2019 Fiscal Year Research-status Report
パルス電界法を応用した新規消毒技術の確立とその消毒メカニズムの解明に関する研究
Project/Area Number |
19K04668
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
古川 隼士 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (90632729)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 崇寿 大分工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (30508867)
清 和成 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80324177)
亀井 樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (80792168) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | パルス電界 / 薬剤耐性菌 / 薬剤耐性遺伝子 / 消毒 / 下水処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、パルス電界(PEF)印加PEF技術を水処理技術に応用し、近年の水環境における新たな問題である薬剤耐性菌(ARB)およびその耐性遺伝子(ARGs)の不活化に資する新規消毒法の開発を目指すものである。今年度は、ARBのモデル微生物として、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE,Enterococcus faecium ATCC51559,vanA遺伝子保有株)を用いて、模擬排水を作製し、PEF印加消毒実験を行った。PEF印加消毒における変動パラメータは、初期電圧値(0、2、6、10 kV)、周波数(100、200、400 Hz)、および処理時間(0~15分)とした。初期電圧値2 kVにおいて、処理後のVRE濃度およびvanA遺伝子コピー数はほとんど変動しなかった。これに対して、初期電圧値が6、および10 kVでは、処理時間の増加とともにVRE濃度およびvanA遺伝子コピー数は減少した。VREは、初期電圧値10 kV、周波数400 Hz、処理時間4分で検出下限値(10 CFU/mL)以下まで削減することができた(削減率は5 log以上)。同じPEF印加消毒条件において、vanA遺伝子の削減率は3.7 logに達した。すなわち、PEF印加消毒は、細菌の細胞だけでなく、その細胞内の遺伝子にも不活化効果が及ぶことが明らかとなり、これはPEF印加消毒技術の新たな知見である。また、実下水二次処理水への消毒実験を想定した、低インピーダンスの水試料にも電圧印加可能な高電圧かつ大電流の高容量インパルス電圧発生装置の開発と設計に着手した。そして、SiC製MOSFET素子を10直列接続した回路を組み込んだ実験系において、素子単体の定格を超えた電圧でのスイッチングを達成できた。本装置によって、下水二次処理水のような低インピーダンスの水試料に印加可能なPEF発生装置の構築を実現した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度はモデルARBを懸濁させた模擬排水を対象に、PEF電圧印加消毒によるARBおよびそのARGsの不活化効果を各PEF印加条件において明らかにすることができた。また、実下水二次処理水の消毒を想定した、新たなセルフメイドのPEF電圧発生装置を設計・構築することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度に新たに構築した低インピーダンスの水試料にも電圧印加可能なPEF電圧発生装置を用いて、実際の下水処理場から採取した実下水二次処理水を対象にPEF印加消毒実験を行っていく。また、同時に実下水二次処理水の水質およびインピーダンス値を測定して、水質とインピーダンス値との関連性を見出し、実下水二次処理水の水質変動に合わせた、目標とする消毒効果を達成できるPEF電圧印加処理条件を見出すこと目的とする。また、PEF電圧印加消毒の不活化メカニズムの1つとして考えられる、細菌のプログラム細胞死様機構であるToxin-Antitoxin(TA)システム誘発に対するPEF電圧印加の関与についても究明していく予定である。
|
Causes of Carryover |
研究機関の初年度に計上していいた高圧電源が当初の見積額よりも20万円ほど安価に購入できたことと、インパルス電圧発生装置を構築するための材料が当初予定していた額よりも安価に購入できたため、必要経費との差が発生した。2年目の使用計画としては、消毒実験用リアクタ作製ための材料、および現有インパルス電圧発生装置の消耗部品取替えのための材料に関わる経費として使用する予定である。その他に計上した経費は、当初の予定通り、細菌、水質、および遺伝子解析に関わる消耗品、旅費ならびに実験補助学生アルバイト雇用のための謝金に関わる経費である。
|
Research Products
(6 results)