2020 Fiscal Year Research-status Report
細菌由来新規キレート物質の大量生産および、めっき廃液からのニッケル回収への利用
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19K04678
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
篠崎 由紀子 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60727113)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メタロフォア / シデロフォア / ニッケル / 亜鉛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、めっき廃液からニッケル等の有用金属の回収を行うため、以下の検討を行っている。(1)細菌由来の新規キレート物質の精製と構造決定、(2)生合成遺伝子の解析と大量生産法の開発、(3)固定化担体の作製 これまでに、比較的高濃度のニッケルイオンを含む培地で生育可能な細菌として単離したDelftia sp. No.10株が生産するキレート物質(メタロフォア)の精製を行い、精製したメタロフォアを用いて、固相抽出と組み合わせた簡便な方法により、水溶液中のニッケルイオンを回収できることを確認した。このメタロフォアの構造解析を行うため、培養液からの抽出・精製を繰り返し行っている。 一方で、比較的高濃度の亜鉛イオンを含む培地で単離したBurkholderia sp. 3Y株についても同様に、メタロフォアの精製とLC/MSによる分子量推定、および金属指示薬を用いたキレート作用の検討を行った。その結果、3Y株は分子量の異なる複数のキノロン系の化合物を生産すること(推定分子量761, 789, 881)、また、これらは亜鉛イオンと結合することが示唆された。 メタロフォア生合成遺伝子に関しては、Delftia acidovoransで既に報告されているdelG(*注1)の塩基配列情報を参考にプライマーを設計し、Delftia No.10株のDNAを鋳型としてPCRを行った。得られたDNA断片について、現在、塩基配列の解析を行っている。 (*注1: C W Johnston et al., Nature Chem Biol, 9, 241-243, 2013)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在の所属にて遺伝子組換え実験を実施できるように、規則や設備を整える予定であったが出来なかった(新型コロナウイルス対応の遠隔授業実施の準備等のため、教務委員会の事務的な作業でかなりの時間を取られたため)。そのため、遺伝子組換えを伴うメタロフォア生合成遺伝子探索の実験を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子組換え実験を実施できるように規則や設備を整え、Delftia sp. No.10株またはBurkholderia sp. 3Y株のゲノムを鋳型としてPCRで増幅したDNA断片、あるいはランダムに切断したゲノムを、市販の宿主に導入する一般的な方法にて、メタロフォア生合成遺伝子の取得と解析を試みる。メタロフォアの大量生産のための条件検討を行う。 Delftia sp.No.10株、Burkholderia sp.3Y株ともに分子量の異なる複数のメタロフォアを生産するため、これまで使用してきた中低圧液体クロマトグラフィーでは分離が困難であることが分かった。今後はHPLCにて分離精製を行い、NMRによる構造解析を行う。また、メタロフォアを固定化した担体を作製し、水溶液中の金属イオンの回収が可能か検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)実験の進捗状況により、DNA塩基配列の解析依頼の回数が予想していたよりも少なくなったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)PCR等によって目的のDNA断片の取得と精製ができ次第、DNA塩基配列の解析依頼を行う。
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