2020 Fiscal Year Research-status Report
病原ウイルスの水中存在形態と挙動に関連する懸濁物質・溶存有機物・医薬品の調査研究
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19K04680
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
三浦 尚之 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (70770014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越後 信哉 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70359777)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水道水源 / 表流水 / 胃腸炎 / ノロウイルス / ロタウイルス / 懸濁物質 / カルバマゼピン / スルファメトキサゾール |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,2019年度から継続して感染性胃腸炎の非流行期および流行期に表流水を取水する国内21カ所の浄水場から原水試料を収集し,溶存態画分に含まれるウイルスと医薬品の挙動を調査した。試料を孔径の異なるろ過膜で分画し,懸濁態画分と0.45 μm以下の溶存態画分に含まれるノロウイルスGII,ロタウイルスA,トウガラシ微斑ウイルスをリアルタイムRT-PCR法を用いて定量的に検出した。医薬品は,溶存態画分を固相抽出により濃縮し,LC-MS/MS法により濃度を測定した。2020年度は,抗てんかん薬であるカルバマゼピン(CBZ)に加えて,ヒトおよびウシやブタ等の畜産動物に使用される抗菌薬であるスルファメトキサゾール(SMX),畜産や水産動物に使用される抗菌薬であるスルファモノメトキシン(SMM)も測定した。 2020-2021年冬季は,ノロウイルスによる胃腸炎患者数が激減したため,ノロウイルスGIIは原水試料からほとんど検出されなかった。ヒトに加えて動物由来の株も含まれるロタウイルスAは,非流行期・流行期ともに67%の溶存態画分試料から検出された。トウガラシ微斑ウイルスは,90-100%の溶存態画分から検出された。CBZおよびSMXは,81-90%の試料からそれぞれ最大21,42 ng/Lの濃度で検出された。SMMは,24%の試料から最大10 ng/Lの濃度で検出された。溶存態画分のトウガラシ微斑ウイルスおよびロタウイルスA濃度とCBZおよびSMX濃度との間には,それぞれ有意な正の相関が認められ(R=0.6-0.8,P<0.01),排出源から浄水場取水地点までの表流水中において挙動が類似している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,まず全国の浄水場原水を対象とした2年間の調査に基づき,表流水中においてウイルスが吸着している細菌や粘土粒子等の懸濁物質,および溶存態画分に含まれるウイルスと類似した挙動を示す有機物や残留医薬品類を明らかにすることを目的としている。 2020年度は,当初の計画通り,国内21カ所の浄水場において原水試料を収集し,2年間のデータを蓄積した。溶存態画分に検出されたトウガラシ微斑ウイルスやロタウイルスA濃度とカルバマゼピンやスルファメトキサゾール濃度の相関を調べたところ,有意な正の相関関係を見出した。 以上の結果から,今年度は実施計画に沿っておおむね順調に研究を遂行することができたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,以下の3つのタスクに取り組むことで,3年間での研究目的達成を目指す。タスク1:存在形態別の病原ウイルス濃度及びウイルス吸着性懸濁物質の調査。タスク2:溶存有機物及び残留医薬品類のモニタリング。タスク3:懸濁物質へのウイルス吸着特性及び化学物質マーカーの有用性の評価。2021年度は,タスク3に取り組む。具体的には,タスク1で収集したメンブレンフィルター上にトラップされた懸濁物質を超音波処理によって回収し,中性のリン酸緩衝液に再分散させる。そこへ精製したヒト糞便由来のノロウイルスやロタウイルス株を添加し,懸濁物質と相互作用させる。混合液を孔径0.45 μmの膜でろ過することにより未吸着のウイルスを回収・定量し,添加量との差から吸着量を計算することを試みる。
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Causes of Carryover |
検出されたロタウイルス株の遺伝子型同定のためのPCR産物取得にやや時間を要したため,次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせてシーケンス解析費用として使用する計画である。
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