2019 Fiscal Year Research-status Report
コンクリートの効果的補修・補強に資する細孔構造からメゾ構造を結ぶ劣化機構の解明
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19K04684
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
高瀬 裕也 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30515911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱 幸雄 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (70238054)
金澤 健 北海学園大学, 工学部, 講師 (80823773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 凍結融解作用 / 断面修復 / あと施工アンカー / 補修 / 補強 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンクリートは凍結融解作用により劣化する。積雪寒冷地には,劣化した既存コンクリート構造物(建築・土木の両者)が多数存在している。この構造物を長期にわったって安全に使用するには,適切に補修・補強する必要がある。材料分野においては,劣化メカニズムの解明,断面修復材の開発など,様々な研究が進んでいるが,構造的検討は十分とは言えない。 補修・補強した構造部材の性能を把握するには,構造実験用試験体を製作し,これを凍結融解作用により劣化させてから,補修・補強して加力実験する必要がある。しかし,JIS規格に基づく凍結融解試験法に基づいて,ボリュームのあるコンクリート試験体を劣化させるには,大規模な設備と多大な時間を要する。ここに,凍害劣化による構造的検討の大きなハードルがある。 本研究の主たる目的の一つは,劣化したコンクリートの補修・補強効果を定量的に評価することであり,まずは実験資料を得る必要がある。そこで,2019年度は簡易的に凍害劣化を模擬できないか検討するため,既往の研究を参考に,液体窒素を使って凍結融解作用による劣化を模擬できないか検討した。その結果,コンクリート内部の温度を適切に制御することで,相対動弾性係数を段階的に低下させることができた。これより,柱や梁を模擬した大規模な試験体も,容易に劣化できる可能性がある。 既存構造物を補強する際には,あと施工アンカーを用いて新設部材が接合される。既存コンクリートが劣化していると,このアンカー筋の付着性能やせん断抵抗性能が低下すると推察されるが,両者を結び付けた研究例は見当たらない。そこで本研究では,アンカー筋のカテナリー効果に付着特性を組み込み,これにせん断抵抗も随伴する力学モデルを構築した。凍害劣化を模擬した試験体ではないが,アンカー筋の付着性能を低下させた実験結果との比較より,本モデルで良好に再現できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,凍結融解試験機を用いて試験体を劣化させる予定であったが,材料を専門とする研究分担者の濱教授の発案により,液体窒素を用いて簡易的に劣化させられないか検証することとした。その結果,液体窒素を使うことで,大規模な設備を必要とせず,短時間でコンクリートを劣化させることに成功した。これにより,今後の実験を極めて円滑に進めることができるようになったことは,特筆すべき成果である。 また,付着抵抗性能の低下を考慮した,アンカー筋のダウエルモデルを構築しており,劣化したコンクリートに対する実験資料はまだ得られていないが,基礎モデルの開発には成功している。 以上より,概ね順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の成果を踏まえ,2020年度は凍害劣化を模擬した要素試験体を製作し,これに①断面修復材(ポリマーセメントモルタル)を用いた断面補修面,②あと施工アンカーを用いた補強接合面を付加し,せん断加力実験(要素実験)を実施して,せん断抵抗性能に関する基礎資料を得る。さらに2021年度には,柱・梁を模擬したコンクリート試験体を製作し,これを劣化させた上で,補修・補強効果の検証を実施する。 また,断面修復面の力学モデルについても,現状ではアンカー筋の付着特性のみを考慮したダウエルモデルの構築まで成し遂げているが,今後は,コンクリートの支圧抵抗の劣化まで模擬できるよう,メゾスケールモデルを構築して取り入れることや,断面修復材による付着抵抗性能を考慮するなど,さらなる改良を試み,要素実験との比較を通じて適合性を検証していく。 以上の検討を経て,凍害劣化したコンクリートに対する最適な設計法,および施工法を提案することを,本研究の最終目的とする。
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Causes of Carryover |
当初予定では,大型の設備を使って試験体を凍害劣化する計画であったが,液体窒素を用いて簡易的に劣化させることができたため,次年度使用額が生じた。 この差額費用については,試験体数を増やすための材料費等に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)