2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the ultimate compression strength properties of corroded built-up member
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19K04587
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Research Institution | Akashi National College of Technology |
Principal Investigator |
三好 崇夫 明石工業高等専門学校, 都市システム工学科, 准教授 (40379136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉田 和也 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00455148)
高井 俊和 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (00759433)
岩坪 要 熊本高等専門学校, 生産システム工学系ACグループ, 教授 (60290839)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 組立部材 / 腐食 / 耐荷力 / レーシングバー / リベット / 消失 |
Outline of Annual Research Achievements |
計算機を購入し,汎用有限要素法解析プログラムMarc2021およびAbaqusを用いて,2019年度の実橋(組立材を有する支間長50mの上路式2ヒンジアーチ橋,1933年竣工)現地調査において,レーシングバーの腐食による消失が認められた鉛直材を対象として,有限要素モデルを構築して弾塑性有限変位解析を実施し,その終局挙動と耐荷力について検討した. Marcを用いた解析では,鉛直材の格点間を対象に,溝形鋼とエンドタイプレートを4節点シェル要素,レーシングバーを2節点トラス要素でモデル化し,レーシングバーやエンドタイプレートの腐食による消失が終局挙動や耐荷力特性に及ぼす影響について検討した.同モデルではリベット部の詳細なモデル化は行わず,節点共有としてモデル化した. Abaqusを用いた解析では,リベットとリベット孔との接触が耐荷力特性に及ぼす影響について考慮するため,溝形鋼やリベットをソリッド要素でモデル化した組立柱の有限要素モデルを構築して弾塑性有限変位解析を実施した.パラメトリックスタディとして,レーシングバーのみが消失したケース,リベットも含めてレーシングバーが消失したケースを設定して無損傷の場合と耐荷力を比較した. Marcによる解析では,レーシングバーが1~2本消失する程度では殆ど耐荷力が低下しないものの,全てのレーシングバーやエンドタイプレートも含めて消失すると,その耐荷力は健全の場合に比べて半分程度まで低下することが示された. Abaqusによる解析からは,リベットも消去した場合に関しては,リベットを有する場合に比べて最大で20%程度耐荷力が低下することや,リベットをモデル化しない場合に比べて耐荷力が低下する場合があることも示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,下記の①~⑥の6つであり,それぞれの達成状況について述べる. ①実橋の組立部材の腐食状況調査と,②実橋から撤去された組立部材の板厚,形状寸法については,2019年度に実橋から撤去された組立材を入手して実施済である.③レーシングバーや形鋼などの鋼材の機械的特性については,2020年度に先述の撤去材から各種サンプルを採取して材料試験を実施することによって,明確にすることができた.④形鋼の残留応力分布とその断面欠損過程における再配分挙動については,2020年度に先述した撤去材の残留応力分布を計測することにより,組立材に関しては溶接製作部材に比べて残留応力の絶対値が小さいことが確認できたため,腐食に伴う部材の欠損や消失過程でそれらが再配分される影響については無視することとした.⑤腐食損傷をもつ組立部材の圧縮耐荷力評価のための簡易な解析モデル化の検討については,2021年度に,汎用有限要素法解析プログラムMarcを用いて,実橋組立柱を対象として,それぞれレーシングバーをシェル,ビーム,トラス要素でモデル化した弾塑性有限変位解析を実施し,いずれも荷重-変位曲線は一致しており,それらのモデル化が終局挙動や耐荷力に及ぼす影響はないことを確認しており,リベットをモデル化しない解析においては,数値計算上の負担が少ないトラス要素を用いることとした.リベットをモデル化する弾塑性有限変位解析では,リベットと形鋼間の接触を考慮するため,ソリッド要素を用いたモデル化が必要であり,事前のAbaqusを用いた解析から形鋼のモデル化に,ソリッド要素,シェル要素のいずれを用いても終局挙動や耐荷力に影響はないことを確認している. ⑥腐食損傷をもつ組立部材の圧縮耐荷力特性と実用的なその評価法については,昨年度末から種々の欠損を持つ有限要素モデルを用いて検討を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度については,「⑥腐食損傷をもつ組立部材の圧縮耐荷力特性と実用的なその評価法」の確立に向けて,汎用有限要素法解析プログラムMarc,Abaqusを用いて,組立柱を構成するレーシングバー,タイプレートが消失,あるいは溝形鋼の腹板,フランジなどが部分欠損した有限要素モデルを構築してパラメトリックスタディを実施することによって,各々の圧縮耐荷力特性について解析的に把握する.特に,2021年度の検討では,主構面外方向の曲げ座屈に対する耐荷力に関する検討を実施したため,本年度は主構面内方向の終局挙動や耐荷力特性についても検討する. 実用的な耐荷力の評価方法については,2021年度までの検討成果として,検討対象とした組立材については,レーシングバー1~2本が消失した程度であれば,健全状態に比べて耐荷力の有意な低下は認められず,道路橋示方書に規定されている耐荷力曲線を用いて,溝形鋼2本からなる格点間を有効座屈長に取った柱の耐荷力として安全側に評価できることを確認している.また,全てのレーシングバー,エンドタイプレートが消失した場合については,溝形鋼1本からなる断面とみなせば,安全側に耐荷力が評価できることを確認している.よって,本年度は,レーシングバーの消失本数や位置を変化させた場合の耐荷力特性を把握し,上述した2つの方法による耐荷力評価が適用できる消失本数や位置を見極める.また,溝形鋼が部分欠損した場合については,欠損部の部材軸方向の位置と,欠損部を含む最小断面の断面回転半径を用いた耐荷力の評価方法について検討する. 種々の形態の組立材が存在するが,本研究ではさしあたり2021年度までに検討対象とした組立柱を対象に以上の検討を行うこととする.
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Causes of Carryover |
科研費分担者の所属校,大学あるいは代表者の所属校での打ち合わせを予定していたが,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,各高専,大学とも出張が自粛されたため,電話やメール等による打ち合わせに切り替えた.また,組立材を持つ高齢化鋼橋の現地調査や,同橋を管理する地方公共団体での図面,設計計算書等の資料収集も困難な状況となった.このため,予定していた旅費が消化できない状況となっている.同様に,学会やシンポジウムについても,新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて,相次いで対面形式からオンライン開催に変更されたため,宿泊費を含む旅費の発生がなくなり,研究費が消化しきれない状況が生じている.次年度についても引き続き,学会やシンポジウムのオンライン開催,出張自粛等が継続されるとみられるため,繰り越された経費については,本研究に関するパソコン等の購入,汎用有限要素法ソフトのライセンス更新,追加で実施する溝形鋼の残留応力計測等に充てる予定である.
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