2020 Fiscal Year Research-status Report
ISOカラム試験の適用法に関する研究-実環境における汚染物質挙動モデルへの展開-
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19K04606
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
藤川 拓朗 福岡大学, 工学部, 助教 (20609606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肴倉 宏史 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 室長 (70331973)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 上向流カラム通水試験 / 環境影響評価 / 土壌環境基準 / 溶出試験 / 移流分散解析 / 液固比バッチ試験 / 重金属 / 自然由来重金属含有土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではカラム通水試験による汚染土壌の環境影響評価判定手法を提示することを最終目的としており、①ISOで許容された試験範囲の影響の確認、汚染物質の溶出挙動データの蓄積、および、②実環境条件に設定した場合の汚染物質挙動を再現できるモデルの構築を行うものである。 ①については、1)土壌の細粒分含有率に着目した溶媒の通水速度の影響範囲の定量的評価、2)塊状試料の解砕粒径が試験結果に与える影響の把握、3)締固めエネルギーの違いが試験結果に与える影響の把握を行うことが主な目的であり、②については、4)実現象を考慮した新たな移流分散解析手法の提案を行うことが目的である。 本年度(研究2年目)は、①の3)締固めエネルギーの違いが試験結果に鵜与える影響の把握と②の4)実現象を考慮した新たな移流分散解析手法の提案について重点的に検討を行った。 ①の3)については、充填密度(締固めエネルギー)は、間隙率に大きな影響を及ぼす因子であり、乾燥密度の増加による浸透水圧の増加が実験により確認された。さらに、充填密度の違いは溶出挙動に影響を及ぼす重要な因子であるため、これらの特性を十分に理解した上で試験の実施と条件設定を行うことが肝要であることを明らかとした。 ②の4)については、対象試料を自然由来の重金属含有土壌のみならず、指定副産物である石炭灰も対象試料として検討を行った。その結果、カラム試験によって得られる石炭灰中の六価クロムの溶出挙動は、液固比バッチ試験を用いた移流分散解析では、低液固比領域(L/S=0~3付近まで)を再現することは難しいものの、ピーク以降の挙動は概ね再現できるこが明らかとなった。ただし、石炭灰の溶出特性は炭種の影響を強く受けるため、今後も更なるデータの蓄積が必要であることが次年度の課題として挙げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の補助事業期間において、本研究で検討すべき項目は、①ISOで許容された試験範囲の影響の確認、汚染物質の溶出挙動データの蓄積、および、②実環境条件に設定した場合の汚染物質挙動を再現できるモデルの構築を行うことである。 ①については、大別して1)土壌の細粒分含有率に着目した溶媒の通水速度の影響範囲の定量的評価、2)塊状試料の解砕粒径が試験結果に与える影響の把握、3)締固めエネルギーの違いが試験結果に鵜与える影響の把握を行うに分けられる。1)は昨年度に着手し、一連の成果を報告している。また、本年度は3)に着手し、一連の研究成果を上げることができた。 ②については、4)実現象を考慮した新たな移流分散解析手法の提案を行うことである。これについては、研究初年度より実施しており、昨年度の課題として挙げられた対象試料の追加とデータ蓄積の課題について、本年度は新たに石炭灰を追加したことでデータの蓄積と信頼性の向上に寄与することが出来たと捉えている。 全体的に、コロナ禍において度重なる緊急事態宣言や三密を避けながらの研究活動が求められる中ではあったが、比較的計画的に研究を進めることができ、一連の研究成果を上げることができたと捉えている。 以上の事由により、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、3年間の研究期間において、①ISOで許容された試験範囲の影響の確認、汚染物質の溶出挙動データの蓄積、および、②実環境条件に設定した場合の汚染物質挙動を再現できるモデルの構築を行うべく、研究を推進していく予定である。 ただし、①については、2)塊状試料の解砕粒径が試験結果に与える影響の把握(未実施)よりも、1)土壌の細粒分含有率に着目した溶媒の通水速度の影響範囲の定量的評価(初年度に実施)において、新たな課題として浮き彫りとなった、透水係数の低い粘土やシルト分を含む材料を用いて通水速度の影響が溶出挙動に現れてくる細粒分含有率や透水係数の範囲を明らかにする方が研究の優先度は高いと考えられるため、こちらを優先して行うことを考えている。 ②については、初年度と2年目に実施した成果の応用展開として、吸脱着反応だけでなく内部拡散を考慮に入れた解析モデルの検討について研究を進めて行く予定でる。
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Causes of Carryover |
調査・研究費としてドイツ・オランダへの外国旅費を計上していたが、コロナ禍のため渡航することが出来なかった。コロナの終息と海外調査・研究の再開を期待して次年度に持ち越すこととなった。 最終年度は、コロナの状況を見ながら、海外への渡航が可能であれば、予定通り調査・研究を実施する予定である。海外への渡航が難しい場合は、カラム試験装置の追加(設備備品費)や消耗品や国内調査費等に振り替えることを検討している。
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