2019 Fiscal Year Research-status Report
イオン交換反応を応用した泥の減容化技術の開発とそのモデル化
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19K04620
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中下 慎也 広島大学, 工学研究科, 助教 (90613034)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 堆積泥 / 陽イオン交換 / 含水比 / 保水性 / 地球化学モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,泥の表面に電気的に吸着している多価(Al3+やCa2+など)の陽イオンを強制的に1価の陽イオン(Na+やK+)に交換させることで泥を減容化する手法の開発を目指している.具体的には,まず室内実験にて,泥に吸着する陽イオンを保水性が低くなる1価の陽イオンに強制的に交換させ,含水比・吸着イオン・ゼータ電位を測定することで陽イオン交換による泥の保水性や凝集性の変化を解明する.さらに,室内実験で得られた陽イオン交換現象を地球化学モデルを用いて再現し,その結果を海域や湖沼の浚渫泥・下水汚泥に適用して泥の減容化技術の開発を目指す. 1年目は多価の陽イオンを交換可能な溶液の種類,撹拌時間の検討を実施した.その結果,既に海水起源の多価の陽イオン(Mg2+やCa2+)が吸着した海底泥に対し,0.5 mol/LのNa2SO4やK2SO4溶液と混合させることで吸着陽イオンの一部をMg2+やCa2+イオンからNa+やK+イオンに交換できることを確認した.さらに,陽イオン交換順位の高いBa2+を含むBaCl2溶液と混合させ,吸着陽イオンの大部分を事前にBa2+に交換する前処理を加えてNa2SO4やK2SO4溶液と混合させることでNa+やK+イオンの吸着量が増加することを明らかにした.これらの結果,含水比を380%から最大で340%まで低下させることができた.また,撹拌時間については泥との混合時間を10,30,60分と変化させて吸着陽イオン量を測定した結果,10分以降で吸着陽イオン量が変化していないことから,長時間の撹拌が不要であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間で予定している項目は,1.多価の陽イオンを交換可能な溶液の種類,2.最適な溶液濃度と撹拌時間の検討,3.地球化学モデルを用いた泥のイオン交換現象の再現,4.海域や湖沼の浚渫泥・下水汚泥への減容化手法の適用を実施 の4項目であり,1年目に1と2の一部,3の一部が完了した.また,4に向けて様々な地点の泥を採取しており,研究は順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に実施予定の項目は,2.最適な溶液濃度の検討,3.地球化学モデルを用いた泥のイオン交換現象の再現である.2.についてはNa2SO4やK2SO4溶液を用いることで陽イオンの交換が可能で保水性が低下することを確認しているので,溶液の濃度を変化させた実験を行う予定である.地球化学モデルについては1年目に先行して進めているものの,陽イオンの吸着サイトを考える中でカオリンなどの純物質とは異なり様々な物質を含む泥を対象にモデルを構築することが難しいことから,泥に含まれる物質の特定を行う必要がある.
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Causes of Carryover |
電気マッフル炉(580,000円程度)は使用頻度が高く,これまでの経験から数年で故障することから1年目に購入を予定していた.しかしながら,幸いなことに1年目は電気マッフル炉が故障せず既存の電気マッフル炉を使用することができたため,次年度使用額が生じた.次年度以降電気マッフル炉が故障した場合にはその購入に充てる予定である.
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