2020 Fiscal Year Research-status Report
Quantification of organic phosphorus release from sediment with salinity changes
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19K04629
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
篠原 隆一郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (00610817)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 底泥溶出 / 気候変動 / 無機イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に,気候変動等にかかわる以下の項目について研究を行った.① 様々な無機イオンの底泥リン溶出に対する影響; ② 霞ヶ浦における水温・泥温の長期変動の解明; ③ 泥温の変動に伴う,底泥からの窒素・リン溶出の定量的評価.主な研究成果は以下の通りである. ① 様々な無機イオンの底泥リン溶出に対する影響:底泥リン溶出には様々な無機イオン,特に酸化剤として働く物質が影響を与えていることが明らかになっている.特に硝酸態窒素は貧酸素下においても酸化状態を保つ.また,硫酸イオンは,それを還元する硫酸還元菌自体が有機物分解に寄与していることが明らかになっている.霞ヶ浦の2012年~2015年までの間隙水を解析したところ,硫酸イオン濃度とリン酸濃度が負の相関を示している一方,硝酸濃度は底泥表層直下で検出限界未満であった.海水が流入すると、硫酸イオン濃度が上昇するが、硫酸イオン濃度の上昇が、霞ヶ浦における底泥のリン溶出速度に重要な役割を果たしていることが明らかになった。 ②霞ヶ浦における水温・泥温の長期変動の解明:霞ヶ浦において観測された28年間,1時間毎の水温変動を解析した.その結果,霞ヶ浦の水温は,春季,特に5月に上昇傾向にあることが解析された.全天日射量・気温・風速・雨量・湿度等の気象要因と比較したところ,全天日射量の増加が最も水温の上昇に対して影響が大きいことが明らかになった.全天日射量は,大気中のエアロゾルと負の相関が得られた. ③泥温の変動に伴う,底泥からの窒素・リン溶出の定量的評価:水温が春季に上昇することが明らかになってきたため,春季の水温上昇による底泥からのリン,アンモニア溶出への影響を解析した.アンモニアは泥温の上昇と共に線形的に溶出が行われる一方で,リンは20℃付近から急激に溶出速度が上昇していた.一方,春季の温度上昇によってはさほど溶出速度の変化は見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度実施した研究成果により、湖沼底泥からのリン溶出に関して体系的に理解が進むと同時に、現在進んでいる問題点である気候変動に関しても、研究が進んできたため、おおむね順調に研究が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は底泥リン溶出に関するモデル化に着手するのが方針である。底泥からのリン溶出は分解されやすいリン(DNA-P)が重要であると考えられているが、その分解速度を定式化する必要がある。これまでに明らかになってきた、硫酸・硝酸イオン濃度との相互関係についても定式化し、底泥リン溶出現象をモデル化することが今後の方針である。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウィルスの影響により、参加予定であった国際学会が中止になった。特にAmerican Geophysical Unionの年会の中止により、使用額が変わってくる状況であったため、次年度使用額が生じた。今年度は、オンライン開催の学会に参加するなどを行うことで、未使用額を使用する予定にしている。
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