2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on construction of regional regeneration model through recovery and reconstruction from nuclear accident
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19K04645
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
齊藤 充弘 福島工業高等専門学校, 都市システム工学科, 教授 (20353237)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 復旧・復興計画 / 原発事故 / 人口減少 / 産業構造 / 市街地再生 / 土地利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,福島県浜通り地域を対象として,原発事故からの復旧・復興の過程を明らかにし,そこに各種計画がどのように反映し,人口や産業の回復実態として表れているのかを明らかにすることを通して,地域再生モデルを構築することを目的とするものである。 初年度は第一に,原発事故発生前の地域構造の特徴について,人口や産業にみる社会構造と交通体系や土地利用にみる空間構造より捉えて,第一原発立地後からの変化に関する調査・分析をした。その結果,社会構造をみると原発と関連する事業所の立地により人口増加や就業構造の変化としてその影響をみることができる。また,それは道路体系や市街地の拡大にみる空間構造の変化にも表れていることがわかった。 第二に,復旧・復興計画とそれに基づく整備計画が描く地域構造について調査・分析した。事故前の地域構造を復旧・復興させる目的に加えて,廃炉や再生可能エネルギーに関する事故後の新たな目的の下に取り組みが計画されており,それは事故前の既成市街地との関係性を構築することなく計画図が描かれている。ここでは,復旧・復興および整備計画の内容の町村間の比較を通して共通点と相違点を明らかにし,新たな市街地整備の特徴を示すことができた。 第三に,先行して避難指示が解除されて復旧・復興が進む広野町を対象として,原発事故前後の社会構造および空間構造の変化を明らかにし,町の現状評価と課題をふまえた整備計画の特徴を示すことができた。廃炉(事故収束)をはじめとする原発に関する取り組みは,人口や就業構造にみる社会構造と,住宅建設や新たな市街地の整備にみる空間構造ともに影響を与えている。その結果,人口の8割,9割が回復したと評価されているものの,事故前の特徴をふまえてみると,事故後の地域構造は異なる形となっており,その変化や周辺町村との関係性を検討しないまま将来像が描かれており,課題として指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
統計データや地図データを用いた社会構造と空間構造の両観点より,双葉八町村を対象として第一原発立地以前からの地域構造の変化について調査・分析してきた。その結果を整理したものとして,「原発事故発生前からの地域構造の変化をふまえた復興計画の課題に関する研究-福島県浜通り地域を対象として-」(単著,都市計画論文集Vol.54,No.3,pp.1395-1402,日本都市計画学会,2019年10月)にとりまとめ,発表している。 その一方で,国,県,八町村が策定する各種計画書を収集し,その復旧・復興過程においてどのように計画書の内容が反映されてきたのかについても調査・分析しようと取り組んできた。しかしながら,復旧・復興に関する計画書の作成方法や形式が策定する機関や町村ごとに異なるため,その比較・分析に苦労している。そのため,既往の調査・研究をレビューしながらその方法の確立に再度取り組んでいる状況にあるため,研究計画時の予定よりは遅れている。データ・資料となる計画書についてはおおむね収集することができているため,引き続きその分析方法論の確立に努めて取り組んでいきたい。 また,新型コロナウィルス感染拡大の影響により2020年2月以降の現地調査をはじめとする移動を伴う調査の自粛が求められ,計画していた現地調査や年度末の土木学会東北支部技術研究発表会への参加が中止になるなど,思うように研究活動に着手をすることができなかった。ウィルス感染拡大状況の終息はなかか見通しが立たず,今後も研究活動に支障をきたすことが想定されるが,与えられた環境下でできることを工夫しながら取り組んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
「原発事故からの復旧・復興」という目標にむけて,国や県の計画を八町村ごとの復旧・復興計画にどのように反映させているのかを明らかにするということについて,引き続き計画書と復旧・復興の実態に関する調査・分析を通して取り組んでいく。前年度からの課題として残る,作成形式や内容が異なる町村間の計画書に関する分析方法を構築して,共通する内容と異なる内容を明らかにし,浜通り地域としてみた計画内容を提示していく。それが,国や県の提示する計画内容を反映する形となっているのか,反映することができない内容についてはどのような課題があるのかについて明らかにしていく。 また,避難指示が全面的に解除されている広野町を対象として実施した調査・分析を,その後同様に避難指示が解除された隣接する楢葉町を対象として実施していく。ここでは,策定された復旧・復興計画書や統計資料の分析と現地調査を通して,地形図や住宅地図を用いながら人口や産業の回復実態を明らかにしていく。また住民の帰還と都市的土地利用の再生がどのように進んでいるのか,その一方で原発事故収束や廃炉のための多くの作業員をどのように受け入れているのかについて調査・分析する。さらに,一部避難指示が解除されているその他の町村についても,人口と都市的土地利用の変化について調査・分析することを通して,社会構造と空間構造の両観点から復旧・復興の実態を明らかにしていく。ここでは,前年度マクロ的に明らかにすることができた第一原発立地後から積み重ねられた事故発生以前の交通体系と市街地(建物密集地)の形成状況について,住宅地図を用いてミクロ的に土地利用の変化と実態を明確にしていく。特に,市街地において人口や産業の集積を支える土地利用の実態を明らかにしたうえで,それをどのように復旧させ,復興させる中で新たな人口や産業を受け入れようとしているのかについて調査・分析していく。
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Causes of Carryover |
研究への着手・進捗とともにその方法の再構築の必要性が生じたり,新型コロナウィルスの影響により計画した現地調査や学会への参加が中止となったことの影響を受けている。ウィルス感染状況の終息をみながら,年度を越えて引き続き調査・研究を継続していく。
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