2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a screening method for dilapidated roadside trees
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19K04674
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
徳永 光晴 金沢工業大学, 工学部, 教授 (00301135)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生育不良木抽出 / 倒木 / 道路脇樹木 / 近赤外動画 / 植生指標 / リモートセンシング / 街路樹 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、車載した近赤外カメラから得られたデータより生育不良の道路脇・街路樹を抽出する手法を考案することである。道路環境は道路脇・街路樹が生育するには必ずしも良い環境ではなく、そのため樹木の老朽化が早く進んでおり、各地で倒木による事故が発生している。現在の道路脇・街路樹点検は、樹木の専門家が歩行もしくは低速で走行する車から目視で樹木を観察し、状態が悪そうな樹木を見つけたら、その樹木に対して触診・打診など詳細な点検が行われている。本研究の狙いは、「樹木の専門家が歩行もしくは低速で走行する車から目視で樹木を観察し、状態が悪そうな樹木を見つける作業」をシステムで自動化することである。提案する街路樹点検は、車にカメラおよび近赤外カメラを搭載し、道路脇樹木を撮影する。撮影した動画より、生育不良と思われる樹木を抽出し、その樹木に対して詳細点検を行うものである。この方法では、樹木の撮影時には樹木の専門家を必要とせず、専門家は生育不良と思われる樹木のみを点検すれば良い。このため、本研究の成果により安全性は従来のままで、大幅に点検時間とコストを削減することが期待できる。 これまでの実績は、近赤外データから健全な樹木が生育不良になる過程を確認したことである。はじめは、鉢植えのコニファー木を数本用意し、半数の木をそのままに、半数の木を強制的に劣化させた。劣化の推移を健全な木と比較することで、劣化の推移と近赤外データの関係を把握した。次に、大学キャンパスの森林区域にある間伐木数本に対して、同様に強制的に劣化させた。この実験により、自然生育木の劣化していく状態を近赤外データの変化モデルとして開発することができた。さらに、道路管理者と共同で側道に生育している樹木を定期的に観測している。この樹木の内、自然に劣化していく樹木があるので、それを推移モデル化し、生育不良木抽出のためのアルゴリズムとして開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
道路管理者と共同で月1回の割合で道路脇樹木のデータを蓄積している。植生は季節によって植生活性度が変化するが、経年・経月のデータを蓄えることで植生活性度の経月変化を補正することが可能となる。植生活性度は、観測時の気象や太陽との角度に影響を受ける。基礎実験でこれらの変化量を確認することができた。その変化量が大きいため、補正精度を高めるために晴天時や雨天時ではなく雲天時に道路脇樹木を観測することにした。また樹木を観測する条件をなるべく同じにするため、カメラをバーに固定しカメラがふらつかないように架台を工夫した。昨年度までは、カメラを台車もしくは低速で移動する車から樹木を撮影していたが、今年度は高速で走行する車から樹木を撮影し、生育不良木の抽出が行えるかを確認した。高速道路で時速80kmから90kmで走行する車から高速道路脇の樹木を撮影した結果、本研究で提案している手法が有効であることを確認した。 アルゴリズム開発では、異なる日時に撮影した動画から、同じ場所を撮影したフレーム画像を自動的に抽出する手法を開発した。さらに、その抽出されたフレーム画像の特徴点を算出し、それを合わせることで自動的に幾何補正する手法を開発した。植生を対象としているので、特徴点の対応において異なる場所をマッチングするミスが生じていたが、対応点のマッチングに特徴量のほか、対応点のベクトルを計算し、そのベクトルに制約を設けることでマッチングミスの対応点を排除する工夫をした。その結果、昨年度開発した結果よりも高い精度で幾何補正することが可能となった。 この結果、植生指標算出アルゴリズムも合わせて、自動的に植生指標の変化を捉えることができるようになった。また、処理アルゴリズムの細部を調整することで生育不良の樹木を抽出する処理時間を短縮することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
動画から同じ場所を撮影したフレームを自動抽出する処理において、草木の伐採や道路工事、保守作業など撮影した画像が大きく変化した場合、その場所では植生変化を算出することには意味がない。しかしながら、一度道路環境が大きく変化し類似画像の検索範囲が外れると、それ以降の自動抽出処理でエラーが伝搬することがわかった。車も一定速度で走行しているわけではないので、動画だけから対応点を継続して抽出するのが困難である。そのためエラーを伝搬させない工夫として、新たに動画フレームに位置情報を付加することを検討する。位置情報は衛星測位データを用いるが、GPSだけではなく、準天頂衛星みちびき、GLONASSなどさまざまな衛星を受信し、さらに測位情報を補強するためのネットワーク補正情報の活用を検討する。通常静止画であれば位置情報を付加することができるが、動画ではそれができないため、撮影時刻をキーとして衛星測位データが取得した位置情報とフレーム画像を対応させることを考案する。この位置情報を付加することで、フレームマッチングの精度を高めたい。 今年度、植生の専門家と共同で行う予定だった実地調査はコロナウイルスの蔓延防止のため中止した。これを次年度に延期し実地調査を行うことを予定にしている。この実地調査の結果と本提案手法の結果を比較して、本提案手法の有効性を確認する。さらに、ドローンが飛ばせる場所を選定し、上空から近赤外カメラで道路脇樹木を撮影し、その分析データと本システムの結果を比較する。 本研究で開発した方法を実証するために、高速道のインター間を実証実験地域とし、高速で走行している車両から道路脇樹木を観測し、生育不良木の抽出方法が妥当であるかを確認する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの蔓延防止の為、参加を予定していた国際学会がオンラインで開催された。そのため旅費の出費がなくなった。また、植生の専門家と現地において実証実験をおこなう予定であったが、その実施を見送ったため。
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