2020 Fiscal Year Research-status Report
硫酸ラジカルを利用した選択性を持つ水処理技術の開発
Project/Area Number |
19K04667
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
酒井 宏治 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (70533123)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 紫外線水処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
オゾンや紫外線過酸化水素(UV/H2O2)処理で生成するOHラジカルは、高い酸化力で難分解性の有機物を酸化分解する処理であり、高度水処理手法として、用排水システムにおける健康リスクの低減に効果を上げてきた。だが、無差別/非選択的な反応に起因する、新たな課題が散見されている。そこで本研究では、OHラジカルと比較して反応に選択性がある硫酸ラジカルを利用し、水処理に用いた際の反応の選択性を明らかにし、新たな水質管理手法を構築することを目的とする。 本年度は、具体的な対象物質として、複数種類のアミノ酸を用い、それに対する過酸化水素処理と過硫酸塩処理について比較を行った。用いたアミノ酸は、消毒副生成物の前駆物質として既に知られている物質であり、健康リスクなどをもたらしうるものである。 このモデル有機物を対象にした検討の結果、過酸化水素と比較して、過硫酸塩は同じ紫外線照射量でより高い減少率と効率を示した。いくつかの系において、NPOCベースで見た場合、過酸化水素処理では、完全な無機化に至らない一方で、過硫酸塩では完全な無機化ができることが分かった。また、3次元蛍光分析(3D-EEM)を用いて反応過程を分析したところ、過酸化水素処理と過硫酸塩処理では、異なる反応経路を経由している可能性が高いことが分かった。 以上のように、本研究で対象とする有機物分解において、過酸化水素処理と過硫酸塩処理を比較した結果、反応経路に違いが見られ、反応に選択性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、硫酸ラジカルが有する反応の選択性の高さと、それに由来する分解反応の効率性に着目し、浄水処理における健康リスク低減の見地から選択性の詳細を解明する。すなわち、①様々な有機物を選定し、硫酸ラジカルとの一次反応速度を実験的に求め、②OHラジカルの場合と反応速度を比較し、さらに③3次元蛍光分析(3D-EEM)を用いて代表的な有機物群に対する硫酸ラジカルの反応性を明らかにすることで、工学的応用の見地から選択性を解明する。具体的には以下のとおりである。 (1) 硫酸ラジカルと有機物との反応速度の評価として、多様な有機物を含む環境水及び、モデル有機物を用いて反応速度を調べる。過酸化水素を用いるラジカル処理系と硫酸ラジカルを用いる異なるラジカル処理系で分解し、TOC(全有機炭素)の減少速度を比較する。 (2) ・OHと・SO4-の寄与と反応の選択性の関係の解明として、異なる処理系における各活性種の寄与を比較するため、同一の有機物に対する分解反応過程について、3D-EEMを用いて比較する。 (3) EEMデータについて、機械学習などの手法を用いて有機物分解の過程を明らかにする。 このような、3か年の計画のうち、本年度は(2)まで終了しており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、硫酸ラジカルが有する反応の選択性の高さと、それに由来する分解反応の効率性に着目し、浄水処理における健康リスク低減の見地から選択性の詳細を解明する。すなわち、①様々な有機物を選定し、硫酸ラジカルとの一次反応速度を実験的に求め、②OHラジカルの場合と反応速度を比較し、さらに③3次元蛍光分析(3D-EEM)を用いて代表的な有機物群に対する硫酸ラジカルの反応性を明らかにすることで、工学的応用の見地から選択性を解明する。具体的には以下のとおりである。 (1) 硫酸ラジカルと有機物との反応速度の評価として、多様な有機物を含む環境水及び、モデル有機物を用いて反応速度を調べる。過酸化水素を用いるラジカル処理系と硫酸ラジカルを用いる異なるラジカル処理系で分解し、TOC(全有機炭素)の減少速度を比較する。 (2) ・OHと・SO4-の寄与と反応の選択性の関係の解明として、異なる処理系における各活性種の寄与を比較するため、同一の有機物に対する分解反応過程について、3D-EEMを用いて比較する。 (3) EEMデータについて、機械学習などの手法を用いて有機物分解の過程を明らかにする。 このような、3か年の計画のうち、本年度は(2)まで終了しており、今後は(3)を中心に推進していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス等の状況により、学会参加旅費が生じなくなったこと、また研究の進捗に軽微な変更があったため、若干の余剰が生じた。
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