2021 Fiscal Year Annual Research Report
炭素固定機能の向上に向けた沿岸域の生態系相互作用の解明
Project/Area Number |
19K04679
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Research Institution | Osaka Prefecture University College of Technology |
Principal Investigator |
大谷 壮介 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60554219)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 運河 / 植物プランクトン / 炭素フロー / 浮遊生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市近郊に位置する汽水域である運河は,水門によって水位が調節される閉鎖的な水域である.そのため水中には栄養塩が多く含まれていることから,過栄養状態であり,植物プランクトンの過剰な増加も確認されている.過栄養化した環境では植物プランクトンが多く,高い一次生産活動によって二酸化炭素が固定され,それらが高次の生物に移行して,二酸化炭素から炭素に変換されることで,運河は炭素固定の場であることが考えられる.また,動物プランクトンや優占二枚貝であるコウロエンカワヒバリガイも多く生息しているため炭素が固定されていると考えられる.そこで,過栄養化した水域である尼崎運河の二酸化炭素フラックスの季節変化と炭素に関わる生態系構造を明らかにすることを目的とした調査を行った. 年間を通した尼崎運河における二酸化炭素フラックスは一年を通して吸収傾向にあり,尼崎運河は空気中から水中へ二酸化炭素を吸収していることがわかった.また,植物プランクトンの現存量および生産速度が高いのに対して,動物プランクトンの個体数および生産速度は低かった.植物プランクトンの一次生産から動物プランクトンへの転送効率は0.76%,コウロエンカワヒバリガイへの転送効率は7.8%であった.植物プランクトンから動物プランクトンへの転送効率が非常に低く,低次生態系において生産された有機物は上位生物へ十分に転送されていない可能性があることが示唆された.尼崎運河では,コウロエンカワヒバリガイが植物プランクトンを餌とすることで現存量,生産速度が高く,生態系構造において炭素を多く固定していることが明らかになった.
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