2020 Fiscal Year Research-status Report
Spatio-temporal dynamics of physical habitat of gravel rivers - Integrated simulation model of riverbed environment -
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19K04612
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
原田 守啓 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 准教授 (00647042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 浩 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (70190832)
永山 滋也 岐阜大学, 地域環境変動適応研究センター, 特任助教 (70540558)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 河床環境 / 河床変動 / 生息場寿命 / 石礫床河川 / 砂州 / Physical habitat |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目は,主に以下に示す3つの成果を得た. ①実河川の幅広い流況下における早瀬の河床環境の変化をとらえるため,木曽川水系長良川扇状地砂州において,2020年出水期前後期間を通じた現地調査を行った.また,砂州河道に関わる既往の研究成果をもとに,平水時から出水時までの流況全体を対象とし,治水と環境の両面から砂州の状態に変化を与える流量の幅とその閾値の設定方法を「流量ステージ」という新しい概念として提案した.2020年出水期の流量時系列データと砂州動態は流量ステージ概念により概ね説明可能であることが確認された.これを踏まえ,さらに1976年から2019年までの数十年間の砂州移動量についても,流量ステージ3~4の継続時間を説明変数として説明可能であることを示した. ②早瀬で緩やかに生じる河床環境の変化を土砂水理学的に分析するための移動床水理実験のケース数を増やすとともに,研究期間中に実施した早瀬の現地調査(①含む)結果と水路実験結果について,混合粒径条件下の土砂移動の観点から分析を行った結果,早瀬の河床表層を覆う粒度分布と流水は,その相互作用により,時間の経過に伴い混合粒径条件における各粒径ごとの限界掃流力付近に漸近して静的平衡状態になることが示された. ③早瀬の河床環境に応じた生物利用の例として,アユ産卵場に着目した現地調査を,木曽川水系長良川扇状地砂州において行った.木曽川水系長良川扇状地砂州の代表的な調査地に形成された「深瀬」と「浅瀬」において,それぞれの瀬を産卵場として利用するアユ個体数と体サイズの調査を水中カメラの分析により行った.この結果,物理環境の異なる2箇所の早瀬を利用する産卵個体群の体サイズは有意に異なることが確認され,従来の研究では産卵場適地が一つの条件で定められるとの仮定に対し,実際には産卵個体群側の体サイズによって選好される場が異なることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発表を予定しエントリーしていた国際会議ISE2020Lyon, France(13th International Symposium on Ecohydraulics)がCOVID-19パンデミックにより中止となったことと,大学がオンデマンド講義等へ移行したことにより研究活動も大幅な制限を受けることとなったが,幸い現地調査,水路実験等についての影響は軽微であったため,研究を共同研究者及び研究協力者らとともに精力的に実施することができた. 昨年度の現地調査では,研究仮説において想定していたよりも複雑な砂州河道の平面的な地形と河床環境の時空間動態が生じていることを踏まえ,本年度の現地調査のアプローチを修正し,出水期前後の砂州動態を丁寧に観測した結果,幅広い流況下における様々な変化を記述する指標「砂州河道の流量ステージ」という新しい概念を提案するに至った(研究実績の概要①).また,水路実験の結果と,複数年にわたる早瀬の現地調査の結果は,早瀬において平水時程度の流量で生じている河床環境の変化を,本研究で提案している河床変動計算法(原田ら2019)で計算可能であることを裏付けるものであった(研究実績の概要②).さらに,一つの砂州に異なる物理環境を有する早瀬が形成されていたことを踏まえ,秋季に早瀬を産卵場として利用するアユの産卵行動における早瀬の使い分けを観測した(研究実績の概要③). 現在,これらの成果についての論文化(①については登載決定,②は投稿準備中)を進めている.③についても,河床変動-河床環境統合モデルにおける適地評価の条件設定や検証データとして利用する予定であるとともに,それ単体でも生態学分野での論文化を検討しているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目までの成果は,研究計画時点で想定していたよりもダイナミックな現象,すなわち砂州河道の「早瀬」という河川地形及び河床環境の形成過程と生物利用の複雑さと巧妙さを示すものであり,計画当初に想定したよりも多くの興味深い知見を得ることができた. 最終年度は,2年目までの現地調査結果及び実験結果を検証データとし,アユ生息場・産卵場の適地評価に,改良された平面二次元河床変動解析モデルNays2DH GBRを適用することにより,本研究の目的である「河床変動-河床環境統合モデル」による河床変動及び生息適地評価の予測性能を検証する.
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Causes of Carryover |
共同研究者(三輪:鳥取大学)が代表者(原田:岐阜大学)と合同で実施する予定であった追加の水理実験及び打ち合わせがコロナ禍のために実施できなくなったことを受けて,経費を繰り越した.共同研究者との協議の結果,岐阜大学水理実験棟で実施する予定であった追加実験の一部を鳥取大学で行うこととし,主に水路実験における消耗品類として使用する.
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Research Products
(4 results)