2021 Fiscal Year Research-status Report
Research for optimal evacuation method based on probabilistic flood forecasting with enough lead time
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19K04618
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 健一郎 神戸大学, 都市安全研究センター, 准教授 (60420402)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アンサンブル気象・洪水予測 / 令和2年7月九州豪雨 / 令和元年東日本台風 / 浅水流方程式 / マルチエージェント避難モデル / 早期避難 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究成果は以下のようであった. (1) 超多数アンサンブル洪水予測については,令和2年7月九州豪雨を対象に球磨川流域の市房ダム,建設予定の川辺川ダムの超多数アンサンブル洪水計算を実施,これを境界条件として浅水流方程式による球磨川主要域の超多数流出・浸水予測を実施した.また,比較的計算負荷が低い流出モデルによる超多数アンサンブルだけでなく,さらにHydro-dynamic な水理学モデルによる流出・氾濫計算を富岳型のスパコンを用いて実施した.結果として,アンサンブル数が多数になると,実際の洪水現象を再現できるメンバーが増えること,例えば半日前に,何らかの閾値を超える生起確率をベースとする洪水情報の提供が可能になるなどの結果を得た.(2) 高潮・洪水同時生起複合風水害については,荒川流域を対象に令和元年東日本台風による中流部の洪水再現を実施した.これにより,流出・浸水モデルが精度良く荒川の洪水現象を再現できるという結果を得た.荒川下流域,中流部での計算事例を得たため,最終的にこれに風の影響を加味した計算を実施していく.(3) 避難行動については,一次元道路ネットワークを対象としたマルチエージェント避難行動モデルに加えて,地下空間などで平面を2次元的に避難する行動モデルを開発した.平面を2次元的に動く場合,混雑による影響などをより正確に考慮でき,またより複雑な行動パタンをシミュレーションすることが可能である.こうしたモデルを利用して,住民の最適行動について検証できるようになったが,災害が発生する半日程度前の避難情報の提供を目指す研究であり,避難行動自体は数10分で完了してしまうため,災害発生まで十分に時間がある場合,及び災害発生直前・直後での避難行動を分類する必要があるという結果となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の進捗状況は以下の通りである. 「(目標)数百~数千アンサンブル降雨を利用した十分なリードタイムを持った洪水予報」については,おおむね予定通り実施された.令和2年7月九州豪雨による球磨川洪水については,超多数1000アンサンブル気象予測を用いた洪水予測について良好な結果を得た.結果としては,良好な再現精度の洪水予測,かつ確率洪水予測を実施するためには,100程度のアンサンブル数では必ずしも十分でなくより多数のメンバー数が必要であるという結果を得た.こちらは国際ジャーナルに投稿予定である.他の地域,例えば平成27年関東・東北豪雨については,タイムラグを考慮したアンサンブル気象予測であるものの,メンバー数が100で空間解像度が5kmだと,必ずしも良好な予測結果とはならなかった.線状降水帯の再現精度が低いことも問題であると考えられる. 「(目標)高潮・河川洪水複合風水害シミュレーション手法の開発」については,荒川流域を対象として,令和元年東日本台風による中流部の洪水再現を詳細に実施した.富岳による浸水計算を実施し,高解像度で高精度なシミュレーションを実現した.現実事象の再現性が担保されたため,今後は風の影響を考慮した計算の実施となる.前年度に,現実の風向・風速をモデルに入力すると,風の影響が平均化され相対的に洪水への影響は小さくなることが見て取れたが,次年度にこの点について確認する.三宮地下街については兵庫県が整備した1m解像度の標高データを適用した地下街地上部の超高解像浸水計算を実施し,これを地下街浸水計算と連結させて地上+地下一体型の浸水計算が可能となった.今後,最終的な地下街における避難シミュレーションを実施する予定である.
しかしながら,昨年度と同様に,コロナ禍で関係各位と十分にコミュニケーションが取れないこと,出張が以前難しいことなどから,研究がやや遅れ,研究期間延長申請した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 超多数(1000)アンサンブル洪水予測については,令和2年7月九州豪雨を対象に良好な結果を得たため,国際ジャーナルに投稿することを,最終目標とする.
(2) 高潮・洪水同時生起複合風水害については,荒川流域を対象に風が流量増大に与える影響についてまとめたものを,和文ジャーナルに投稿することを最終目標とする.
(3) 避難行動については,リードタイムが十分にある場合の住民の最適避難行動について令和2年7月九州豪雨を対象にまとめる.三宮地下街の最適避難行動については和文ジャーナルに投稿することを目標とする.
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Causes of Carryover |
コロナ禍で対外研究などに制約があり,予算を執行できる機会が失われた.
次年度については,国内・国際会議参加費及び出張旅費,論文投稿費などに利用する予定である.
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Research Products
(9 results)