2020 Fiscal Year Research-status Report
イオン交換反応を応用した泥の減容化技術の開発とそのモデル化
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19K04620
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中下 慎也 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (90613034)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 堆積泥 / 陽イオン交換 / 含水比 / 保水性 / 遠心分離 / 限界せん断応力 / 回転式粘度計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,泥の表面に電気的に吸着している多価(Al3+やCa2+など)の陽イオンを強制的に1価の陽イオン(Na+やK+)に交換させることで泥を減容化する手法の開発を目指している.具体的には,まず室内実験にて,泥に吸着する陽イオンを保水性が低くなる1価の陽イオンに強制的に交換させ,含水比・吸着イオン・ゼータ電位を測定することで陽イオン交換による泥の保水性や凝集性の変化を解明する.さらに,室内実験で得られた陽イオン交換現象を地球化学モデルを用いて再現し,その結果を海域や湖沼の浚渫泥・下水汚泥に適用して泥の減容化技術の開発を目指す. 1年目には泥に吸着する陽イオンを保水性が低くなる1価の陽イオンに強制的に交換させる手法を確立した.2年目は地球化学モデルを用いたイオン交換現象について検討し,有機物を含む堆積泥が持つ吸着サイト量を把握する必要があることがわかった.そのため,堆積泥に含まれる物質について示差熱重量分析や元素分析などを用いて検討し,示差熱重量分析の測定条件を様々に変化させることで堆積泥に含まれる物質をある程度分画できる可能性が示された.また,保水性が変化した泥の性状変化について評価するために,簡易的に保水性や限界せん断応力を評価する方法について検討した.保水性の評価には液性限界値を測定する方法が一般的であるが,遠心分離強度を一定にして遠心分離後にも保持されている水分量から含水比を測定した結果,液性限界値と良好な相関関係があることを明らかにし,遠心分離後の含水比を測定することで保水性を簡易的に評価できることを示した.限界せん断応力については大規模な実験装置を必要とする従来の測定方法と回転粘度計を用いて降伏値を測定する手法を比較した結果,限界せん断応力と回転粘度計を用いて測定した限界せん断応力の間に正の相関があることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間で予定している項目は,1.多価の陽イオンを交換可能な溶液の種類,2.最適な溶液濃度と撹拌時間の検討,3.地球化学モデルを用いた泥のイオン交換現象の再現,4.海域や湖沼の浚渫泥・下水汚泥への減容化手法の適用を実施 の4項目であり,1年目に1と2の一部,3の一部が完了した.2年目では3.について検討した結果,イオン交換現象をモデル化するためには情報が不足しており,モデル化の前に泥の吸着サイト量を明確に把握する必要があることがわかった.そのため,地球科学モデルを用いた再現については様々な分析手法を組み合わせながら堆積泥の組成を明確にすることを試みている.4については3地点の海底泥,浚渫泥については採取を終えている.これらのことから,研究は順調に進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
3年目に実施予定の項目は,3.地球化学モデルを用いた泥のイオン交換現象の再現に必要な泥の組成を把握する手法の開発,4.様々な泥に対して吸着陽イオン量を変化させ,保水性だけでなく,限界せん断応力等の性状変化について検討する予定である.
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Causes of Carryover |
国内学会,国際学会がオンライン開催となり旅費が予想よりも少なかった.その差額を追加の室内実験等で使用する物品の購入に充てたが10万円程度次年度使用額が生じた.この金額については昨年度重要性が明らかとなった泥の性状を検討する実験に必要な実験消耗品の購入に充てる予定である.
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Research Products
(3 results)