2020 Fiscal Year Research-status Report
高力ボルト摩擦接合と接着接合の併用法の力の伝達の解明と設計法の確立
Project/Area Number |
19K04585
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
石川 敏之 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (00423202)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 接着 / 高力ボルト / はく離 / せん断遅れ / 引張試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,損傷した鋼橋に対して,効率的な当て板補修が行えるように,高力ボルト接合と接着接合の併用法の設計方法を提案することを目的としている. 高力ボルト接合と接着接合の併用として,高力ボルト摩擦接合面に当て板よりも小さなフィラープレートを挿入し,高力ボルトの締め付けを行い,その後フィラープレートによって生じた隙間に接着剤を充填し,接着剤により主板の軸力の一部を当て板に伝達させる混合法に対して,損傷を模擬した鋼板の力の伝達の評価を行った.その結果,端部だけでなく,損傷位置近傍の,接着剤部においても接着剤により力が伝達されることが明らかになった.ただし,端部あるいは損傷部ではく離破壊が生じた後は,高力ボルト接合と同様な挙動を示した.また,解析的な評価を行い,損傷部近傍の接着剤によって力が伝達されることも明らかにした.損傷部に作用する応力は,一般的な設計で用いられる値と異なることが明らかにされているが,接着を併用した場合も同様な傾向になることも明らかにした. 接着剤による力の伝達の遅れを評価するせん断遅れ理論と,高力ボルト接合をバネモデルと仮定したせん断遅れ理論を適用し,力の伝達の分担に対する簡易的な評価手法によっても,損傷部に生じる応力の評価や,損傷部近傍の接着剤による力の伝達が簡易的に求められ,接着剤がはく離するまでの範囲において,接着剤と高力ボルトの力の伝達の分担が,実験値や解析値と近いことが明らかになった. 損傷部を当て板補修する際,損傷部に作用する応力の基本的な検討として,損傷部を当て板補修された試験体を用い,損傷部と当て板との応力分担の基礎的な試験も実施した.その結果,高力ボルト接合に対しては,設計で用いられる構造解析により評価できることも明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,損傷した鋼橋に対して,効率的な当て板補修が行えるように,高力ボルト接合と接着接合の併用工法の設計方法を提案することを目的としている.具体的には,(1)高力ボルト接合と接着接合の併用(合成法と混合法)に対する荷重伝達機構の解明,(2)接着剤の種類による影響,(3)高力ボルト接合と接着接合の併用に対する限界状態の定義と設計法の確立を行う. 令和2年度は,(1)の高力ボルト接合と接着接合の併用に関する荷重伝達の解明,(2)接着剤の種類による影響について検討を進めた.(1)に関しては,損傷部を当て板高力ボルト接合と接着接合の混合法によって補修した場合について,引張試験,有限要素解析および理論的な評価によって,弾性範囲内において,損傷部近傍の接着剤と高力ボルトの力の分担などの評価ができている.また,断面欠損部を当て板補修した場合に,断面欠損部の応力が設計計算よりも高くなる現象について,基本的なメカニズムの解明のための実験とFEM解析を実施し,設計で用いられる骨組構造解析を利用して簡易に評価できることも示した.(2)に関しては,接着接合として接着剤の違いによるはく離の強度の評価を,単純な当て板接着試験体によって明らかにしている.(3)の高力ボルト接合と接着接合の併用に対する限界状態の定義については,試験結果を利用して終局強度の評価が行えると考えており,新型コロナウィルスの影響で,試験が遅れているものの,解析は順調に実施できているので,ほぼ計画通りに検討ができていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は,令和2年度に引き続き(1)高力ボルト接合と接着接合の併用(合成法と混合法)に対する荷重伝達機構の解明の続きと,(3)の高力ボルト接合と接着接合の併用に対する限界状態の定義を行う. (1)に対しては,実験的な検討と解析的な検討の両方を行う.特に,損傷部が破断する条件を明らかにする必要があると考えている.損傷部が破断する状況を,(3)の限界状態に含めるかどうかについても検討する.これまでの研究成果により,接着部のはく離やその後の挙動のデータが揃ってきているので,試験結果に合わせて(3)の定義を行う.
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Causes of Carryover |
令和2年度は,新型コロナウィルスの影響もあり,試験数が若干少なくなったため,計画していた経費の使用に至らなかった. 令和3年度も,新型コロナウィルスの影響が考えられるが,早い段階で試験を実施して,当初通りの成果を達成する計画的な経費の利用が可能であると考えている.
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