが,そのうち海岸に近い溶射橋梁において腐食が発生している.当該橋梁について,腐食の位置と程度を調査した.その結果,全体的にはほぼ健全であるが,主に桁の内側において部分的に溶射皮膜の酸化による白さびが認められ,また,溶射皮膜が消耗し赤さびが発生している部位がある.橋梁全体としては鋼道路橋塗装防食便覧によるレベルⅠの状態であるが,部分的にレベルⅡからレベルⅢへ移行しつつある部位も認められる.部位別には(1)首溶接部:下フランジ桁内側にほぼ全線にわたって発生,(2)ウェブ:赤さびと白さびが発生,白さびはもろいウエハース状になっている箇所あり,(3)上フランジ:やや広がりを持った赤さびが発生,(4)下フランジ:上フランジと同様であり,コバ部はエレピークションピース切断跡からも一部発錆となっている. II.溶射鋼材における腐食発生メカニズムの解明 溶射鋼材に腐食が発生する要因や腐食の進展過程を明らかにするために,素地調整程度,溶射厚,封孔処理の有無,施工距離をパラメーターとした試験片48枚を製作し,腐食促進試験(複合サイクル試験)を開始した.複合サイクル試験は270サイクル(3か月間)行う.これらの試験片と同様の試験片を作成し,密着力試験(アドヒージョン試験)を実施した.溶射膜厚の程度によっては被膜の密着性に大きな差異は確認されなかったが,素地調整を3種ケレンとし,素地調整が不十分な状態で溶射を行った試験片においては密着性の大幅な低下が確認された(素地調整Sa3試験片:16.18~21.16N/mm2,素地調整St3試験片:2.52~9.01N/mm2).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた項目のうち,「実橋梁における腐食調査および腐食環境調査」については概要調査を終了し次年度からの腐食環境調査が実施可能となった.「溶射鋼材における腐食発生メカニズムの解明」では素地調整程度が溶射の密着力に影響を与えることを明らかにしたとともに,促進試験を開始した.
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Strategy for Future Research Activity |
・実橋梁の腐食環境調査を実施し,腐食との関係を明らかにする. ・実橋梁観測と併せて促進試験を実施し,溶射を施した鋼材の腐食進展過程およびメカニズムを考察する. ・上記2点の成果をもとに,溶射鋼材の腐食の評価方法を開発する.
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Causes of Carryover |
理由:測定項目および実験項目を見直した結果,消耗品に未使用が生じた. 使用計画:翌年度経費と併せ,調査研究旅費および消耗品費として使用する.
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