2019 Fiscal Year Research-status Report
Elastic Operation of City Planning System and Local Vitalization - a Exploration of the city planning of towns and villages in prewar days
Project/Area Number |
19K04638
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
出村 嘉史 岐阜大学, 工学部, 准教授 (90378810)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 町村都市計画 / 一宮 / 大垣 / 高山 / 大井 / 地方計画 / 都市経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦前町村都市計画の制度とその施行の実態を明らかにすることを研究の目的とした。初年である今年度は、個別の事例におけるリアリティのある態度から帰納して仮説を得るために、当初予定していた全国の町村都市計画の実態把握のための調査を後年に譲ることとして、一宮・大垣・高山・大井における都市基盤形成過程に焦点を当てた。全国的な動向ともみられる地方自治の状況および県の意図まで視野を拡げて、それぞれ論文にまとめている。 一宮と大垣は早い段階で都市計画都市になった事例である。一宮については都市計画以前からの近代都市成立の経緯を追い、郊外における織物工業の進展に合わせて輸送インフラが整えられ、製品の交易の場としての市場から発達した区画が、都市内消費の多様な小売店舗の集積する中心市街地へ転換する。都市計画はその市街地を意図的に助長する計画となったことが把握できた。大垣については、都市計画に至る以前の国・県による河川整備事業の積み上げと、商工振興のための鉄道基盤形成が交叉する事象として都市計画が用いられたことを明らかにできた。この過程には、都市計画にも明確に顕れている工業都市建設の意図のもとに、行政的管轄の枠を超えた連携が見られた。 高山と大井は、町村都市計画の時代の典型と捉えられる。高山は高山町を中心として町村合併を果たして市制を執るために町村間の駆け引きが行われる事象の中で、都市計画は未来のビジョンを提示する手段として用いられた。従って、当初の都市計画における最大の焦点は都市計画区域であったが、具体的なインフラ整備計画は市の経営策と共に自治の問題として重要視され、都市計画制度を用いずとも精力的に可能なプロジェクトから実施されていた。大井も同様に、都市計画制度のもつビジョン、特に県の担当職員とともに公園・観光政策に関わるマスタープランを共有するために用いられ、都市計画事業として実現する必要はなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
論文登載決定(掲載予定)のものも含めて、2編の査読付き論文を発表することができ、それぞれ当初は次年度以降の予定であった個別事例の実証を果たすことができた。先述のように、当初予定していた全国的動向をマクロな視野で捉えるアプローチは後年に譲ったものの、個別事例から大いに全体を洞察することのできる成果を得ており、今後に実証したいと考えている。年度末に新型コロナウィルス感染症が拡大したことにより、未収集の史料に対するアクセスが著しく悪くなり(ほぼ閉ざされ)、次年度の研究成果について今から不安はあるものの、今年度については想定以上の成果を出すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は実施しなかった全国的動向をマクロな視野で捉えるアプローチを手掛ける必要がある。1933年に改正された都市計画法に基づいて、全国で実施されたいわゆる町村都市計画の実態を整理する。地方計画構想を含めた背景は未だ掘り下げる余地が大いにある。国立公文書館所蔵の都市計画資料、都市公論、同時代の学識者の著作など、制度製作者に近い資料の収集・整理によって、包括的に体制を把握し、同制度の意義などを把握する。年度末に新型コロナウィルス感染症が拡大したことにより、未収集の史料に対するアクセスが著しく悪くなっているため、次年度に調査の遂行が不可能な場合は、さらに後に譲るが、可能な時期を見極めて資料収集をするようにしたい。 町村都市計画の前身である中規模都市計画(六大都市に続いて認定された中核的都市)の都市計画状況を整理して把握する。本年度の成果において、岐阜(1924年認可)、大垣(1926年認可)、一宮(1926年認可)の事象は概ね把握できた。一般的な都市計画的項目(道路網計画や用途区分、土地区画整理など)や、国・県の政策内容だけでなく、商工者のコミュニティや都市周囲の地主層などとの関係を視覚化し、市街地開発、用排水事業、道路建設、農業基盤との関連において、町村都市計画の事象と比較可能にするために、論文にとりまとめて投稿する。 本研究の主要部分であり、町村都市計画を実施した都市として、さらに犬山(小規模市街地の城下町)・下呂(大正以降の温泉開発都市)・津島あるいは美濃太田(交通幹線激変都市)などを対象に調査をすすめる。多面的な視点から各都市の近代以降の都市形成プロファイルを明確にし、その情報との関連の中で、町村都市計画実施の実態を明らかにする。その上で、得られた多事例を相互比較して、同時代の計画理念に関する普遍的知見を取り出す。
|
Causes of Carryover |
次年度の国際学会における発表会予定が決まった(後に結局新型コロナの影響で中止となってしまった)ので、旅費へ充てるために今年度内に使用する額をセーブしたことに加えて、年度末に予定していた調査が新型コロナウィルスの拡大により延期を余儀なくされてしまったことによる。
|