2021 Fiscal Year Research-status Report
我が国の道路事業における動物の事故対策とその効果の推計
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19K04671
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊東 英幸 日本大学, 理工学部, 准教授 (70434115)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ロードキル / エゾシカ / 外部費用 / 交通事故 / 北海道 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道全域に生息しているエゾシカは,明治期の豪雪と乱獲によって一時的に生息数は減少したが,禁猟や生息環境の変化等によって,1980年代から生息数が増加した。生息数の増加により,エゾシカと車両の衝突事故(Deer-Vehicle Collisions:以下,DVCs)の被害が深刻な問題となっており,2019年度には年間3,188件発生している。また,DVCsが発生することによって,様々な社会的外部費用が発生しているが,どの程度発生しているかは明らかにされていない。 そこで本研究では,北海道全域を対象として,エゾシカの轢死による経済価値の損失を含めたDVCs発生による社会的外部費用の推計を行うことを目的とし,楽天のインサイトによるWebアンケート調査を2021年1月6~12日に実施し,仮想市場評価法を用いた外部費用の算定を行った。その結果,1頭あたりの経済価値は32.0円/人となり,この値に2018年度のDVCs発生件数(2,834件),北海道内の世帯数(31,594世帯),DVCs発生によってシカ類が死ぬ確率(90%)を乗じて算出した結果,年間25.79億円の外部費用が発生していることが明らかとなった。 また,アンケートで取得したデータを基に目的変数をエゾシカの保全に対するWTP,説明変数を個人属性として対数線形ロジットモデルのフルモデルでWTPに影響する要因を分析した結果,自然環境の保護意識が高く,自然保護活動の参加頻度や世帯の年間収入が多く,性別が男性であるとWTPは高くなる傾向が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は,北海道におけるエゾシカの交通事故対策,ロードキル対策に関する調査や分析結果を取り纏めた論文投稿と発表を行った。 また世界遺産に登録された奄美大島におけるアマミノクロウサギのロードキル発生状況に関する現地調査や,WEBアンケートを用いて仮想市場法(CVM)によるアマミノクロウサギの経済価値推計とロードキルによる外部費用の推計などを行い,国内の調査研究は予定通り実施出来ている。 しかしながら,海外での先進的なロードキル対策に関する調査は,新型コロナ感染症拡大前における台湾のみでしか実施できておらず,予定していた米国や欧州でのロードキル対策に関する現地調査やインタビュー調査が実施出来ていない状況となっているため,研究はやや遅れている状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症の影響により,2022年度も海外渡航が困難な状況であるため,国内のロードキルの調査・分析を引き続き実施するとともに,研究成果について論文発表,論文投稿を行っていく予定である。 具体的には,世界遺産に登録された奄美大島のアマミノクロウサギのロードキルの問題に着目し,現地での観光交通調査やロードキル発生地点の調査,新型コロナ収束後のインバウンドによる観光客増加に伴うロードキルの発生予測やアマミノクロウサギのロードキル発生による外部費用の推計なども実施し,アマミノクロウサギのロードキル対策に向けた検討を行っていく予定である。 また,沖縄本島北部で多発しているヤンバルクイナのロードキルに関する現地調査なども実施し,現地のNPOの協力の下,ロードキル対策に向けた検討なども行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初,実施予定であった海外でのロードキルに関する調査等が実施出来なかったため次年度使用額が生じた。次年度は出来れば海外での調査等を実施したいが,実施が難しい場合は国内の対象範囲を広げてロードキルの調査・分析を引き続き,実施する予定である。
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Research Products
(2 results)