2019 Fiscal Year Research-status Report
病原ウイルスの水中存在形態と挙動に関連する懸濁物質・溶存有機物・医薬品の調査研究
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19K04680
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
三浦 尚之 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (70770014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越後 信哉 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70359777)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水道水源 / 表流水 / 胃腸炎 / ノロウイルス / ロタウイルス / 懸濁物質 / カルバマゼピン |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,表流水を取水する国内21カ所の浄水場において,感染性胃腸炎の非流行期(2019年10月)および流行期(2020年1月)に原水試料を採取し,胃腸炎の主な原因ウイルスであるノロウイルス及びロタウイルス,ヒト下水汚染を示す化学物質マーカーとして提案されている医薬品,カルバマゼピンを調査した。試料を孔径の異なるろ過膜で分画し,シルト,砂,藻類,原虫等が含まれる>10 μm懸濁態画分,細菌や粘土等の0.45-10 μm懸濁態画分,及び0.45 μm以下の溶存態画分に含まれるウイルスをリアルタイムRT-PCR法を用いて定量的に検出した。カルバマゼピンは,溶存態画分を固相抽出により濃縮し,LC-MSを用いて濃度を測定した。 ノロウイルスGIIは,懸濁態と溶存態画分から同程度の濃度で検出された。一方で,ロタウイルスA濃度は,溶存態画分の方が,>10 μmまたは0.45-10 μm懸濁態画分よりも有意に高かった(P<0.01,対応のあるt検定)。すなわち,ロタウイルスAはノロウイルスGIIと比較して懸濁物質への親和性が低く,表流水中において溶存態画分に含まれる割合が多いというこれまでの結果をサポートするデータが蓄積された。2019-2020年冬季は,ノロウイルスによる胃腸炎患者数が全国的に少なかったため,ノロウイルスGIIの検出率は前のシーズンと比較して低かった(48%)。カルバマゼピンは0.29-9.26 ng/Lの濃度で検出され,10月よりも1月の方が濃度が高かった(P<0.05,ウィルコクソンの符号付き順位検定)。収集した原水試料の懸濁態画分を対象に,ヒトの糞便に高濃度で排出されることが知られているトウガラシ微斑ウイルス濃度も測定したところ,カルバマゼピン濃度との間に正の相関が認められた(R=0.56,P<0.01)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,まず全国の浄水場原水を対象とした2年間の調査に基づき,表流水中においてウイルスが吸着している細菌や粘土粒子等の懸濁物質,及び溶存態として存在しているウイルスと類似した挙動を示す有機物や残留医薬品類を明らかにすることを目的としている。 2019年度は,当初の計画通り,国内21カ所の浄水場において2019年10月および2020年1月の計2回,原水試料を収集した。収集した原水試料を孔径の異なるメンブレンフィルターを用いて懸濁態画分と溶存態画分に分画し,それぞれの画分に含まれるノロウイルス,ロタウイルス,トウガラシ微斑ウイルスを定量的に検出した。また,溶存態画分からは,ヒト下水汚染を示す化学物質マーカーとして提案されているカルバマゼピンを検出した。溶存態画分に検出されたトウガラシ微斑ウイルス濃度とカルバマゼピン濃度の相関を調べたところ,有意な正の相関関係を見出した。 以上の結果から,今年度は実施計画に沿っておおむね順調に研究を遂行することができたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,以下の3つのタスクに取り組むことで,3年間での研究目的達成を目指す。タスク1:存在形態別の病原ウイルス濃度及びウイルス吸着性懸濁物質の調査。タスク2:溶存有機物及び残留医薬品類のモニタリング。タスク3:懸濁物質へのウイルス吸着特性及び化学物質マーカーの有用性の評価。2020年度は,タスク1及び2を継続することでデータを蓄積し,水道水源における病原ウイルス汚染実態及び河川水中懸濁物質への吸着特性,カルバマゼピンの存在実態について2年間の再現性を確認する。また,タスク1及び2の結果に基づき,タスク3の条件検討に取り組む。具体的には,タスク1で収集したメンブレンフィルター上にトラップされた懸濁物質を超音波処理によって回収し,中性のリン酸緩衝液に再分散させる。そこへ精製したヒト糞便由来のノロウイルスやロタウイルス株を添加し,懸濁物質と相互作用させる。混合液を孔径0.45 μmの膜でろ過することにより未吸着のウイルスを回収・定量し,添加量との差から吸着量を計算することを試みる。
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Causes of Carryover |
検出されたノロウイルス及びロタウイルス株の遺伝子型同定のためのPCR産物取得にやや時間を要したため,次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせてシーケンス解析費用として使用する計画である。
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Research Products
(4 results)