2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of Three-dimensional Road Marking for the purpose of Alerting Elderly Drivers
Project/Area Number |
19K04643
|
Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
永見 豊 拓殖大学, 工学部, 准教授 (20384696)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 錯視効果 / 交通安全 / トリックアート / 路面標示 / ドライブシミュレータ / 横断歩道 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢化社会の到来にともない高齢運転者の交通事故が増加しており、注意看板や路面標示などの視覚に訴える対策が欠かせないものになっている。筆者は、ある特定の視点からは立体的に見え、それ以外の視点からは歪んだ画像に見えるという路面立体標示の開発に関わってきた。その知見を踏まえ、高齢者に対して前方確認や安全確認を促すには、進行方向の路面にメッセージを直接表示し、さらに読みやすくなるように立体表示にするのが有効であることが分かった。そこで、本研究では一般道路での注意喚起を促す錯視効果を用いた路面立体表示の開発を目的とする。 2019年度は、信号のない横断歩道での一時停止を促す路面標示を対象として、デザイン案を検討した。信号機のない横断歩道では、歩行者が渡ろうとしている場合、ドライバは一時停止しなければならない。しかし、ほとんどのドライバが違反している状況である。そこで、立体文字標示の内容や設置位置、横断歩道の強調および赤色舗装が横断歩道での一時停止の意識向上にどの程度効果があるかを、ドライブシミュレータを用いて検証した。その結果、立体文字標示の効果が高く、配置はダイヤマークの手前、さらに赤色舗装により効果が高まる傾向があることが分かった。 2020年度は前年度の研究結果を踏まえ、路面標示のメッセージ内容と、路面標示出現のタイミングの詳細検討を行った。メッセージ内容は「歩行者優先」「歩行者注意」「ゆっくり走ろう」などを評価比較した結果、メッセージは「歩行者優先」のように厳格なイメージの評価が高かった。路面標示の出現タイミングは、ドライブシミュレータを用いた走行実験を行った結果、路面標示の設置数は数が多いほど停止意欲は高まるが、設置位置が直前だと逆効果になることが分かった。また、カラー舗装は全面よりも部分の方が高評価であった。その理由は部分設置の方が、メッセージが強調されるためと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、路面立体標示の可能性を探るため、国内外の事例を参考にして、デザイン案を幅広く展開し、道路写真にデザイン案を重ねるフォトモンタージュを作成して効果を検証した。対象は文字の路面立体標示、および横断歩道の強調、カラー舗装との組み合わせである。モデルケースとして、信号機のない横断歩道手前の路面表示とした。立体文字標示の設置位置や立体横断歩道がスムーズな一時停止にどの程度有効であるか、その傾向を探るためにドライブシミュレータを用いた比較評価実験を行った。 2020年度は、高齢者を被験者とした実験を行い、学生や社会人との評価の違いを明らかにする計画であったが、新型コロナ感染症拡大防止および重症化リスクの観点から高齢者を被験者とした実験は実施しなかった。そのため、被験者は学生を中心として評価実験を行っており、実物大の路面標示を施工する最終案の選定は保留とした。よって、2020年度実施予定であった学内への路面標示施工は2021年度に実施し、評価実験を行う予定である。 なお、2019年度の研究成果は、2020年6月開催の日本デザイン学会第67回研究発表大会において「信号なし横断歩道においてドライバに一時停止を促す立体路面標示」として発表した。2020年度の成果は、2021年6月開催の日本デザイン学会第68回研究発表大会において「前方注意を促す立体路面標示のメッセージ内容と出現タイミング」として発表予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によりドライバへの注意喚起には、直接的にメッセージを伝えられる立体文字標示が有効であることが分かった。メッセージは「歩行者優先」のように厳格なイメージの評価が高い傾向があり、路面標示の出現タイミングは、路面標示の設置数は数が多いほど停止意欲は高まるが、設置位置が直前だと逆効果になることが分かった。また、カラー舗装は全面よりも部分の方が高評価であった。よって、施工性を考慮すると、手前に1つ路面標示を設置するのが最も効果的であると考えられる。 新型コロナ感染症拡大防止に配慮し、高齢者を被験者とした実験を行っていないため、追加実験により、学生および社会人との評価の違いを明らかにする必要がある。その結果を踏まえて、実物実験に進む。選定されたデザイン案の実際の見え方を検証するため実物大の路面標示を大学構内に施工し、実走行による実物実験を行う。実際に走行してもらい、初見での気づきと驚き、通行に慣れてきてからの印象を調査する。
|
Causes of Carryover |
当初、75歳以上の高齢者を被験者とした実験を行う際の「人件費・謝金」として計上していたが、被験者は学生と社会人としたため、費用が発生しなかった。その理由は、新型コロナ感染症拡大防止および重症化リスクの観点から高齢者を被験者とした実験は実施しなかったためである。 また、路面標示施工費として「その他」を計上していたが、施工を実施しなかった。その理由は、高齢者を被験者とした実験を実施しておらず最終デザイン案の選定ができなかったためである。次年度は高齢者を被験者とした実験および路面施工を実施するため、本費用を繰り越して使用する予定である
|