2019 Fiscal Year Research-status Report
強震で損傷した鋼橋の的確な早期復旧を可能とするハイブリッド補強設計法の研究
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19K04584
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
渡辺 孝一 名城大学, 理工学部, 教授 (90387762)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鋼橋の桁端部損傷 / 支承取り換え / 鋼橋の補修補強 / 模型実験とFEM解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度(令和元年度)は,損傷した橋梁に作用する外力や応力分布状態を適切に取得するための計測グリッドの構築に関する研究に取り組んだ.この計測グリッドは,橋梁の実測ひずみから応力情報を取得するとともに,計測グリッドからの応力情報をFEM解析による数値解析モデルの境界条件として変換するひずみゲージ計測網の呼称である.まず,計測グリッドを反映させるFEMモデルに関する検討のため,別途実施する模型実験から得られる荷重とひずみデータ情報をシェル要素で構築した解析モデルの力学的境界条件として与えるための基礎的検討を解析的に実施し,桁のサイズに対して有効なメッシュ分割および,ひずみデータ抽出断面の適正化について検討を進めた. これらの解析的検討を経たのち,計測グリッドを構築するための基礎的実験を実施した.実験供試体はJIS規格圧延H鋼を利用したフランジ幅150mm,ウェブ高300mm,有効支間1600mmの桁模型供試体(4台)である.これを単純支持状態として支間中央に油圧ジャッキで荷重を与える静的破壊実験を実施し,支点部付近のウェブに計測グリッドとして3軸ゲージ網を構築した.この時,新たに導入したデータロガーを活用し,ゲージ計測結果の変動の影響を分析と計測アルゴリズムの改善を行った.そして,弾性荷重作用時におけるジャッキ荷重と支点反力の関係を測定し,計測グリッドから推定する支点反力やFEM解析との推定精度を比較検証した.小型実験に適用する計測グリッドによる支点反力の推定は,理論計算値に対して約16%安全側にとどまっており,更なる高精度化が必要である. これらの成果は,令和元年3月の土木学会中部研究発表会(長野高等専門学校)に投稿したが,新型コロナウェルス感染症防止対策のため論文はウェブ上での公開に変更され,大会は開催中止となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究初年度に実施した桁模型実験の計測において,この研究を遂行するために改善すべき問題が見つかったことから,その改善のために慎重に実験を進めた.その結果,当初よりも計測グリッドを構築するための基礎実験が遅延した.具体的には,弾性荷重作用時におけるジャッキ荷重と支点反力の関係は概ね線形関係となるが,実際の実験においてはジャッキ荷重を保持した状態において,油圧装置の制御によらず荷重が僅かにに低下する傾向があり,この荷重低下を補うためのジャッキ保持機構が,実験供試体への荷重作用として影響を与えることが明らかとなった.これは油圧ジャッキの機械的特性上回避することは困難であるが,出来る限り,この特性を軽減するためジャッキ荷重増分に対する計測荷重値を10Hz程度の周期で計測し,荷重の安定状態を推測するアルゴリズムを構築した. このように今後の実験を円滑に遂行するための荷重計測のアルゴリズムの効果を検証し,模型実験データをさらに増やす予定であったが,新型コロナウィルス感染症防止対策のために年度末から令和2年度の6月現在に至るまで,実験に着手することが出来ていない. 現在は机上検討によりこれまで計測した実験データを分析するなど,可能な研究を継続している.研究活動を再開した後は,当初予定のFEM解析モデルと計測グリッドシステムを融合してハイブリッド補強法の具体化に向けた研究実験を継続する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,桁の載荷実験のために準備したH鋼供試体を活用して油圧ジャッキの載荷装置による荷重載荷の安定化を検証した後に,当初計画の通り桁高さ700mm程度の小型模型供試体を製作し実験供試体とする. 当初予定としていた地震動による桁端部の破壊を静的な荷重載荷実験で再現することについては,桁支点部の限定的な破壊にとどめることで,実験に要する期間を短縮し実験期間の短縮を図る.損傷した桁を普及するためのジャッキアップの過程で,計測グリッドおよびジャッキアップ部の部分FEM解析モデルを構築し,桁に作用する外力を計測グリッドから取得した力学的境界条件をFEMに反映しながらジャッキアップ量を適切に制御することで,ハイブリッド補強法による供試体断面力の変化や桁断面形状を精密に測定し検証する.最終的にこの設計法の有用性をとりまとめ,これらを研究成果として報告予定である.
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Causes of Carryover |
研究を遂行するための計測装置としてデータロガーを購入し,桁模型の載荷実験に活用した.実験および解析成果をとりまとめて令和元年度3月に開催が予定されていた研究成果発表に投稿した.しかし,学会発表が新型コロナウィルス感染症防止対策のため中止となり,学会発表旅費が未使用として残金が生じた.研究計画の全体としては,概ね予定どおりである. 今年度は,桁模型の載荷実験桁の載荷終了後の破壊損傷状況を解析的に模擬するための解析ソフトの使用ライセンスとして430千円を支出し,数値解析による計測グリッドの最適化を進める.10月以降に予備実験結果と数値解析結果を反映して,縮小模型実験を製作し,年度末にかけてハイブリッド補強設計実験の載荷を準備を進める.この実験に使用する縮小模型桁に600千円を予定し,ひずみゲージなどの消耗品に300千円の支出を計上する予定である.
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Research Products
(1 results)