2019 Fiscal Year Research-status Report
Bioinformatics analysis of the evolution strategy for wild-type Microcystis
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19K04610
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧野 育代 東北大学, 事業支援機構, 助教 (00542060)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アオコ / 野生型Microcystis / De novo / RNA-seq / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
水棲微生物は,鞭毛やガス胞といった水中での運動や移動を可能にする機能遺伝子を有することで常に浮上する状態を回避し,乾燥や限られた栄養塩をめぐる競争から身を守る.ただし,Microcystisは,ガス胞遺伝子を調節して鉛直移動するものの,増殖するうちに水面に固定化(アオコ化)され,命を危険にさらしている.このように,生き物の最大の目的である生命の維持に反したアオコ化は,水中では得られない利益の存在が水面にあることを予想させる.さらに,遺伝情報の多様化は進化に等しいとする生命科学の定義に従うと,アオコは生物の進化を促進する特殊な形態であることが予測される.本課題はアオコ化と進化の関係を遺伝情報から探索し,近年,顕著になった大規模アオコ化の核心的意義の解明を目標としている.初年度はアオコ化に関する過去のオミクスデータを整理するとともに,新たにアオコ調査および遺伝子解析を行った.まず,過去のオミクスデータについては,メタボローム試験データにおける上位下位20種類の候補化合物を抽出し,バイオフィルムの材料となる化合物の細胞外排出と細胞の高密度集積との関係について検討した.細胞増殖だけではアオコ化に至らず,アオコ化にはバイオフィルムが重要であること,バイオフィルムの材料となる細胞外化合物の排出が水面に対して水中では少ないことが,水中で高密度集積しないことの主な要因であった.次に,新たに実施したアオコ調査および遺伝子解析では,国内外の3機関のデータベースを活用してDe novo解析およびRNA-seqを行っているところである.De novo解析は情報量が豊富(3機関×100万以上×8検体)であり,現在までの解析では,日中のアオコ発生時に発現量の増加が確認された遺伝情報の多くは,光合成,色素,炭素固定といった,太陽光の受光に連動していた.夜間のアオコ発生時については今後解析する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題の目標であるアオコの規模拡大の核心的意義の解明に際して,2019年のアオコ発生状況はその観測上の条件を満たしていたことから,予定していた倍の検体数を遺伝子解析することとした.これにより,観測に要する時間的な節約ができ,さらに,前倒しして遺伝子解析を実施することができた.現在,遺伝子解析のうちDe novo解析を重点的に行っており,大まかではあるが,アオコ様態形成に関する遺伝子上での傾向をデータとして抽出できるまでになった.本来なら,この時点に到達するのは2年目の秋以降であったこことから,本課題の進捗状況を上述の区分とした.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,まず,Denovo解析を進める.その解析データを用いてアオコ様態における遺伝子の水平伝播の促進に関与する転写産物を探索し,アオコ化における物理的傾向および生態学的意義を検討する.次に,Denovo解析の情報および遺伝子発現量の差異情報を基に優占種を推定し,アオコ場の形成に重要な水棲生物とその役割について具体的な遺伝子および代謝産物の特定を試みる.また,必要に応じて,他貯水池においてアオコ調査およびオミクス解析を実施し,これまで得たデータがアオコ形態の普遍的な傾向を反映しているかについて検証する.最終年度は,複数の優占種におけるRNA-seqを重点的に行い,個別の水棲生物がアオコ形成に関与する様子の比較モデルを作成する.それらオミクスデータに水環境データおよび気象データを加え,アオコの規模拡大において密接に関与する生物上の要因,環境上の要因を明らかにする.
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Causes of Carryover |
国際会議における旅行費および登録料を見込んで前倒し請求したが,その国際会議の開催が取りやめになったことから計上した費用が未使用となった.また,予定していたDNA解析が新型コロナウイルス感染拡大の影響により困難となったため,その分として計上した費用が未使用となった.それらの未使用分は次年度の国際会議およびDNA解析にて使用する予定である.
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Research Products
(2 results)