2019 Fiscal Year Research-status Report
鉄道における津波避難モデルの構造化とあり方に関する研究
Project/Area Number |
19K04653
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
西川 一弘 和歌山大学, 地域活性化総合センター, 准教授 (60516459)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 鉄道防災 / 津波対策 / 率先避難者 / 津波避難 / 鉄道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である①鉄道における津波避難モデルの構造化と②鉄道における津波避難の歴史的把握に分けて、2019年度の進捗を報告したい。 ①について。これまで筆者が参画してきた実践的津波対処訓練の課題の整理である。仮説としては、列車密度と乗車密度に応じて「都市部」「地方都市部」「中山間地域」に三区分し、それぞれの避難上の課題を把握するものとした。2019年度訓練への参加やこれまでの訓練を整理する中で、路線の立地区分ではなく、「乗車密度」と「車両数」が重要な指標となることが明らかとなった。また「当該路線の津波リスク」の高低によっても課題や対応が異なるため、分析の指標として乗車密度と車両数を統合した「乗客数の多少」と「路線の津波リスクの高低」をマトリクスとして、4つの領域に分けて課題と方策を整理した。共通して検討が必要な課題として、「滞留」問題がある。これは乗車数が少なくても、避難はしごや避難用シューターが避難路を支障し、「滞留」が発生する事例が見受けられた。 ②について。1872年に鉄道が敷設されて以降、国内で発生した地震による鉄道への津波被害および旅客避難について、東北地方の社会教育施設を中心に地域の郷土資料の文献収集、レビューを行った。まずはハード面への被害を含めた、全体の年表作成に向けた基礎資料の整理を進めている。1964年6月に発生した新潟地震においても、羽越本線内を走行していた列車で津波対応の旅客避難が行われていたことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年~2020年2月までは、これまでの鉄道の津波対処訓練の蓄積と当該年度に実施された津波対処訓練への参画によって、課題の把握と分析視角が明確化してきており、調査結果も得られている。鉄道会社との協力により、避難者の行動や認識の把握を中心とした検証型津波対処訓練の計画を形成することができたが、新型コロナウイルス感染症によって中止を余儀なくされている。当該訓練は、2020年度以降に持ち越して実施したいと考えているが、新型コロナウイルス感染症状況によっては開催できるか不透明な情勢となっている。 鉄道における津波避難の歴史的把握については、主に南東北地方(宮城県を中心)の社会教育施設を中心とした文献調査を進めることができ、新たに新潟地震においても津波対応の旅客避難が行われていたことが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降については、引き続き鉄道の津波対処訓練への参画を通じた課題の把握を進める。これまでに得られている知見を整理するとともに、2019年度に実施できなかった「避難者の行動や認識の把握を中心とした検証型津波対処訓練」を通じた調査を進めていきたいと考えている。特に検証型津波対処訓練では、列車の停止位置の地形や列車からの降車方法をケースに細かく分けて検証することにより、最適な避難方法を導き出す基礎的なデータを把握することができると期待している。新型コロナウイルス感染症の状況によっては、訓練自体が実施できない場合も想定されるが、この場合は更なる延期を検討する。 鉄道における津波避難の歴史的把握については、引き続き東北地方(岩手県・青森県)の社会教育施設での文献調査とともに、新潟での調査を進めたいと考えている。2020年度に予定している海外調査については、新型コロナウイルス感染症の状況、および訪問国の治安情勢を考慮しながら判断したい。
|
Causes of Carryover |
次年度繰越金については、予定されていた検証型津波対処訓練や文献調査が中止となった関係で繰り越した。 繰越金については、2020年度に予定している検証型津波対処訓練や東北地方への文献調査に充当する予定である。
|