2020 Fiscal Year Research-status Report
土壌の誘電特性と保水性の関係に着目した土壌水分量衛星観測アルゴリズム改良の試み
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19K04619
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
辻本 久美子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (80557702)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 土壌水分量 / 衛星観測 / 誘電率 / 保水性 / 輝度温度 / マイクロ波リモートセンシング / 放射伝達モデル / 陸面データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,リモートセンシングによって土壌水分量を広域推定する手法の改良を目指している.具体的には,人工衛星に搭載されたマイクロ波放射計による陸面輝度温度の観測データから,大気-植生-土壌の放射伝達モデルと陸面過程モデルを用いて,陸域表層の土壌水分量を推定する.この手法は,日本(JAXA),米国(NASA),欧州(ESA)などの宇宙機関等によって既に開発され,世界各地の土壌水分量モニタリングデータとして公開されているが,地域の農業や防災の現業に利用するためには,さらなる精度向上が必要である.本課題では,既に開発・実装されているアルゴリズム全体の一部を構成する,湿潤土壌の混合誘電率モデル(湿潤土壌の混合誘電率と土壌水分量体積含水率との関係)の改良に焦点を当てている. 日本およびカンボジアを対象に行った昨年度の解析結果と比較検証するため,今年度には,気候帯・植生・土壌特性が異なる地域として新たにオーストラリアとスペインを解析対象に加え,地域固有性が土壌水分量推定精度に対してどのように影響を及ぼしているか解析した. 湿潤土壌の混合誘電率モデルとしては,Mironovらによって開発されたモデルに着目し,陸面の放射伝達計算において,Dobsonらによるモデルを用いた場合との比較計算を行い,これを観測値と比較することで,誤差評価を行った.特に,Mironovらのモデルから推定される土壌中の結合水の量について,それが当該土壌の保水性とどのように対応しているか,検討・解析した.土壌の保水性は,降雨前後の土壌水分の経時変化に大きく影響する.衛星観測による土壌水分量推定値においては,特に降雨後における土壌の乾燥過程で推定誤差が大きくなることが認識されており,土壌の保水性に関するモデルを誘電率モデルと一体的に改良することによって,湿潤-乾燥の両過程を通して推定精度を向上できる可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究推進に対して,関連分野の複数の研究者らから多くのご助言やご支援をいただき,当初の予定よりも効率的に研究を進めることができている.一方で,新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて,調査・実験の実施に困難があり,一部の調査・実験の実施を延期や実施方法の変更をせざるを得なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
結果の検証と改良に向けて数値解析と室内実験を進めていくとともに,成果の国際的発信に注力していきたい.
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Causes of Carryover |
研究打ち合わせや国際会議での成果発表等が今年度はすべてオンラインでの実施となり,それらに予定していた旅費の使用が生じなかった.土壌試料採取に伴う調査旅費も,試料採取の延期に伴い,使用が生じなかった.一方で,数値解析による検討は当初の想定以上に進捗していることから,翌年度,計算設備の増強や成果の国際発信に有効利用していきたい.新型コロナウイルスの感染状況が落ち着けば,昨年度予定していた土壌採取の調査旅費にも充てたいと考えている.
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