2019 Fiscal Year Research-status Report
炭素固定機能の向上に向けた沿岸域の生態系相互作用の解明
Project/Area Number |
19K04679
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Research Institution | Osaka Prefecture University College of Technology |
Principal Investigator |
大谷 壮介 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60554219)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 二酸化炭素フラックス / 干潟 / 大阪湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸域におけるブルーカーボンに関する研究が進みつつあり,海域では二酸化炭素は固定されていることが示されている.一方で,沿岸域において干潟のような場所では,冠水と干出を繰り返すことから環境の変動が大きい特徴があり,水面と堆積物の二酸化炭素フラックスの関係を明らかにすることで,干潟のブルーカーボン効果のメカニズムの解明に寄与すると考えられる.そこで,本研究では,大阪湾沿岸域の干潟における水面と堆積物における二酸化炭素フラックスを定量化し,その関係性を明らかにすることを目的とした. 調査は2019年6月に大阪湾沿岸域の13の干潟を対象に調査を実施した.各地点において,多項目水質計を用いて水深,水温,DO,pH,塩分を測定した.各地点の表層水を採水してChl.a濃度,全炭酸(DIC)およびアルカリ度を測定した.また,現場において明暗チャンバー用いて堆積物の光合成速度と呼吸速度を計測した.持ち帰った水試料を実験室において20℃に設定したインキュベータ内で培養し,水中の一次生産速度と呼吸速度を明暗瓶法にて算出した. 大阪湾沿岸域の干潟の水面における二酸化炭素フラックスは,ほとんどの地点で吸収を示したが,大阪湾湾奥の干潟の水面では二酸化炭素は放出傾向にあった.また,堆積物における吸収フラックスは,一日当たりの二酸化炭素フラックスを計算すると放出を示す地点が多かった.水面の二酸化炭素フラックスは堆積物の二酸化炭素フラックスの約1.3(0.03-7.85)倍を示した.また,パス解析より,水面の二酸化炭素フラックスには水質項目だけではなく,植物プランクトンによる一次生産速度が二酸化炭素フラックスの要因として寄与度が高く,水中での生物活性が寄与していることを示すことができた.さらに,堆積物の二酸化炭素フラックスが水面の二酸化炭素フラックスに影響を及ぼしていることが考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大阪湾沿岸域の干潟における水面と堆積物の二酸化炭素フラックスについて,同時にデータを取得することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
大阪湾の干潟の二酸化炭素フラックスについて,空間的な分布について把握することができた.一方で,汽水域において時間的な変動についても毎月調査により,継続的にデータを取得しているので,二酸化炭素フラックスに寄与する要因を把握して,炭素固定機能に関する生態系の相互作用を明らかにする.
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Causes of Carryover |
当初計画していたよりも物品費の備品経費を安く抑えることができたため,未使用額が発生した.引き続き,次年度以降も物品購入と旅費に使用する.
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